2015年6月16日

【報告】ACTアジア留学生インターン受入れ助成プログラム 2014年度助成事業 報告会

ACTアジア留学生インターン受入れ助成プログラム
2014年度助成事業 報告会

日時:2015年5月30日(土)10:30~15:30
会場:アジア文化会館地下1階 101号室

共催:(特活)アジア・コミュニティ・センター21
  公益信託 アジア・コミュニティ・トラスト

公益信託 アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)特別基金「アジア留学生等支援基金」では日本の大学・大学院に在籍するアジアからの留学生が日本の市民組織(非営利民間組織)でインターンを行うプログラムを支援しており、この度、一般参加者も迎えて5組のインターン受入れ団体と留学生による報告会を開催しました。

―活動報告―

(特活)シーズ・市民活動を支える制度をつくる会  (市民活動団体の制度づくり)

指導担当 : 鈴木 歩(事務局長)
インターン生: 李 聖君(リ・シュンジュン)さん(中国出身、立教大学)
 リさんは、大学で中国の市民組織のネットワーク構築とアドボカシー活動について研究しており、市民活動に関心が高く、今回のインターンでは、認定NPO法人に関する個別相談や団体リストの更新、NPO法制に関するアンケートデータの編集等に携わりました。リさんは、議員会館で行われたシンポジウムにも参加して、政党を超えて活動する議員の方々の姿が非常に印象に残ったそうです。また、本インターンシップを通じ、「人見知りであった自分の性格が変わり、大きな声で話すことができるようになり、とても嬉しい。様々な知識を得て、NPO法人設立を目指す友人に助言することにもなった。今回の現場で学んだ経験を今後の研究に生かしたい」と話しました。
 また、指導担当であった受入れ団体の鈴木事務局長からは、「中国でのNPOの活動状況を聞くと、シーズが日本で活動を始める前の段階に非常に近いと感じ、今後、リさんの活動がどのような影響を与えていくか非常に楽しみ。リさんを受入れて、今後は日本の市民セクターだけでなく中国などアジア圏の団体が一丸となって課題解決に挑むことが必要と改めて感じることができた良い機会であった」と感想が述べられました。
 「今回の経験をどのように中国で活かせるか」との参加者からの質問に、リさんは、「ネットワークを通じて、各分野の団体からのヒアリング調査、分析、そこから得た解決策を、アドボカシーを通して訴えることはできる」と今後の展望を共有しました。

(社福)地球の子ども会  (子ども、異文化交流)

指導担当 : 根本 華誉(副園長)
インターン生: ノールリアナ・ビンティ・ムハマドさん(マレーシア出身、茨城大学)
 子どもの自発性や好奇心を育むモンテッソーリ教育を2か所の保育園で実践する「地球の子どもの会」。地域のボランティア団体を通じてノールリアナさんと出会い、ノールリアナさんを受入れることは文化や宗教の違いに子どもたちが触れる良いチャンスと考え、本事業を実施することを決めたそうです。
 保育園で子どもたちと一緒に絵本を読んだり昼食を食べたり、また時にはマレー語を教えたりしたとノールリアナさんですが、以前は日本の子どもたちに接することを怖いと感じ、当初は聞き違いや考えが思うように伝えられなかったこともあり、戸惑うこともあったそうです。しかし子どもたちと同じ時間を共有することでだんだん打ち解けあい、今では保育園では誰でも声をかけてくれ、話をすることがとても楽しくなったとのことでした。今後は更に日本の教育や文化を学び、将来は保育園を立てたいとの思いも発表しました。
 また、マレーシアでは日本のような砂場がなく、子どもたちが砂遊びを始めると大人は大騒ぎになるとのエピソードに、会場からは驚きの声が上がりました。

(特活)国境なき楽団  (国際協力、学術、文化、芸術)

指導担当 : 庄野 真代(代表)
インターン: 覃 子懿(チン・シイ)、中国、早稲田大学
 学校以外の場で活動し、日本の市民団体についても知りたいと考えていたチンさんは、障がいのある人のミュージカルプログラムや海外に楽器を送る活動、カフェ経営など様々な分野で活動を行う「国境なき楽団」でインターンを行いました。日々の事務作業以外にも、中国語の翻訳作業、ホームページの作成、またバイオリンができるチンさんは楽器磨きやその管理も携わったとのことでした。また、「中国について質問され答えることは互いを理解し合う機会となり、市民の交流の大切さを学び、今回の出会いを将来につなげていきたい。できるだけ多くの留学生にこのプログラムに参加してほしい」と感想を述べました。
 指導担当であった庄野代表は、経済を専攻し会計が得意なチンさんが計算や入力作業を手伝ったエピソードを紹介し、「事務局のスタッフが少ないために1対1では指導が難しい面はあったが、共に悩み、考え学び合うことができたことが今回の成果であった」と発表を締めくくりました。
 2015年度のプログラムに応募したいと考えている留学生から、「インターンをしてよかったこと」について質問があり、チンさんは、「事務所の日常の様子から非常に多くのことを学ぶことができ、また多くの人と出会えたこと」と語りました。

(公財)アジア保健研修所(AHI)  (国際協力、医療・保健)

指導担当 : 鳥飼 真紀子(主事)
インターン: Heng Boret(ヘン・ボレット)、カンボジア、広島大学
 夏休みを有意義に過ごしたいと考えていたヘンさんは、日本のNGO活動や国際理解を深めたいと考え、このプログラムに応募し、住み込みでインターンシップを経験しました。AHIはアジア農山村で活動する現地NGOスタッフ等の人材育成研修を行う団体で、日本での研修を円滑に進めるために、言語能力と、日本とアジア(カンボジア)の両方を知る立場を生かして研修のサポートをしてほしいとインターンを受け入れました。
 ヘンさんは、記録作成や研修のサポート、イベントの手伝いなどを経験しました。そして、「様々な背景を持つ研修生たちは、開始当初、まとまりがなかったが、共同生活をする中で互いに理解が深まり、最終的には一体感が生まれた様子を目にし、人と人の繋がりが大事であることが深く刻まれた」と発表しました。また、研修生が持つ問題がどれも深刻なものばかりで、「世界は終わりだ」と感じた時もあったとのことでしたが、スタッフに相談したところ、問題を解決するためにはネガティブな思考をポジティブに変えることが必要と助言を受けたそうです。本インターンシップを通じ、「将来を考えるきっかけを与えてもらった」と発表をまとめました。

(特活)環境保全ネットワーク京都  (国際協力、環境保全)

指導担当 : 田中 誠司(理事)
インターン: 趙 慧卿(チョウ・ケイケイ)、中国、広島国際学院大学
 主に中国の黄土高原(丘陵)で植樹活動を行う「環境保全ネットワーク京都」は、国内における行政や企業、他団体と連携した活動を学んでほしいと、今回、初めてインターン生を受入れました。一方で、チョウさんは、日本社会の動きを現場で体験し、地域社会の人々との交流を通じて大学では得られない経験をしたいと、このプログラムに応募しました。チョウさんの専門は「水」で、環境保護、改善に関心があり、京都府立大学の学生と共に環境保護のプログラム(灌木の伐採を体験など)に参加したり、琵琶湖や浄化センターを見学したりしました。チョウさんは、「日本には環境に関わる市民団体が多く存在し、子どものころから自然環境に触れていて、そのような機会が中国でもあれば、環境に対する市民の意識が変わると感じた」と発表しました。また、日本が70年代の劣悪な環境汚染の状態から現在のように水道水を直接、飲める生活にまで発展できたことに触れ、「中国でもいつかこれが現実になるはず。環境保全の活動を行えば青空が見えるようになる」と母国、中国の環境改善に向けた想いを語りました。
 受入れ団体は専従職員がいない中でのインターンの受入れとなりましたが、大学学生のサークル活動への参加を用意し、環境保全の先進地を交代で案内するなど、国内での取組についての説明し、貴重な情報交換の機会となりました。

 
昼食会兼交流会の様子




―意見交換―

テーマ「インターンシップを通じて発見した日本社会の強みと課題」
モデレーター 鈴木 真里(ACC21事務局長、ACTチーフ・プログラム・オフィサー)

 

 続いて、インターンシップを経験した留学生を中心に意見交換を行いました。
 AHIでインターンを行ったヘンさんは、「まじめな日本人の性格は知っていたが、実際に仕事をして改めて日本人の時間の感覚や『報・連・相』に触れることができた」と話しました。一方で、「戦後復興を乗り越え経済発展を得たが、現在の日本の核家族化の現象を目の当たりにして、カンボジアでも同じ現象が起こらないよう、家族を大切にしていきたい」と、自国への思いを語りました。
 「シーズ・市民活動を支える制度をつくる会」でインターンを行ったリさんは、日本の市民活動団体の制度を振り返り、「パブリックサポートテストなど、認定NPO法人になるための基準は非常に厳しいと思うが、中国の制度は日本以上に厳しい」と紹介しました。
 「環境保全ネットワーク京都」でインターンを行ったチョウさんは、「3週間は非常に短く感じたものの、日本の学生と共に、エアコンもなく、スマホも通じない森林において、環境分野に興味を持つ多くの若者と活動ができたことが非常に印象深く、子どものころから親子で環境保全活動にかかわることが課題解決に向けた意識づけに繋がると感じた」と述べました。

   

 そして最後に、本プログラムへの改善提案、要望を発表者にもとめたところ、留学生からは、「本プログラムを広く周知するために留学生の横のつながりの活用」、「facebookなどを通じたインターンを経験した人が情報を共有、拡散できるための体制の構築」などの提案がありました。また、「本プログラムで支援できるインターンは、1団体に1人の留学生とのことだが、十分に日本語で相談できないことがあり、複数でも良いのではないか」との意見も出ました。
 一方で受入れ団体側からは、「留学生と知り合うきっかけがない」、「留学生と団体がマッチングされた後、留学生が遠方に住んでいるなどの理由で十分に互いを理解し合う期間を持てないままインターンがスタートしてしまい、工夫が必要」との意見がありました。また、「留学生は学費を得るためにアルバイトをしている人が多く、手当てが十分ではないこともある」という意見に対し、事務局からは、「十分議論した上での設定となっているが、時代の流れとニーズに合わせて今後も検討していきたい」とコメントがありました。

 閉会に際し、留学生代表としてリ・シュンジュンさんから、「今日、他の留学生の発表を聞くことができ、勉強になった。このプログラムを通じて多くの人との出会い、視野を広げることができた。今回、発表したほとんどの留学生が進学を希望しているが、今後の研究生活に繋がる貴重な経験となったと思う。本プログラムを提供してくれたACT、ACC21、そして快く受け入れてくれた団体に感謝を述べたい」と挨拶がありました。
 また、ACT事務局責任者/ACC21代表理事の伊藤からは、「日本の市民社会の中で、留学生に新しい世界を発見してもらえたことがこの『アジア留学生等支援基金』の成果である。受入れ団体側の並々ならぬ配慮に感動した。引き続き本プログラムの更なる発展に向けて努力していきたい」と感謝の意が述べられました。

記録:事務局