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インド、スリランカでNGO規制強化の動き

2014年8月6日 

最近、インド、スリランカで、NGOへの規制が強められている。

経済発展の裏では環境破壊、都市化などさまざまな問題が起きる。同じ過ちを繰 り返さないよう、持続可能な開発と成長を目指すうえで人々に寄り添うNGOの果たす役割は大きい (写真と本文は関係ありません)

インドでは、今年5月末に就任したモディ首相率いる新政権が発足した直後に提出されたとされる情報局共同ディレクターの署名入りレポート(2014年6月3日付)がメディアで大きくとりあげられた*1。この報告書には「インドの経済成長率の2~3%が下げられているのはNGOsに責任がある」と書かれており、複数のNGOと活動家の名前が挙げられているそうだ。なかでも国際的な環境保護団体は「国家経済安全保障に脅威である」と書かれているほか、原発、火力発電、遺伝子組み換え作物、汚職防止キャンペーンなどを展開するインドの現地NGOが名指しされているとのことだ*2。 インドGDP成長率は2011年6.7% (名目GDP総額83.91兆ルピー)、2012年4.5%(93.88兆ルピー)、2013年4.7%(104.72兆ルピー)である*3。ちなみに2013年のGDP総額の3%は約2.5兆ルピー(約4.2兆円)であるが、これだけの金額がNGO活動によって"失われている"とする根拠は不明である。

FPの記事によると*4、インド内務省はインドのNGOsは「マネー・ロンダリングやテロリスト・ファイナンシングへのリスクが高く脆弱である」とし、7月4日には、最高裁判所が中央調査局(Central Bureau of Investigation)に対し、NGOのファイナンスについての調査を完了するよう命じた。7月10日には新政権による予算案が提出され、これが可決・成立すれば、税法に抵触したNGOや慈善団体の登録や税控除資格を、歳入局が取り消す権利をもつことになると言われている。昨年にはインド内務省は国際的な資金調達に関するルールに違反しているとして、約4,000団体のNGOsの銀行口座を凍結された。

政府が明確な方針を打ち出しているわけではないようだが、環境保全・回復、持続可能な開発・成長などをうったえる市民運動を行うNGO、とくにそうした活動を行うために海外からの資金援助に大きく依存している現地NGOには今後ますます厳しい規制がかけられていくのではないかと危惧されている。

隣国・スリランカでは、7月1日付で、国防・都市開発省*5が「NGOsは記者会見、ワークショップ、ジャーナリスト対象のトレーニング、NGOの権能を超えたプレス・リリースの配布をしないように」という通達が出された。14年3月に仏教系グループが主催したメディア・ディスカッションで、仏僧グループによってイスラム教系リーダーが襲撃を受けたこと、5月下旬、6月にはメディア・グループや国際NGOが主催したタミル系など北部、東部のジャーナリストを対象にしたメディア関連のトレーニングやワークショップが、圧力や脅迫を受け、中止に追い込まれたのと関係しているという報道がある。

国防・都市計画省通達の後には、財務・計画省外部リソース局長名で「すべてのNGOは、海外からファンドを受け取る前に、同省から認可を受けるべき」との通達が全国紙に掲載された。こうした通達が出された背景には、米国国際開発庁(USAID)が6月中旬に公募を開始すると発表した「有権者教育を通じたスリランカ選挙支援プログラム」が関係しているとみられている。このプログラムは、民主主義および選挙プロセスにおける市民の役割と責任についての意識啓発を目的としたもので、57.9万ドルの配分が予定されていたが、その後公募は取り消された。財務・計画省通達では、「地域のスタンダードや構造に準拠せずに、海外からの助成金が使われていることについて、同省に苦情がいくつも申し立てられた」として、「自治体や中央政府への適切な認可手続きやコンプライアンスなしに、諸機関から助成を受け、マイクロファイナンスやその他の手段を含むプログラムが行われている」「すべてのスリランカ政府機関、地方機関、市民社会組織、その他一般が、海外の助成機関や国際NGOなどから受けたファンドの使途は、精査していく」としている。

そのような認可を政府から得る必要がある理由としては、海外からの資金助成で実施されたプロジェクトの中には、「政府予算外で、国家開発プログラムを弱体化させていた」からということだ (以上Daily Mirrorスリランカ記事より*6)。

こうした規制強化に対し、弁護士会やNGOなどが抗議しており、スリランカ弁護士会は、7月下旬の意見書で、次のような法的見解を発表した。*7

・通達では「NGOが外国為替管理法規、税法その他の法律に従っていない」としているが、具体的事例が示されていない。違反事例がある場合は法の執行権利者が適正な手続きを経て処分すべきである。

・「憲法において、すべての外国為替収入は、(政府)連結基金に直接入るべき」としているが、そうであれば政府資金と個人あるいはNGOの資金との違いがなくなってしまう。合法目的のために海外からの資金を得る際は、法的資格があるチャネル(すなわち金融機関)を通じて、海外からのファンドを直接受け取る資格を付与されているはずである。

・「すべての開発プログラムは、国家開発フレームワークと連動すべき」であるならば、社会やコミュニティあるいは合法的な目標、政府から独立した形で、個人や組織がそれぞれ貢献する権利を認めていないことになる。

・スリランカ金融情報機関、金融取引報告法、テロリズム金融対策法などに言及し、海外からの援助金をNGOsが受けた内容が完全には開示されていないとしているが、これらの法律にはそれぞれ独自の運営スキームがある。すべてのNGOsは、それぞれのアカウンタビリティ・システムのもとで、スリランカの合法的な規制メカニズムに沿うよう求められており、認可を得た商業銀行を通じ、海外からの寄付や資金助成を受けている。「すべての海外からの資金あるいは収入が、外国為替管理法の下に規制されている」という事実は、「海外からの資金が連結基金を通じて政府資金に入れられる」ということに、替えられることはない。

こうした規制強化の動きは、諸外国のNGOや助成機関の活動にも影響することであり、注視していきたい。


*1  「Outrage In India After Leaked Intelligence Report Calls NGOs "Threat to National Security"」Mon, 7/7/2014 - by Paromita Pain
http://www.occupy.com/article/outrage-india-after-leaked-intelligence-report-calls-ngos-threat-national-security#sthash.7RO1MtZH.dpuf

*2 NATION「IB report to PMO: Greenpeace is a threat to national economic security」Written by Priyadarshi Siddhanta , Amitav Ranjan | New Delhi | June 11, 2014
http://indianexpress.com/article/india/india-others/ib-report-to-pmo-greenpeace-is-a-threat-to-national-economic-security/

*3 JETROインド「基礎的経済指標」
http://www.jetro.go.jp/world/asia/in/stat_01/

*4 FP「India's NGO Backlash: India prides itself on its respect for democratic values. So why are civil society groups under attack?」BY Ram Mashru, JULY 21, 2014
http://www.foreignpolicy.com/articles/2014/07/21/indias_ngo_backlash

*5 スリランカではNGOは国防・都市開発省管轄で、現在、1,420団体が登録されている。
(参照:AFP「Sri Lanka's NGO crackdown triggers free speech fears」July 20, 2014

*6 Daily Mirror(スリランカ)「No foreign funds without approval: Ministry」Tuesday, 22 July 2014
http://www.dailymirror.lk/top-story/50038-no-foreign-funds-without-approval-ministry.html

*7 スリランカ弁護士会ウェブサイト:http://www.basl.lk/