ASIA NOW ―アジアの現場から

津波から5年半 【インド】

■2010年7月1日
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漁業の町ナガパティナムでは、このように路上で魚市場が開かれる

南インドの玄関口チェンナイに到着した翌朝、タミルナドゥ州ナガパティナム県に向け、車で7時間かけて約319kmを南下した。気温40度台の猛暑「インディアン・サマー」の4月が過ぎたので、むしろ東京よりもしのぎやすい暑さだ。


のどかな漁業町であった東岸のナガパティナムを襲った2004年末の津波による死者は1万1千人以上にのぼった。現在、町は落ち着きを取り戻しているが、政府やNGOにより提供された被災者住宅はペンキが剥げ落ち、空き家も目立つ。とりわけ、漁師の多くは沿岸から遠く建設された被災者住宅を出て、再び沿岸近くに住居を構えている。

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セルトゥール地区のトレーニング・センターで半年間縫製訓練を受ける女性たち。講師は本事業から融資を受けているひとりでもあるセルヴィさん(左から2番目)

今回の訪問地はACT特別基金「大和証券グループ津波復興基金」からの助成事業で、被災した障がいを持つ若者を主な対象に、職業技術訓練と自営ビジネスを支援するためのマイクロファイナンスを提供し、過去5年間で200人以上を支援した。


今年の対象者数は80名で、すでに54名への融資が開始された。融資額は、昨年は1人平均7,500ルピー(約14,600円)で、今年は受益者の要望で平均1万ルピー(約19,500円)に引き上げられた。全員、県庁から障がい者手帳を発行されており、カーストでは最下層の人々だ。家族は漁業、農業、日雇い労働者などに従事しており平均日収が100~200円というところ。子どもが5人以上いる家庭が多く、苦しい生活である。

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移動販売から始め、現在は自分の店を持つまでになった働き者のパンディアンさんも受益者のひとり

受益者たちが行っているビジネスは、女性の場合は魚の小売やイドリー(米粉を発酵させた朝食用蒸しパン)の調理・販売、日用雑貨販売、縫製など、男性は八百屋、日用雑貨販売、自転車修理、薪販売などである。平日の朝食はどの家庭でも外でイドリーを買うため、女性が朝にこの仕事をすれば、毎日100円~200円の収入が見込める。また縫製ではサリーの上着が25ルピー(約50円)で販売できるので、自宅で出来る仕事として人気だ。ラインストーン刺繍などができれば1 枚80ルピー(約160円)で売れるとあり、刺繍用ミシンを希望する女性が増えている。


今回のモニタリングでは54名すべての自宅を訪問したが、昨年からの継続支援者(24名)には、それぞれのビジネスに工夫や拡大の努力が見られ、新しい受益者はこれまで何もできず歯がゆかった自分が家計を助ける仕事ができる自信に満ちている。縫製・刺繍のほか干もの加工、調理用塩包装など、特産物に関連した生産ユニットを作るのが次の段階として計画されている。


<報告:鈴木真里>