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フィリピンの路上で生きる、ということ。【フィリピン】

2019年6月11日 

私たちACC21は今、フィリピン・マニラにて、2030年までにストリートチルドレンをゼロにすることを目標に、現地NGOや政府の方々との協働を進める一方で、一人ひとりの若者が夢をもつことができるよう、自立支援プロジェクトに取り組んでいます。

フィリピン・マニラの路上で暮らす子ども・若者の数は約5万人~7.5万人というデータがあり*、その数は増え続けていると言われています。

ストリートチルドレンの増加理由

数が増えている背景には、上記のように様々な要因が考えられます。
私たちは、この状況に対して、路上で暮らす若者たちに、ライフスキル(日常のさまざまな問題に前向きに対処するための力)や職業技術を学ぶ機会を提供し、自立を支援しています。

自立支援プロジェクト


今回は、私たちが出会い、支援してきた若者のひとり、エマニュエルくん(22歳)をご紹介します。

私がエマニュエルくんという22歳の青年に出会ったのは、昨年秋のことでした。彼は、とてもにこやかで、そうと知らなければ路上育ちだとは分かりません。

エマニュエル君

そんな彼が路上で暮らし始めたのは9歳のとき。その頃、エマニュエルくんは継母から木の枝やベルトで殴られるなどの虐待を繰り返し受けていました。このように、家族から虐待を受けたり、ネグレクトされたことがあるストリートチルドレンは少なくありません。

家から逃げ出した彼は、物乞いをしたり、ゴミ箱から食べ物をあさったり、客引きをするなどして1日10時間~12時間"働いた"といいます。そこまでしても得られるお金はほんの少し。「常に空腹だった」という状態で、屋台から食べ物をくすねたこともあります。

「ただ、大きな盗みはしたことがないし、スリもしなかった。僕がそんなことをしなくてもいいように誰か食べ物を恵んでくれないかと祈ったよ。だって僕はもともと泥棒なんかじゃない。生きるために仕方なかったんだ。こういう生活は3年ぐらい続いた。僕の人生で最も過酷なときだった」


その過酷さには言葉を失います。
9~12歳といえば、本来なら大人に守られ、学校や家庭で勉強や遊びに夢中な年齢です。
生まれながらに悪人という人はいません。子どもならなおのこと。
しかし、路上で暮らすストリートチルドレンたちにとって、その身なりから犯罪グループの一員のようにみられ、人から無視されたり、罵られたりすることは頻繁にあります。

エマニュエルくんが変わるきっかけは、ACC21の現地パートナーである現地NGOのチャイルドホープと出会い、路上教育のプログラムに参加するようになったことでした。

「はじめのうちは、路上教育に参加する資格なんて僕にはないと思ったよ。だって他の子どもたちは僕よりずっと年下だったからね。でも、仲間たちのように読んだり書いたりしたいと思って、続けることにしたんだ」

「路上教育を通じて僕が学んだのは、他の誰でもなく、"自分のために大きな夢を見る"こと。そして、良いことが起きると信じ、前向きにとらえること。そうすると、希望がもてるようになったんだ。これが、僕に起こったことだよ」

路上教育に参加し、チャイルドホープとの関係を続けてきたエマニュエルくんは、去年、ACC21とチャイルドホープが共同で取り組んでいる"自立支援プロジェクト"に参加しました。
そして、マッサージと理容の職業技術訓練やさまざまなライフスキル・トレーニングを受け、修了しました。

(左から3番目がエマニュエルくん。昨年末の修了式にて)

「僕は今、自分のことに、自分で責任をもって生きています。それを支えてくれたチャイルドホープと日本の支援者の皆さんにとても感謝しています 。今の、そして未来のストリートチルドレンのために、この善良な活動を続けてくれることを願っています」

生きるために、時に盗みをはたらくこともあったエマニュエルくんが、「自分のことに、自分で責任を持って生きている」と胸を張る姿に、胸が熱くなりました。

来月から、この自立支援プロジェクトの2年目の活動がはじまります。エマニュエルくんのように、チャンスと継続的なサポートさえあれば、能力や可能性を伸ばすことができる若者はまだたくさんいます。

これからも、若者たちの自立のためのチャレンジを応援していただけたら幸いです。


*出典:Jeff Anderson氏による調査報告書「Journal of Asian Mission 13(2012年10月)」

<報告:辻本 紀子(ACC21職員)>