ASIA NOW ―アジアの現場から

アジアで感染が広がる新型コロナウイルス

2020年5月20日 

世界で感染者の数が480万人を超えた「新型コロナウイルス」。ヨーロッパやアメリカで深刻な感染拡大が続いていますが、私たちが活動を行うアジアでも感染は広がり続けています。とくに医療体制の整っていない途上国では感染者の数を正確に把握することは難しく、感染の実態がわからないという問題があります。
その中で、各国はそれぞれに"ロックダウン"(全国または一部地域の住民の行動の制限)などを通じて感染拡大の防止につとめ、人々の生活には大きな影響が生じています。このようなとき、もっとも影響を受け、困窮するのは貧困層の人々です。


現地パートナー団体や現地国政府、マスコミによる情報をもとに、事業地周辺の現況についてご報告します。

  フィリピン  |   スリランカ  |   インドネシア  |   インド  

◆フィリピン-2カ月半続く首都の封鎖、困窮する路上の人々

フィリピン(人口1億98万人)では、3月15日から首都・マニラ首都圏で、生活必需品の購入などやむを得ない場合を除き外出を禁じる"ロックダウン"(都市封鎖)が始まりました。封鎖の対象地域は徐々に拡大され、一時は全国が対象となりました。その後、一部地域では制限が解除されていますが、感染の広がるマニラ首都圏と、隣のラグナ州、観光都市セブ市では、5月31日まで"ロックダウン"が延長されました。5月中旬以降は、これらの地域でも生活必需品の購入に加え、仕事のための外出や工場の操業も一部認められるようになりましたが、依然、日常からは程遠い生活を強いられています。

特に、ACC21がストリートチルドレン支援に取り組むマニラ首都圏(人口1,288万人)は感染者の6割以上を占める感染拡大の中心地です。厳しい外出・移動制限が課せられているにもかかわらず、ここ1週間も日に150件前後の新規感染者が発生しています。マニラ首都圏は路上生活者も多く、また不衛生で狭い室内に人々が集住する大規模なスラムも点在しているため、これら最貧困層の人々の間での感染爆発が懸念されます。

また、フィリピンでは3月下旬以降、日本を含む海外からの入国が制限されています(5月19日現在)。すでに2カ月半に及ぶロックダウンによって国内の経済は大きな影響を受けていますが、主要産業のひとつである観光業への打撃も避けられません。

学校教育にも大きな影響が出ることになりました。
フィリピンの学校は通常6月から新学期が始まり、翌3月に終業しますが、今年度は全国で始業日を8月24日、終業日を翌年4月30日とすると教育省から発表がありました。ただし、全国の小学生から高校生までが一律に始業日当日から通学するわけではなく、政府が校舎の開放を許可するまでの間は、テレビ、パソコン、携帯電話を活用したオンラインによる授業が行われます。オンライン授業の開始に関して、一部の公立・私立小中高等学校では、すでに準備が整っています。また、遠隔地域に住む生徒はラジオによる受講を希望しているため、ラジオによる受講も検討されています。

感染拡大でいつも以上に苦しい状況に置かれる路上の人々

ACC21がストリートチルドレン支援プログラムを通じて支援している路上で暮らす若者とその家族は、日ごろから路上での物売り、ドライバー、日雇いの労働者などして生活をしています。このため、外出を厳しく制限する"ロックダウン"(都市封鎖)が3月中旬に始まってからは、多くの家族の収入が途絶えています。政府から少額の支援を受け取っている世帯もありますが、ほとんどが1回きりで、2カ月半の生活費を補てんするには不十分です。また、一部の家族は政府が用意したシェルターに入居していますが、シェルターの空きがなく、また頼る親族もいないため、路上に暮らし続ける人々もいます。

現在、ACC21は現地パートナー団体チャイルドホープと協力して、路上で暮らす子ども・若者とその家族のための緊急支援に取り組んでいます。

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《フィリピンの新型コロナウイルス感染状況》
感染者数: 12,942人(3月末2,084人)
うち死亡者数: 837人(3月末88人)
うち治癒: 2,843人
(2020年5月19日現在、フィリピン保健省
引き続き、現地パートナー団体と密に連携し、緊急支援活動に取り組むとともに、封鎖解除後にスムーズに活動を再開できるようフォローしていきます。

◆スリランカ-首都圏をのぞき、外出制限は夜間のみに

スリランカ(人口2,167万人)では、新型コロナウイルスの感染拡大防止措置として、3月20日から全土(25県)を対象に外出禁止令が発令されました。その後現在まで、コロンボおよびガンパハ県は外出禁止令が継続されていますが、他県では、一定の時間帯に解除されています。
スリランカにおける感染は、3月11日に1人の感染が判明した後、4月19日までは1日20人以下におさえられていましたが、20日(33人)以降増加し、4月27日には65人の感染が判明しました。その後、減少に転じ、直近の5月19日の新規感染者数は35人となっています。

5月14日のスリランカ大統領府による発表によると、日曜日の5月17日は全土で終日外出が禁止され、コロンボ県、ガンパハ県を除く各県は、翌土曜日(5月23日)まで毎日、夜間(午後8時~翌午前5時)の外出が禁止となっています。
なお、スリランカにおいても、海外からの入国が制限されており、日本からの渡航者や日本人に対して入国制限措置がとられています(5月19日現在)。

スリランカでは、国公立病院での医療費がスリランカ人は無料、外国人に対しても非常に安価と、医療制度・設備が比較的充実しています。3月から厳格に規制されていることもあり、急激な感染拡大を防ぎコントロールされているようですが、人や物資など往来が激しい隣国インドで感染が拡大し、また観光が重要産業でもあることから、今後の出入国に関する方針をどうするのか難しいところです。

国内の各地で活動している現地NGOや学術界関係者は、3月下旬から、貧困世帯への緊急支援を行うコンソーシアム「Consortium For Social Solidarity (CFSS)」を立ち上げています。

宅配の需要増に対応する農家の女性たち

ACC21は、過去3年間の活動で、南東部ウバ州モナラガラ県の女性組織(19団体、メンバー数780人)とともに、ピーナツや有機農産物の加工・市場開拓を通じた地場産業化に取り組んできました。その結果、2019年度末までに、複数の有機農産物の宅配業者や小売業者と取引ができるようになりました。

ACC21の現地パートナー団体「ウバ・ウェラッサ女性団体」(UWWO)では、有機農産物をコロンボの有機宅配サービス「Kenko 1st」に卸しています。外出禁止令が続いている首都圏で宅配の需要が増加しており、UWWOと女性農家メンバーが、週に数度コロンボに向けて野菜を発送しています。1~2月に収穫され、取引が成立していないピーナッツは殻つきのまま空調設備が整っている倉庫で管理されていますが、殻つきのまま購入を希望する業者から連絡があり、数トンが販売される見通しです。

《スリランカの新型コロナウイルス感染状況》
感染者数: 1,027人(3月末143人)
うち死亡者数: 9人(3月末2人)
うち治癒: 569人
うち治療中: 449人
(2020年5月19日現在、スリランカ保健省

引き続き、現地パートナー団体と連絡を取り、助言やフォローを続けていきます。


◆インドネシア-ラマダン(断食月)明けを今週末に控え、警戒強まる
       感染者数は日本を上回り1.8万人超、第二の都市を抱える東ジャワ州で急増

ACC21は、インドネシアで企業と現地NGO「YDD」との三者連携事業に取り組んでいます。また、ACC21が事務局をつとめる公益信託アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)ではバリ島に近いスンバワ島、ロンボク島で事業を行っています。

5月19日時点の公式情報では、インドネシアの感染者数は1万8,496人、死者数は1,221人で、日本の感染者数(感染者1万6,365人、死者763人)を上回っています。地域別にみると、ジャカルタ首都特別州(人口958万人、感染者6,155人、うち死亡者数490人)が最多で、次いで第2の都市・スラバヤを擁する東ジャワ州(感染者数2,377人、うち死亡者数222人)と続きます。同州では、タバコ製造会社で多数の従業員が感染したことが判明するなど、感染者が急増しています。そのほか、西ジャワ州(感染者数1,700人)、中部ジャワ州(同1,175人)、バンテン州(同698人)など、ジャワ島が突出しています。

ACC21の三者連携事業の現地パートナー「YDD」の本部があるジョグジャカルタ特別州の感染者数は207人(3月末23人)、事業地がある西カリマンタン州は132人(3月末9人)です。バリ州の感染者数は363人で、隣の西ヌサ・トゥンガラ州(ACT助成事業が実施されているロンボク島、スンバワ島)の感染者は375人と、3月末の4人から急激に増加しています。

ACC21の現地パートナー団体YDD代表のアントン・スジョルウォ氏のレポートによると、ジョグジャカルタ市内の大手スーパーマーケットで従業員63人が簡易テストで陽性となり、その後行われたPCRテストで23人(5月6日現在)が陽性となったため、同スーパーの営業が停止されました。事業地がある西カリマンタン州カプアス・フル県全体では、5月6日までに83人に陽性の疑いがあるとされていました。このような遠隔地では、もともと医療施設が非常に少ないうえ、新型コロナウイルス感染者を治療するための医療設備が整った病院は実際にはないことが最大の問題ということです。

今週末の断食月明けを控え、警戒強まる

世界第4位の人口(2.64億人)の約9割がイスラム教徒であるインドネシアでは、断食月(ラマダン)明けに大半が一斉に故郷に帰省します。しかし今年は、5月23日(土)のラマダン明けを前に、4月24日からラマダンおよびレバラン(断食明け大祭)期間中の帰省(ジャカルタ首都圏への往来)を全面的に禁止することがジョコ・ウィドド大統領により発表されました。その後5月初旬まで、国内移動制限(陸路、空路)が行われてきましたが、5月7日より例外的な利用に関する基準を設けたうえですべての交通手段を再開すると運輸大臣が発言しました。

社会的制限については、ジャカルタのほか、西ジャワ州の5県・市は5月26日まで、バンテン州の3県・市は5月31日まで延長することが各州知事により発表されました。

なお、インドネシアの入国については、4月2日午前0時から一部の例外を除き、すべての外国人のインドネシア入国とインドネシアでのトランジットが、一時的に禁止されています。この措置が適用されている間は、観光旅行や短期出張の目的ではインドネシアに入国できません(5月19日現在)。

《インドネシアの新型コロナウイルス感染状況》
感染者数: 18,496人(3月末1,528人)
うち死亡者数: 1,221人(3月末136人)
うち治癒: 4,467人
うち治療中: 12,808人
検査数: 147,799人(うち陰性:129,303人)
経過観察中: 45,300人
監視対象者: 11,891人
(2020年5月19日現在、インドネシア政府公式サイト

引き続き、現地パートナー団体と連絡を取り、助言やフォローを続けていきます。


◆インド-感染者累計10万人超、アジア最多に

インド(人口13.34億人)では、3月25日から全土でのロックダウン(外出禁止令)が発令され、学校や公共交通機関、多くの企業は活動を停止しました。全土は3つのゾーンに分けられ、感染の広がりの状況によって、許可される活動レベルは異なります。全国的なロックダウンが継続されつつも、4月下旬以降、地方や感染者のいない地域では、一部の商業活動の緩和が行われてきました。その後、5月17日に3回目の期限を迎えましたが、感染の拡大が止まらず、全国的なロックダウンが5月31日まで続けられることが決まりました。感染者数の累計は5月19日に10万人を超え、中国を抜きアジアで最多となりました。

5月19日現在、学校や公共交通機関(国内線・国際線航空機、地下鉄)、ショッピングモールなどの運営は引き続き全国で禁止されていますが、州間の移動が条件付きで許可されることになりました。

長引く休校によって、私立学校を中心にオンライン授業の動きが活発化していますが、特に農村部や貧困家庭の子どもはインターネット環境や機器(スマートフォンなど)の問題もあってオンライン授業に参加することは難しく、教育格差が広がることが懸念されています。

同国28州および9つの連邦直轄領のうち、感染者数が多いのは次の地域です。

  • マハーラーシュトラ州(感染者3万5058人、うち死亡者1,249人)
  • タミルナドゥ州(同11,760人、81人)
  • グジャラート州(同11,745人、694人)
  • デリー首都圏(同10,054人、168人)
  • ラージャスターン州(同5,507人、138人)
  • マディヤ・プラデーシュ州(同5,236人、252人)
  • ウッタル・プラデーシュ州(同4,605人、118人)

ACC21は、2005年のインド洋津波以降、公益信託アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)を通じて、被災地の復興支援を10年間実施したほか、以降も教育、環境保全、生計向上支援など多岐にわたる分野で事業を実施しています。2020年度は3事業(西ベンガル州、ラージャスターン州、タミルナドゥ州)に助成を行う予定ですが、現地パートナー団体と連絡をとりあいながら、状況をみていきます。

《インドの新型コロナウイルス感染状況》
感染者数: 101,139人(うち現在の陽性者数:58,802)
うち死亡者数: 3,163人
うち治癒: 39,173人
(2020年5月19日現在、インド保健省



※冒頭で紹介した世界の感染者数はアメリカのジョンズ・ホプキンス大の集計データ(5月20日時点)をもとに記載しました。
※日本の感染者数に関するデータは厚生労働省発表の5月19日現在の情報をもとに記載しました。
※各国の地域別の感染者数のデータの出典は、各国の感染状況表の下部に記載の出典をご覧ください。
※各国の入出国に関する情報の出典は、日本外務省海外安全ホームページです。最新の情報は当ページをご確認ください。