ASIA NOW ―アジアの現場から

続・アジアで感染が広がる新型コロナウイルス ―インドがアジア最多に―

2020年7月7日 

「新型コロナウイルス」の拡大はとどまることを知らず、世界では感染者の数が1,162万人を超えました。
私たちが活動を行うアジアでも、国によって感染の広がりにばらつきはありますが、全体としては拡大傾向にあります。アジアにおいては、インドで感染者数が69万人を超え、世界ではアメリカ、ブラジルに続き3番目の感染国となっています。続いて、パキスタン(23.1万人)、バングラデシュ(16.5万人)、インドネシア(6.4万人)、フィリピン(4.6万人)、シンガポール(4.4万人)となっています。
その一方で、多くの国は3月下旬以降に行ってきた"ロックダウン"(全国または一部地域の住民の行動の制限)の措置を緩め、経済活動の再開を模索しています。

私たちのもとには、アジア各国の現地NGOから、活動地域の現状について様々な情報が寄せられています。これまでの間、数か月にわたって厳しい外出禁止が課されていた地域では、外出禁止の間に職を失ったり、収入を得られなかったりして、貧困に陥る人々が増えています。また、もともと貧しい生活を強いられていた人々は、さらなる貧困に陥っています。
限られた医療体制のもと、十分に検査が行われていない地域では、報告されていない感染例が増えていることが予想され、人々は不安にさいなまれています。

現地パートナー団体や現地国政府、マスコミによる情報をもとに、事業地周辺の現況についてご報告します。
(国名をクリックすると、各国の詳細にジャンプします)

  フィリピン  |   インドネシア  |   スリランカ  |   インド  

◆フィリピン-首都の外出制限は緩和の一方で、セブは再強化

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フィリピン(人口1億98万人)の首都・マニラ首都圏では、3月15日から始まった "ロックダウン"の措置の部分的な緩和が5月中旬に始まり、6月1日からは電車やバスなどの公共交通機関も再開されるなど、さらに制限が緩和されました(6月1日から7月15日まで、フィリピン政府が定める4段階の「コミュニティ隔離措置」のうち、下から2番目となる「一般的なコミュニティ隔離措置(GCQ)」が適用されています)。

一方で、中部のセブ市は、過去14日間で最も感染者数が増えており、6月16日以降最も厳しい外出禁止措置(「強化されたコミュニティ隔離措置」)が再び適用されています。その他の地域では、移動・外出禁止の措置が5月以降段階的に緩和され、現在は最も制限の少ない措置(「修正された一般的なコミュニティ隔離措置(MGCQ)」)が適用されています。

制限が緩和されても、路上やスラムで暮らす人々への影響は続く

ACC21がストリートチルドレン支援事業を実施している首都・マニラ首都圏(人口1,288万人)では、過去14日間で4,263件(日に平均304件)の感染が発生しており、増え続けています。パートナー団体・チャイルドホープからの情報によると、貧困層やスラム地域の人々を対象とした検査は積極的に行われておらず、感染の実態は把握できていないということです。これらの人々は、密集して、不衛生な環境で暮らしていることが多く、また十分な栄養も取れていないため、水面下で感染が広がることが懸念されます。

また、別のパートナー団体・カサガナカ協同組合/カサガナカ開発センター(マニラ周辺でマイクロファイナンスを提供する機関とその姉妹団体)が約3,600人を対象に行ったアンケート※1では、ロックダウンによって75%が休業に追い込まれ収入を失い、64%がロックダウン終了後半年経っても収入は以前のレベルまで戻らないと予測していることが明らかになりました。

学校教育の面では、前回報告した通り、新学期の開始が2か月以上後ろ倒しされることが決まっています。しかし、大統領が「ワクチンが開発されるまで対面での受業は行わない」と発言しており、始業予定の8月下旬になっても、オンラインで授業が行われることが予想されます。貧困層の多くは経済的な制約からオンライン授業への対応が難しく、教育の格差の拡大が懸念されます。

生活の再建に向けて

マニラ首都圏では、外出や移動の制限が緩和されたことを受けて、路上で暮らす若者や大人たちは、生活の再建に向けて動き始めていますが、すぐに以前の仕事に就けるわけではありません。路上での雑貨の販売など、すぐに始められることから、少しずつ収入を得ようとしているのが現実です。そのため、彼らが再び安定した仕事を見つけ、生活を再建するまでの間、継続的に支援を行う必要があります

このような状況を受け、ACC21は当面の間、現地パートナー団体・チャイルドホープと協力して、政府から十分な支援が受けられない子どもたちとその家族に食べ物と必要な支援が行き渡るよう、引き続き、緊急支援に取り組んでいきます。また、並行して、3月中旬から活動を停止していた「フィリピン路上で暮らす若者の自立支援プロジェクト」でも、6月中旬以降、段階的に活動を再開しています。

緊急支援では、引き続きご寄付を受け付けています。ご協力よろしくお願いいたします。

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《フィリピンの新型コロナウイルス感染状況》
感染者数: 41,830人(うち新規:1,494人)
うち死亡者数: 1,290人
うち治癒: 11,453人
(2020年7月7日現在、フィリピン保健省
引き続き、現地パートナー団体と密に連携し、緊急支援活動に取り組むとともに、封鎖解除後にスムーズに活動を再開できるようフォローしていきます。

◆インドネシア-感染者数6万5千人に迫る、7月に入り一日の感染者数最多を記録

ACC21は、インドネシア(人口約2億6,400万人)では、日本で徐々に感染者が増え始めた2月末の時点では感染が判明していませんでした。3月から徐々に感染者が増え始め、前回の報告時点(5月19日)では、感染者は1.8万人で日本を上回っていました。

その後、インドネシア政府は5月23日のラマダン(断食月)明けまでの期間中の帰省(ジャカルタ首都圏への往来)を全面的に禁止し、感染拡大が続く一部の地域では6月下旬から7月上旬までの大規模社会制限をが延長し、首都ジャカルタでは、6月の1カ月間を「安全で健康的、生産的な社会」に向けた移行期間としていました。それでも完全には封じ込められず、6月中旬以降の感染者数の増加につながったとみられています。7月7日現在、感染者数は6万5千人近くに迫っています。7月2日には1日あたりの新規感染者数が最多の1,624人となり、感染拡大傾向に歯止めがかかっていません。

地域別では(7月6日現在)、第2の都市・スラバヤのある東ジャワ州の感染者数(合計)が14,013人(うち新規感染者数552人、死亡者数1,020人)と最も多く、次いで首都・ジャカルタ特別市が12,435人(うち新規感染者数257人、死亡者数649人)です。

ACC21が企業と現地NGO ディアン・デサ財団(YDD)との三者連携事業に取り組んでいるは西カリマンタン州では、感染者数が339人となりました。州都のポンティアナク市には感染の疑いのある患者がいるため、人の出入りに厳しい制限をかけ始めているほか、事業地周辺では、独自に関所が設置されている村もあるとのことです。事業地のある同州カプアス・フル県では、3月1日に初めて感染者が判明し、同県への出入りは3月22日から制限されました。5月26日までの同県の感染のうたがいのある人の数は545人で、日を追うごとに増加しています。このような状況ですが、三者連携事業では、可能な範囲で事業地周辺で原材料の調達と加工を続けるとともに、YDD本部では、コミュニティ産品のマーケティング会社の設立とオンライン販売システムの整備、家庭レベルでの太陽光発電システムの開発を進めています。

また、ACC21が事務局をつとめる公益信託アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)ではバリ島に近いスンバワ島、ロンボク島(西ヌサ・トゥンガラ州)で事業を行っていますが、感染者数が1,330人と、5月18日時点の371人から急増しています。

《インドネシアの新型コロナウイルス感染状況》
感染者数: 64,958人(うち新規:1,209人)
うち死亡者数: 3,241人
うち治癒: 29,919人
うち治療中: 31,798人
検査数: 552,084人(うち陰性:487,126人)
(2020年7月7日現在、インドネシア政府公式サイト

引き続き、現地パートナー団体と連絡を取り、助言やフォローを続けていきます。


◆スリランカ-6月28日に外出制限が完全解除、8月から海外から観光客受入れ開始

スリランカ(人口2,167万人)では、新型コロナウイルスの感染拡大防止措置として3月下旬から発令されていた外出禁止令が、6月28日に完全解除されました。7月6日現在の感染者数の合計は2,076人で、そのうち海軍関係者と濃厚接触者948人が最多で、続いてスリランカ国籍保有者785人、外国籍30人となっています。

スリランカでは3月18日に国内の一部地区で外出禁止令が発令されたのを皮切りに、対象地域が拡大され、同月20日から全国で外出禁止令が発令されました(一部解除期間を含む)。その後、感染リスクが低い地域では緩和され、5月26日以降は、全国で夜間のみが外出禁止となっていました。
これまでの感染者数の推移をみると、5月26日に初めて1日の感染者数が100件を超え(137人)、翌27日に最多(150人)を記録しました。以降は減少に転じ、若干の増減を繰り返しながら直近の7月6日の新規感染者数は2人(海外からの帰国者)となっていますが、43人に感染の疑いがあり入院しています。前回も報告した通り、スリランカでは、医療制度・設備が比較的充実していることや、3月下旬から外出禁止令が継続されてきたこと、海外からの入国を厳格に規制してきたことを背景に、感染の拡大はコントロールされてきました。

こうしたなか、8月1日からは海外からの観光客の入国を許可することが決まったと報道されています。
現時点での同国観光省の「OPERATIONAL GUIDELINES WITH HEALTH PROTOCOLS」(バージョン1、2020年6月8日発行)では、観光客受け入れについての詳細な手順が定められています。同ガイドラインによると、観光客は入国前にスリランカ観光開発局(SLTDA)に登録された旅行社を通じてツアー・パッケージを予約し、オンラインで観光ビザを取得したうえ、入国の72時間前の間に受けたPCR検査で陰性を証明するレポートを提出する必要があります。また入国時にはPCR検査を受け、陰性が確認された後も、滞在中に繰り返しPCR検査を受けることが義務付けられ、空港から宿泊施設までの公共交通機関の使用を禁止するなどの安全対策がとられます。しかし、県をまたぐ移動の制限はなく、全国の観光地が営業を開始するため、感染拡大にどのような影響を及ぼすのか、注視されます。

ACC21は、過去3年間の活動で、南東部ウバ州モナラガラ県の女性組織(19団体、メンバー数780人)とともに、ピーナツや有機農産物の加工・市場開拓を通じた地場産業化に取り組んできました。その結果、2019年度末までに、複数の有機農産物の宅配業者や小売業者と取引ができるようになりました。ACC21の現地パートナー団体「ウバ・ウェラッサ女性団体」(UWWO)では、有機農産物をコロンボの有機宅配サービス「Kenko 1st」や病院などに卸しています。首都圏が外出禁止令の対象となっていた期間中はとくに宅配の需要が増加し、UWWOと女性農家メンバーが、週に何度もコロンボに向けて野菜を発送しました。2020年1月から5月末までの間に、合計で11トンを販売し、約175万ルピー(約101.3万円)を売り上げました
《スリランカの新型コロナウイルス感染状況》
感染者数: 2,076人(うち新規:2人)
《内訳:スリランカ国籍保有者785人、外国籍30人、海軍関係者と濃厚接触者948人、その他313人》
うち死亡者数: 11人
うち治療中: 149人
(2020年7月6日10:00AM現在、スリランカ保健省

引き続き、現地パートナー団体と連絡を取り、助言やフォローを続けていきます。


◆インド-感染者は69万人を超え、世界第3位に

インド(人口13億3,400万人)では、、3月25日から全土でのロックダウン(外出禁止令)が発令され、学校や公共交通機関、多くの企業は活動を停止しました。全国的なロックダウンは5月末まで続けられましたが、6月以降は段階的な解除を進めています。しかし、感染者が集中する「封じ込めゾーン」では7月末までロックダウンが継続されています。

ただ、緩和されている地域においても、学校や教育機関は休校措置が取られており、オンライン授業が推奨されています。そのほかの国と同様に、貧困層の人々はオンライン授業にアクセスすることが困難なため、教育の格差が広がることが懸念されます。

感染者数は69万人を超え、アジアで最も多く、世界でも3番目の感染者数となっています。現在も1日あたりの新規感染者数の最多記録を更新し続けており、一部の専門家からは、7月末までに100万人を突破するという試算が発表されています。

州別にみると最も感染者数が多いのは経済の中心地・ムンバイのあるマハラーシュトラ州で、206,619人(うち死亡者8,822人)に及びます。そのほか、タミルナドゥ州(感染者111,151人、うち死亡者1,510人)、デリー首都圏(同99,444人、うち死亡者3,067人)と続き、比較的南部の州に感染者が集中している傾向があります。

ACC21は、2005年のインド洋津波以降、公益信託アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)を通じて、被災地の復興支援を10年間実施したほか、以降も教育、環境保全、生計向上支援など多岐にわたる分野で事業を実施しています。2020年度は3事業(西ベンガル州、ラージャスターン州、タミルナドゥ州)に助成を行う予定ですが、現地パートナー団体と連絡を取り合いながら、状況をみていきます。

《インドの新型コロナウイルス感染状況》
感染者数: 697,413人(うち現在の陽性者数:253,287人)
うち死亡者数: 19,693人
うち治癒: 424,432人
(2020年7月6日現在、インド保健省



※1カサガナカ協同組合のメンバーである都市貧困層3,615人(同組合のメンバーの8.83%)を対象に、3月中旬から4月末までの外出・移動禁止期間について行った調査(実施期間:4月28日-5月1日)

※2データ出典:
・冒頭で紹介した世界およびアジア各国の感染者数はアメリカのジョンズ・ホプキンス大の集計データ(7月7日時点)をもとに記載しました。
・各国の地域別の感染者数のデータの出典は、各国の感染状況表の下部に記載の出典をご覧ください。