ASIA NOW ―アジアの現場から

人生は変えられる【フィリピンの路上から】

2021年6月2日 

フィリピンでは2020年3月から新型コロナウイルスの感染拡大に伴う移動や外出の制限が続いています。このため経済は大きな打撃を受け、路上で暮らす若者たちも仕事を失ったり、収入を得るための活動が制限されるなど影響を受けています。

2019年1月から「路上で暮らす若者の自立支援プロジェクト」に参加し、飲食サービス・コースを修了したアーノルドさん(22歳)も、コロナ禍で影響を受けた若者の一人です。プロジェクト修了後にホテル・レストランに就職したものの、昨春の"ロックダウン"(厳しい外出・移動制限)でホテル・レストランの営業は停止となり、その職を失いました。その後はチャイルドホープから緊急支援物資を受け取ったり、親戚の店を手伝うなどして何とか生活を続け、昨秋には一緒に暮らす兄弟を養うためにパンの製造・販売をする小さなビジネスを始めました。

今では困難な状況の中でも前向きに生きるアーノルドさんですが、10代の頃は路上の仲間と喫煙、飲酒、違法薬物の使用・売買などに手を染める非行少年でした。アーノルドさんが「人生は変えられる」と気づき、行動したきっかけとは―アーノルドさんのストーリーを紹介します。

arnold.jpg

アーノルドさんにとって、飢えから生きのびる方法は物乞いしかありませんでした。アーノルドさんの母親は近所の公営市場で助手として働いていましたが、父親は無職で、アーノルドさんが10歳の頃には違法薬物の中毒者でした。このため、アーノルドさんはとても幼い頃から、家族のために食費を稼ぎ、母親を助けなければいけないと考えていました。そこで、放課後になるとすぐに、キアポの街に走って行き、やせた肩に末の弟を背負って人々に物乞いをしていました。

アーノルドさんのこれまでの人生で最も辛かったのは、14歳の頃でした。母親が慢性の肺病で亡くなったのです。喪失感と苦しみからアーノルドさんは学校を辞め、強盗やスリをして暮らす悪い若者たちのグループに加わるようになりました。仲間たちから違法薬物の使い方、買い方、そして売り方までをも学びました。それからの4年間はタバコやお酒に依存する日々でした。そうすることで家族の現実から逃避し、周りの環境になじめると思っていたのです。17歳で刑務所に送られましたが、それでもアーノルドさんの行いは良くならず、各地を転々としながら刑務所から出たり入ったりを繰り返しました。あるとき、数週間にわたって刑務所に送られ、そこでチャイルドホープのことを知り、ようやく自分を痛めつけることは止めなければと考えるようになりました。

悪いサイクルをやめるためには、「私は変わらなければならない、何かをしなければならない、まともな人間にならなければならない」と自分自身に言い聞かせる時間が必要でした。自分だけの力で中毒に打ち勝つのは困難だったので、アーノルドさんはチャイルドホープに助けを求めました。そして、チャルドホープのスタッフのおかげで、これまで経験してきたことにもかかわらず、「僕は真っ当な人間になって、健康で満たされた人生を過ごすことができる」と信じられるようになりました。

チャイルドホープの提供する教育セッションに参加している間、個人カウンセリングやグループディスカッション、自己改革のためのいくつかの宿題がアーノルドさんの日課でした。こうした取り組みを通して、自分について話すことや、他者について知ることを学びました。チャイルドホープのソーシャルワーカーはいつも対話に応じてくれ、過去の悪い習慣の代わりに新しい習慣を身につけていきました。教育セッションが一日から半日に切り替わった時には、自由度の高い環境にどうやって対処すればよいのかわからずパニックに襲われましたが、それまでに学んだことを総動員するようにしました。

そして、2019年1月から「路上で暮らす若者の自立支援プロジェクト」に参加するようになり、ついに自分が新しい人生に向けて準備を進めているという実感を得られるようになりました。チャイルドホープの助けを借りてからここまでは長い道のりでした。アーノルドさんは、「飲食サービス」コースを修了すると、幸運にも実地訓練(OJT)の受入先のホテル・レストランの従業員となり、パンパンガ州アンヘレス市の店舗に配属されました。はじめは「代替教育試験」(日本における高卒認定試験のようなもので、アーノルドさんは2019年4月に合格)を受けた後に大学で学びたいと考えていましたが、まずは仕事に注力することに決めました。そうすることで、教会で保護されている弟たちのためにお金を稼ぎ、自分の将来の学費も貯められると考えたのです。アーノルドさんは、「神様が、チャイルドホープに私の存在を見つけさせてくれたことにとても感謝しています。また、私がこの素晴らしいチャンスを掴めるように自分の時間を捧げて助けてくれた人々にも感謝しています。路上で出会った友人たちに、人生を変えられることを伝えたいです」と話します。

arnold.jpgホテル・レストランで働くアーノルドさん(右端)

残念ながら、新型コロナウイルスの感染拡大でホテル・レストランは営業停止となり、アーノルドさんは職を失いました。2020年10月、チャイルドホープから「小規模ビジネス開発・開始支援金」を受け取り、パンを焼いて販売する事業をはじめることにしました。支援金は小さなオーブンを購入するために使いました。

今、アーノルドさんは兄や弟と一緒につつましく暮らしています。これまで弟たちの面倒を見てくれていた牧師の負担を少しでも減らせるようにと、兄と小さな部屋を借りて弟たちを呼び寄せたのです。銀行で少しずつ貯金をしながら、将来家族が再びみなで暮らせる日を夢見ています。

(報告:事業担当 辻本紀子)

▼このプロジェクトへのご支援はこちら
※ACC21へのご寄付は税制上の優遇措置の対象となります※
本フォームからのお申込みは、フィリピンのストリートチルドレン支援事業への指定寄付としてお受付いたします。
毎月のご寄付
今回のみのご寄付
毎月のご寄付金額をプルダウンからお選びのうえ、「毎月寄付する」ボタンをクリックしてください。
今回のご寄付金額をプルダウンからお選びのうえ、「今回寄付する」ボタンをクリックしてください。

 
  
郵便振替・銀行振込でのご寄付も歓迎です \口座情報はこちらをクリック/
《郵便振替》
口座番号 00160-6-718320
口座名称 特非)アジア・コミュニティ・センター21

※フィリピンのストリートチルドレン支援事業への指定寄付を希望される場合は、通信欄にその旨をお書入れください。指定事業名がない場合は、ACC21の活動全般へのご寄付として活用させていただきます。


《銀行振込》 
銀行名 みずほ銀行
支店名 駒込支店(559)
預金種目 普通
口座番号 1120451
口座名称 特非)アジア・コミュニティ・センター21

※必ずご寄付者さまのお名前、ご住所、連絡先(メールアドレスなど)、指定事業名を kifu@acc21.org宛て にお知らせください。
※メールでのご連絡がありませんと、領収書やお礼状をご寄付者さまにお送りすることができません。