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WE21ジャパンの挑戦-フィリピンの鉱山開発の影響を受けた人々との交流

■2012年2月9日Share

2011年11月下旬の4日間、フィリピン共和国ルソン島北部ベンゲット州での鉱山開発の影響を受けた地域の人々を応援する(特活)WE21ジャパン(横浜市)の事業地を訪問した。今回の訪問では、事業を支援しているACT特別基金「アジア民衆パートナーシップ支援基金」の関係者が同行され、藤井理事長をはじめとしたWE21ジャパン関係者、炭焼きの技術研修指導者の武藤氏((特活)土の会 代表)とともに各地を訪問した。

■コルディレラ地方の半分が鉱山開発申請地
ベンゲット州は、首都マニラがあるルソン島の北西部の山岳地帯にあり、ここに住む先住民族は、棚田を利用した伝統農業を営んできた。高原野菜やコメのほか、国内でも最高級のコーヒーを栽培しているが、十分な収入が得られていない。小規模農家が多いが、鉱山開発、地熱発電所やダム建設事業での日雇い労働などが収入の糧となっている人もいる。
このベンゲット州を含む北ルソン島コルディレラ地方の約半分が、鉱山開発申請地であるという。フィリピンの先住民族権利法(IPRA)では、事前に情報を十分に提供された上で開発の賛否を自由に決める権利が与えられているが、実際は、住民の合意プロセスもなく開発が進められてしまうなどの問題が起こっている。資源開発事業により、環境も伝統的地域社会も壊されてしまった村々が数多くある。また農業においても、近年では化学肥料や農薬を大量に使用し、費用が嵩むだけではなく、土地も荒れるなどの被害が起きている。

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ルボ村の露天掘り鉱山開発の跡地。事務所や精錬所らしき建物の跡が残る

■山が消え、ダムが残ったルボ村
今回の訪問の拠点となったラ・トリニダッド市は、マニラから車で約7時間のところにあり、4ヶ所の事業地は、さらに車で3~6時間の山間部にある。
事業地の1つ、キブンガン市ルボ村では、1974年、大規模な露天掘り(*) が開始された。鉱山会社が倒産したため、82年に現地住民に保証もしないまま撤退し、かつての2つの大きな山は姿を消し、有害物質を含む大きな湖だけが残った。現在は、サヨーテ(ハヤトウリ)やトマト、豆などの野菜を栽培している。サヨーテは1キログラムあたり4~5ペソ(約8円から10円)で販売しているが、運搬費や化学肥料の費用を引くと、農家の手元にはほとんど残らない。そのような細々とした農業を営んでいるので、私が宿泊した家庭のご主人、カワヤンさんは、木酢液の利用で農業支出が削減するのではないかと期待しており、また植林が環境の回復に役立つのではないかと、関心を持っていた。
* 鉱石を採掘する手法のひとつで、坑道を掘らず、地表から渦を巻くように掘っていく手法。

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住民とともに苗木や種を苗木ポットに植える作業を行った。半年から1年後に植樹する

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住民と対話しながら、熱心に指導する武藤氏(写真右)

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ドラム缶を利用したもみ殻燻炭作り。缶の中で燻炭ができ、写真左のペットボトルに木酢液がたまる

■炭を利用した環境修復活動と人材交流
この事業では、日本の炭づくりの技術を現地に伝え、木酢液や炭を利用した環境修復活動を中心に、適正技術の共有と人材交流を推進している。

ルボ村では、まず、苗木植樹の準備活動として苗木や種を苗木ポットに植える作業を住民とともに行った。その後、住民が武藤氏の指導を受けながら木酢液の抽出を試みた。抽出の間、炭の効能について武藤氏が説明し、日本の足尾銅山跡地での環境修復活動についてWE21ジャパンが紹介した。

成功率が高く、最も簡単な方法であるという理由で、この事業では、ドラム缶を利用した炭焼き法を推奨している。武藤氏の指導を受けるこの日のために、住民たちは機材を準備していたのだが、煙の吹き出し用に細長い鉄パイプを用意していたので、すぐに火が消えてしまう、煙が冷えない、木酢液が出てこないなど、上手くいかない場面があった。豊富な経験をもつ武藤氏は辛抱強く指導し、住民たちも多くの質問を投げかけていた。会合の場で、住民たちは「木酢液の製造は難しいと思っていたが、今回、実際にやってみて、何度もやればできるようになると感じた。継続して取り組みたい。」と抱負を語った。

WE21ジャパンのスタッフが初めて現地を訪問した3年前は、鉱山会社の調査員ではないか、などの疑いを持たれ、会う人ごとに来訪の目的を説明しなければならかったそうだ。事業の現地実施パートナーのNGO関係者によると、一般的に鉱山開発などに対する住民の意見は賛否に分かれ、対立しているとのことだった。また、過去の開発による被害などで虐げられた経験から、人々は意欲を失っており、住民の反応は弱く、NGOが活動することが難しい地域であるという。しかし、私たちの訪問時にルボ村で開いた会合には約40人の住民が参加し、積極的な意見と炭焼きや植林活動への参加意欲を口々に語っていた。こうした住民たちの前向きな反応は、外部のフィリピン人さえ、あまり訪問しないような山の中にあり、政治的対立が頻繁にある地域であるにも関わらず、WE21ジャパンの関係者は何度も訪問し、人々と寝食をともにして、真摯な態度で想いを共有し、交流を重ねた成果であると思った。

今後は、木酢液に関する正確な知識の普及と実践者の拡大、啓発活動の強化などに、現地NGOや住民組織とともに取り組むことが期待される。


<報告:ACC21西島恵>