ASIA NOW ―アジアの現場から

障がいをもつ子どもとその家族を支援【カンボジア】

2016年7月12日 Share

カンボジアの北西部に位置するポーサット州。その中心部まで、首都プノンペンから174km、車で約4時間かかります。人口約47万人のうち、障がい者*は約4%。なかでも障がいをもつ子どもたちは、医療・衛生などの公共サービスへのアクセスが限られているうえ、学校はバリアフリーとなっておらず、障がい児への適切な教授法の知識が不足するなど、さまざまな問題を抱えています。さらに、家庭内でも地域内でも差別があり、障がい者に対する家族、コミュニティ、教師、自治体の考え方を変える必要があります。

現地NGO・DDSP(障がい者開発サービスプログラム)は、2005年から同州において障がい児の教育の分野で活動している団体です。2013年度からの3年間、公益信託アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)から助成を受けて、教師の能力強化、障がい児や貧しい子どもへの奨学金・学用品助成、教材支援、保健・衛生サービスの提供のほか、保護者の自助グループ活動への支援に取り組んできました。2015年12月中旬にアンガラが現地を訪問し、障がい児、保護者、学校関係者から話をうかがってきました。

*カンボジア政府は、障がい者を「精神的・肉体的な機能の欠落、喪失、損傷によって、日々の生活や活動が阻害されている人々」と定義しています。


治療を受ける前のダニさん(2014年1月)

ダニさん(右から5番目)と家族。4人きょうだいの次女で、祖父母といっしょに暮らしています

■ともに学ぶ子どもたち

カンボジアには、障がい児とその他の児童がともに学習する「インクルーシブ教育」(Inclusive education)の方針があります。DDSPは、インクルーシブ学級において、障がい児が健常児とともに、日常生活で大切なスキル(ライフスキル)を身に付けられるよう、仲間同士で相互学習をする活動を行っています。

インクルーシブ学級に通う小学2年生のソン・ダニさん(6歳)の家庭を訪問しました。2014年に小学1年生になったダニさんは、鼻の静脈が腫れて呼吸困難になるという障がいがありましたが、3年前の診察では年齢が低いために治療を受けられませんでした。翌年9月にDDSPの仲介で無料で診療できる評判の良い病院で再度診察を受け、薬を処方されたところ、鼻の腫れが引き、呼吸しやすくなりました。現在でも2~3カ月おきにプノンペンの病院に通う必要があるため、DDSPは交通費、滞在費の補助(30~50ドル)を保護者に提供しています。このほか、学用品や制服、布団、蚊帳も援助されています。


■障がい児にやさしい学校へ

特別学級の教室のとなりに、障がい者用トイレ、スロープ、手すりを設置しました

特別学級(公立普通学校の障がい児向け学級)では、軽度の知的障がい児らを対象に、ライフスキルや基礎的な認知スキルを得られる教育を提供しています。この事業では、学用品や制服などの奨学支援のほか、特別学級を運営する教師向けの教材も提供しています。

15年度に特別学級が新設されたボン・クナ(Boeng Kna)小学校を訪問しました。DDSPは学校長の協力を得て、普通学級の教室を特別学級仕様に改装しました。校長は「14年度からDDSPに特別学級の設立をお願いしていたものの、しばらく予算が確保できなかったのですが、15年に入り、机と椅子、障がい児の遊び場、障がい者用トイレ、傾斜路・手すりなどの支援を受けることができました。保護者も大変喜んでいます。今後は、教師や普通学級の生徒たちの障がいに対する認識を変えたいと思っています」と、熱く語ってくださいました。


■家庭の収入向上も支援

ピックティくん(写真中央)の両親は、DDSPからの融資をもとに、石彫の販売を始めました

このほか、障がい児の家庭の収入向上も支援しています。13年度に設立されたプレイ・ギー(Prey Ngy)小学校の特別学級に通うソ・ピックティ君(17歳)の家庭を訪問しました。それまで、彼のお父さんはNGOで契約職員として働き、お母さんは建設労働者として出稼ぎに行っていました。両親と、学校に通う妹が留守の間、ダウン症患者であるピックティ君に付き添う人がいなかったため、外に出て迷ってしまわないよう、彼は家の外に出られない毎日をおくっていました。

13年度にDDSPの仲介でピックティ君が特別学級に通うことになり、同時に両親が収入向上ビジネスを始めるための融資を受けました。現在、両親は家庭での小規模ビジネスを3種類営んでおり、月120ドルだった収入は2倍になり、生活費、教育費、彼の入院費用などをやりくりすることができています。 お母さんは、「融資のおかげで家計は安定しましたし、ピックティも学校で友だちができました。前は恥ずかしがり屋で近所の人たちともあまり話しませんでしたが、今は近所の子どもたちとよく遊ぶようになりました」と、家庭やピックティ君に起きた変化について話してくれました。


■家族同士の助け合いのサポートも

公立病院の理学療法士が、理学療法センターで親たちにカウンセリングを行っています

DDSPが04年に公立病院の敷地内に設立した理学療法センターでは、重度障がい児のリハビリテーションや理学療法の支援を行い、障がい児の保護者に健康・栄養教育を行っています。当事者の家族からなる自助グループでは、月1回会合が開かれ、保護者間の情報共有や貯蓄活動が続けられています。現在、39人の保護者が参加し、累積貯蓄額は約2,000ドルになりました。メンバーである保護者6人と話しました。

お母さんたちは、DDSPが定期的に行う、子どもと障がい児の権利についての意識啓発ワークショップで理学療法センターを知り、センターに通うことにしたそうです。また、貯金して収入向上ビジネスを始めたいので自助グループに入ったということでした。これらの活動に参加したことで、「非常時の資金を貯蓄できるので助かる」、「問題がある時に相談できる仲間がいて安心」、「子どもがレクリエーション活動に参加できてうれしい」と話してくれました。その一方で、保護者が亡くなった後、障がいをもつ子どもたちの将来に不安を感じているとも言います。DDSPは、障がい児が自立できるよう、支援を続けていきます。




<報告:アンガラ・グラディス(ACC21スタッフ、ACTアソシエート・プログラム・オフィサー)>