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"法に抵触する子ども"を守り育てる【インドネシア】

2016年10月13日 

人口(2億5,200万人)で世界4位、10歳から24歳までの若年人口の割合(26%)では世界3位のインドネシア(「世界人口白書」、2014年)。
このうち、北スマトラ州では、犯罪を犯したり、被害に遭うなどする「法に抵触する子ども」の数は660人(2014年)にのぼるといわれています。これまで、「法に抵触する子ども」のうち、加害者だけが『青少年刑事司法システムに関する法律』の適用の対象となっていましたが、2014年8月に同法が改正され、「法に抵触する子ども」を『加害者』『被害者』『証人(目撃者)』の3つに分類するようになりました。

現地NGO・子ども調査研究センター(PKPA)では、2015年度から「青少年刑事司法システム関連法を通じた法に抵触する子どもの保護」事業を開始しました。加害者、被害者、承認の立場に置かれる子どもたちや、関係者相互の損失の修復を図る「修復的司法」や、カウンセリングなどのケアを通じた再発防止をはかる「ディヴァージョン」を通じて、"できるだけ出身地域内で、刑事罰に偏ることなく"解決し、再発を防止します。


警察、自治体、法務省、NGO関係者による会合のようす(州知事オフィスにて)。メダン「子ども特別開発機関」(旧・子ども刑務所)には現在、収容可能人数をはるかに超える542人が拘置されていますが、18歳以下は67人です

■この事業で実現を目指すこと

この事業では、次の4点を目指しています。

1.刑事責任が課せられる最低年齢を8歳から12歳に引き上げる
2.法に抵触する子どもの権利を明確に定め、管理する
3.ディヴァージョンと修復的司法を定める
4.従来の「子ども刑務所」、「拘置所」に代わる新しい機関を推進する

2015年9月中旬、ニアス島とメダン市で、PKPA事務所と地元警察署の女性・子どもユニット、旧・子ども刑務所(「子ども特別開発機関」に名称変更)などを訪問し、関係者から話を聴きました。ニアス島では、法に抵触する子どものケースを年間約80件扱っています。加害者は男子、被害者は女子が多いようです。とくに性暴力事件のほとんどが家庭内や親族間で起きています。主要な年齢層は5~17歳で、15歳以上は刑務所への送致対象となり、14歳以下は家庭や地域でリハビリテーションを行います。

ニアスでは、PKPAが関係機関(警察、自治体、法務省など)に積極的に働きかけた結果、コミュニティ内で問題解決とリハビリテーションを行う「ディヴァージョン・フォーラム」設立に関する覚書が締結されることになりました。村の有力者、宗教的な指導者など10~30人で構成される「村子ども保護委員会」も重要な役割を果たします。

PKPAのスタッフは「フォーラム設立に向けた準備会合を3回開きましたが、その中で、各機関の理解が異なっていることが分かりました。警察は、加害者が被害者に賠償金を払う「調停」=「ディヴァージョン」だと思っていました。ディヴァージョンは、加害者となってしまった子どもに法を犯したことの自覚を促し、保護者やコミュニティが参加して、子どもをリハビリテートし、地域社会に戻ることを目的とし、時間がかかるのです」と説明してくれました。

2015年度の前半は、修復的司法アプローチを通じて、ディヴァージョン・システムの実施体制を強化し、2016年1月からは法執行人(警察、裁判所など)の能力向上と一般社会の意識啓発をすすめています。


■現在の課題と問題点

現在の課題と問題点には、次のようなものがあります。

  • 裕福な家庭でも売春する子どもが増えています。Facebookなどのソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)を通じた被害も急増しています
  • 「ムシャワラ」という慣習で、村や家庭の名誉が優先されがちなため、子どもと子どもの将来を優先的に考えるための意識改革が必要です
  • 15歳以上の性暴力は重犯罪ですが、バナナなどを盗んだ子どもにも窃盗の5年刑が適用されるなど、軽・中・重犯罪の指標がありません
  • ケースを最初に扱う警察が、「ディヴァージョン」に積極的に取り組む必要があります
  • 法律では①刑務所(法務人権省の管轄)、②拘置所(警察の管轄)、③鑑別所(法務人権省の管轄)の3段階の施設が規定されていますが、③の鑑別所はまだありません


<報告:鈴木真里(ACC21事務局長、ACTチーフ・プログラム・オフィサー)>