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農民グループが「有機認証」を獲得!【フィリピン】

2017年2月24日 

フィリピンには、有機農産物の品質を保証する『有機認証システム』があります。しかし、認証を受けるためには、厳しい基準をクリアし、品質を管理維持するための「内部品質管理システム」を定めたうえで、さまざまな申請書類を準備しなければなりません。小規模農民のグループにとっては簡単にクリアできるステップではありませんが、有機認証を受けることができれば、市場での優位性を高めることができます。

2014年からフィリピンで有機農業の認証資格取得に向け取り組んでいた農民グループが2016年8月に「有機認証」を取得したという嬉しい知らせが届きました。

「有機認証」の証明書を受け取った農民グループ

■有機農業を始めただけでは収入につながらない

今回認証を取得したのは、フィリピン中部のパナイ島イロイロ州のパッシ市(人口約8万人)で活動するグループで、主にサトウキビとコメを栽培しています。現地NGOのCARRD(農地改革・農村開発センター)は、2005年からこの地域で農民が土地権利を獲得するための技術・法的支援を行ってきました。2012年には有機米の栽培についての啓発活動を開始し、農民たちの有機農業への移行が始まりました。

しかし、せっかく苦労して有機米を生産しても化学肥料を使った米と同じ値段で売買されてしまい、収入の増加に直結できていませんでした。そこで、CARRDは、2014年、ACC21が事務局をつとめる公益信託アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)からの助成を受けて、農民グループが有機認証を取得するための支援を開始しました。


■認証取得に向けた第一歩 ~農民自ら農場を査定し、記録を作成~

認証を受けるために必要な「内部品質管理システム」の重要なポイントは、農場査定者(農民)が各農場を視察し、肥料の種類や(有機ではない)他の畑との距離など、管理状況について細かく記録をつけること、そして農民たち自身で改善してゆくことの2点です。

まず、メンバーの中から農場査定者として10人を選抜し、研修を実施しました。農場査定者は、14年の2回目の収穫期と2015年の1回目の収穫期に、それぞれ計4回(田植え期、収穫管理期、収穫期、収穫後)にわたり各農場を訪問し、過去4年間の農業方法や収量などについて詳しく農民から聞き取り、詳細に記録しました。農場査定者は、必要があれば訪問先の農場で有機農業の技術指導も行いました。CARRDはデータベースを作成し、それらの記録を入力しました。

それぞれの農場は離れており、道も整備されていないなか、有機認証を得るという目的に向け、農場査定者たちは努力を惜しまず取り組みました。

CARRDは、「農民の中から農場査定者を選抜したことで、選考や指導する必要が生じたものの、CARRDへの依存心が減り農民たちの手で活動が持続する見通しがたった」と評価しています。また、訪問記録とデータベースをつくったことにより、農業パターンをより詳細に把握でき、今後の農業研修に生かすことができるようになりました。

農場査定者(左)に農場の記録方法について指導するCARRDスタッフ

■「フィリピン有機認証センター」に書類を提出

これらの準備を経て、なんと250世帯分の農場のデータが揃えられました。2015年2月には、フィリピン有機認証センターに有機認証申請書類を提出したものの、認証を受けるまでの道のりは険しいものでした。申請した翌月の2015年3月には、センターから「完全に有機農業に転換した農地のみ、今回の認定の対象となる」との通達がありました。当初提出した書類には、農場の一部で化学肥料や市販の農薬を使用している農民のデータも含まれていたため、データを精査した結果、43世帯・20ヘクタールの農場のみが対象となることがわかりました。そこで、書類を作成して再提出し、2015年9月下旬には認証センターによる農場査察が行われました。

この間も有機米(黒米と赤米)の栽培と収穫は続けられました。2015年10月には、農民グループによる協同組合(農民組合)が、農民の生産した有機米を買い取り、共同で販売する取り組みを開始しました。それと並行して、有機米専用の精米機の管理やマニラ首都圏で有機米の販売を行う企業と農民組合の間で交渉が始められました。

■38人の農家が有機認証を獲得

このような経緯を経て、2016年8月には、38人の農家(農地の合計は約18ヘクタール)が有機認証(有効期限2017年3月)を取得することができました。

今後は販売価格の交渉をこれまで以上に強気で行うことができるようになります。CARRDと農民グループは2016年11月と翌年2~3月の2回の収穫期には、これまでよりも高い価格で販売できるだろうと期待しています。

■有機農業に高い関心を寄せる農民たち

この地域では現在、179人の農家が有機農業に挑戦しています。CARRDは有機農業技術の向上のための「農業法」「農業の記録作成」「土壌分析」「汚染管理」などのテーマで研修を行っており、ACTが支援をした2014年度の1年間で、延べ680人の農民が研修に参加しました。これは当初の予想を上回る参加者数で、有機農業に関心があることがうかがえます。CARRDでは今後、さらに多くの農家が有機認証を受けられるよう、継続的に支援するとともに、近隣に機米専用の精米機がないため、この農民グループが精米機の管理・維持システムを構築し、持続的に発展してゆけるよう、支援したいと考えています。

2014年11月に事業のモニタリングでパッシ市の農民グループと農場を訪問した際には、複数の農民が「健康のため、環境保全のため、有機農業を推進していきたい」と語っていました。ACTでの支援は終了しましたが、農民たちの新しい一歩を祝し、今後の発展を陰ながら応援していきたいと思います。

土壌分析について実践的に学ぶ研修に参加する農家の女性たち

<報告:西島 恵(ACC21スタッフ、ACTプログラム・オフィサー)>