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全国に拡がる寄生虫症削減の取り組み【フィリピン】

2017年5月1日 

フィリピン南部の島・ミンダナオの東部に位置するダバオ・デル・ノルテ州は、「土壌伝播寄生虫症」「住血吸虫症」「食物媒介吸虫類感染症」などの寄生虫症の感染が多くみられます。寄生虫症は学齢期の子どもの成長遅延、貧血などを引き起こし、さらに学業成績の低下につながると考えられています。

保健省が無料で薬を提供していますが、巡回投薬は労力とコストがかかるため、ほとんど実施されていません。そこで、2012年度から、保健省と教育省が連携し、学校で教師が集団投薬(2種類)を行い、寄生虫症の予防と管理、子どもの健康状態の改善、学業成績の向上を目指す活動が始められました。

集団投薬当日に、州の看護師や医師などで編成されたモニタリング・チームが学校を訪れ、実施状況を確認しました

■大きな成果によって国の政策に影響

この活動ははじめ、2つの行政区の10の小学校で始まりました。その後、3年間で対象校は69校(1市6行政区)にまで拡大しました。州議会、保健省、教育省をはじめとした地方行政関係者から有効性・妥当性が評価され、2015年度にはダバオ地方全体での実施が計画されるようになりました。

さらに、この方法を踏襲した制度が保健省で採用され、全国の学校で集団投薬を行うプログラムが始まりました。制度化に至った要因のひとつに、実施団体(フィリピン大学マニラ開発財団)スタッフの情熱に地域の主要な関係者がよく応え、協力の輪が広がったことがあります。

■ホルミード医師(ダバオデル・ノルテ州 保健局長)

「当初はこのやり方にいくつか疑問を持ちました。しかし、マニラから地方まで来て説明してくれたフィリピン大学マニラ開発財団のスタッフの熱意に押されました」と語ったホルミード医師。その後、同州の教育局と連携を進め、積極的に寄生虫症の撲滅に取り組むようになりました。努力の甲斐あって、2014年には寄生虫症のひとつであるリンパ系フィラリア症の"流行地域外"と保健省から認定を受けることができました。

ホルミード医師

■ファドゥール氏(ダバオ・デル・ノルテ州 教育局長)

ファドゥール氏は初年度の投薬状況を見学し、生徒の親から投薬の同意が得られなかったり、教師が投薬を怖がったりしている様子を目にしました。そこで、実施体制を改善するよう指示しました。「私自身、寄生虫症についてよく知りませんでした。この事業のおかげで、私も教師たちも、多くを学ぶことができました」

ファドゥール氏

■アール医師(ダバオ・デル・ノルテ州 教育局医師)

この取り組みに最初に賛同・協力してくれたのはアール医師でした。「事業開始当初は、教師や親からの理解を得ることがとても大変でした。今では、教師が自信をつけて協力してくれるようになりました。学校での集団投薬という方法は、投薬率の向上、子どもの健康の保護と改善、医療チームの経費削減、親や教師の健康への意識の向上など、良い点ばかりです」

アール医師(左端)

■バサロ医師(ダバオ・デル・ノルテ州カルメン行政区 保健所長)

「学校で集団投薬をするというこの取り組みでは、貧しい公立学校の生徒に投薬をできると考え、賛同しました。不慣れなため最初は困難が多かったですが、現在は指示しなくても動くようになりました。ダバオ・デル・ノルテ州の州政府、各行政区長、保健局の看護師、各学校の先生たちなど、たくさんの協力があったからこそできました」

バサロ医師(右)

<報告:西島 恵(ACC21スタッフ、ACTプログラム・オフィサー)>