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はだしの女性弁護士をスリランカに!【スリランカ】

2017年6月22日 

スリランカ南東部に位置するウバ州。紅茶好きの人ならばすぐに世界三大銘茶ウバ茶を思い浮かべるかもしれません。スリランカのスパイシーなカレー料理に、ウバ茶を用いたミルクティーはとてもよく合います。

そのウバ州の県都モナラガラ県は、スリランカのなかで2番目に大きな県です。この自然豊かな土地には、セイロンゾウをはじめとしたさまざまな野生動物たちが生息しています。住民たちは季節ごとに野菜、豆類、香辛料、果物などの作物を育て、わずかな収入を得てきました。ところが、1990年代後半からバナナやサトウキビの大規模なプランテーションや加工工場が次々と建設され、農民たちや野生動物たちの生活は脅かされるようになりました。住んでいた土地を追われたり、単一作物の栽培に転換して気候変動のリスクにさらされたり、農薬や化学肥料の使用で深刻な健康被害が発生するなど、さまざまな問題に直面しています。


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(写真左)スリランカでは定番の野菜中心の家庭料理。ウバ・ウェラッサ女性団体(UWWO)メンバーが栽培する赤い有機米はとても人気がある
(写真右)UWWO近くの貯水池のほとりにて。いつ来ても定位置にいて、気軽に写真撮影に応じてくれる


■泣き寝入りする女性たち

なかでも女性たちは、苦しい立場に置かれています。多くの女性たちは、十分な教育を受けられず、生活や医療、子どもの教育のために必要な収入を得られていません。早婚の問題も多く、10代で結婚・離婚した女性たちの多くは、養育費や慰謝料がないままに子どもを育て、貧困状態に置かれています。また、家庭内暴力や土地をめぐる紛争などの問題も後を絶ちません。しかし、女性たちは行政の手続きや法律についての知識を持っていないために、関係当局に支援を求めたり、法的な手続きを取ったりすることができないでいます。泣き寝入りをする女性も少なくありません。


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UWWO理事長のソーマさん(中央)とメンバーの女性たち。農家の女性たちが30年以上前から活動している


■法と女性をつなぐ

こうした状況に対して、現地NGOウバ・ウェラッサ女性団体(UWWO:Uva Wellassa Women's Organization)とジャナサンサダヤ(Janasansadaya、人権保護団体)の2団体は、3名の女性リーガル・アシスタント(リーガル・エイド・ファシリテーター)を養成するトレーニングを実施しました。目的は、不公正な行為に対して行動を起こす女性たちを支援し、UWWO内に法律相談窓口を設置することです。

トレーニングは、まず国際人権に関する法律文書とスリランカの憲法、特に基本的人権について議論することから始められました。8件の暴力行為や拷問と、3件の基本的人権の侵害に関するケース・スタディも行われ、研修生たちは弁護士や調停人から助言やアドバイスを受けながら、それぞれのケースについて深く掘り下げて議論しました。また、実地研修も行われ、人びとからの訴えがあった場合にはそれに立ち会い、実際にどのようなケースがあるのか、内容をどのように記録に残せばよいか、また行動を起こすために誰にそのケースを伝えればよいかなどの指導を受けました。

UWWOの代表者はこう語っています。「この養成トレーニングは実に実り多いものでした。人権保護団体と(当事者である)女性の住民組織が連携するのはスリランカでは初めてのことで、歴史的なプログラムになりましたし、現場での実践に活かせる内容だったことがよかったです。人権保護団体で働きながら実際のケースを扱うことができたのは、彼女たちにとって貴重な経験になったことでしょう。」


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(写真左)インターン真っ最中の2月上旬、UWWOオフィス内に「相談窓口」が開設され、10日間で6件が持ち込まれた
(写真右)インターンとして3ヶ月の研修を受けたポディノナさん。「私は女性の権利について大きく目を開かれました。自分自身の経験と、ここで
取り扱っているケースを比較しても、夫のケースと妻のケースでは、妻の方がより被害の度合いが大きいということが分かってきました」


リーガル・アシスタント、名づけて「はだしの女性弁護士」は、トレーニング後は地元に戻り、地域の人びとが抱えるさまざまな問題-家庭内暴力、離婚、土地問題、不当な拘束など-の解決に向けて人びとをサポートすることが期待されています。


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(写真左)最高裁を訪問したインターン3名。UWWOから派遣されたクマリさん(左)、ポディノナさん(中央)と、各地の女性組織と人権保護NGOの連絡調整役となるプラディーパさん(右)
(写真右)ウバ州モナラガラ県ウェラワヤDS 地区で30 年以上の活動実績をもつUWWOの中心メンバー。代表のソーマさん(後列左から2番目)がもつのは「国際女性の日賞」の受賞トロフィー







<報告:鈴木 真里(ACC21事務局長、ACTチーフ・プログラム・オフィサー)>