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「はだしの女性弁護士」を核にした法的支援システム【スリランカ】

2017年8月2日 

ウバ州モナラガラ県ウェラワヤDS地区の農村地域では、貧困、教育の欠如、家庭内暴力、土地をめぐる紛争、警察による夫の不当逮捕など、女性たちは多くの問題を抱えて生活しています。しかし、特に行政や司法が絡む問題については、知識不足から法的な手続きを取ることができず、泣き寝入りする女性たちが多くいるのが現実です。 そこで、ACC21では、地域の女性の中から、法律や行政手続きについての知識をもつ「リーガル・ファシリテーター」を育成する事業を2016年度下半期に開始しました。

これに先立ち、2016年12月に1ヶ月限定で、クラウド・ファンディングサイト「JAPAN GIVING」等を通じ、『行政の手続きや法律の知識がなく、泣き寝入りするスリランカの女性たちを救いたい!』という題名でファンドレイジングを行った結果、計43万8,888円のご寄附をいただき、事業を開始することができました。 現地パートナー団体のウバ・ウェラッサ女性団体(UWWO:Uva Wellassa Women's Organization)がメンバー(女性農家)の中から2人を選定し、17年1月中旬から4月上旬の約3ヶ月間、人権保護問題に取り組むNGO「Janasansadaya」で法律や制度についてのトレーニングを実施し、UWWOには法律相談窓口が開設されました。

インターンの様子は、「はだしの女性弁護士をスリランカに!」をご覧ください。


■「リーガル・エイド・ファシリテーター」研修(2017年6月)

コロンボに本部を置く人権保護団体のジャナサンサダヤ(Janasansadaya)とUWWOは、2017年6月上旬に、UWWOがネットワークを組む女性組織のリーダーを対象に、地域一帯に法的支援システムを構築することを目的とした研修を開催し、先にインターンとして研修を受けたUWWOのメンバーの女性2人を含む、各地の女性組織から選定された24人の「リーガル・エイド・ファシリテーター」、UWWOメンバー14人が参加しました。

リソースパーソンとなった弁護士は、5月下旬に韓国で行われた研修での経験を共有しました。韓国はアメリカ統治下での独裁的な法に対して、1979年、強い抗議の声をあげる市民社会が形成されました。大学生や労働組合で構成された抗議デモは激しくなり続け、1980年5月18日、光州市で起こった全南大学校包囲網に抵抗する学生らと軍隊との衝突は、9日間にわたる市全域の暴動に発展しました。調査では、一般市民犠牲者数207名と確認されました(光州大虐殺)。国全体に民主主義を求める声を広げ、1987年の初の大統領直接選挙への道筋ができました。

その他、法の支配の効力、警察や司法機関や人権委員会の機能、警察の暴力や虐待を予防する近代テクノロジーの効果―特に、女性の人権保護の現状について共有しました。女性の社会的地位は、法的権利、教育、健康のような社会的セクターにおいて男性と平等になってきている一方、労働力や政治的な参加においては依然として大きな不平等があります。また、民主主義を守るために積極的に関与する韓国の人々たちには、収賄と汚職への嫌悪が根付いていることが強調されました。

韓国では現在、2万5,000人のスリランカの若者が働いているとされています。彼らの多くはスキルがなく、韓国に行くため、多くの人々がハングル語を学んでいますが、韓国の発展の背景ついては、あまり知られておらず、対話も行われていません。そうした対話は「村のリーガル・エイド・ファシリテーター」や「はだしの弁護士」にとっては重要なことであるということでした。


■中国で生まれた「はだしの弁護士」

続いて、ジャナサンサダヤの事務局長は、「はだしの弁護士」の語源を紹介しました。「はだしの弁護士」(中国語では赤脚律师 pinyin: chìjiǎo lǜshī)とは、中国では独学の法律活動家を意味します。彼らの多くは農民で、市民の訴えを申し立てるための法律を自ら学び、訴訟に携わり、権利について市民を教育することです。そこで、ここではその定義を、「市民からの訴えをサポートするのに必要な実践的・法的運用を独学で学び、法的行為を起こすことを促し、市民に権利について教育する活動家」と定義することができるとしました。

その後、人権における暴力、女性の権利、これまでに行われた22人のリーガル・エイド・ファシリテーター養成プログラムを振り返り、暴力が行われた時の対処法について、ケース・スタディを用いて長時間にわたって意見交換を行い、どんな進展があったかを示すために、いくつかの法的事案を取り上げ議論しました。


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リソース・パーソンをつとめた弁護士の話を聴く参加者


■法的支援ファシリテーター(リーガル・エイド・ファシリテーター)の義務

話し合いの結果、次のようなことがスリランカ版「はだしの弁護士」=法的支援ファシリテーター(リーガル・エイド・ファシリーター)の義務として掲げられました。

1.発生しつつある暴力行為や、そうなる状況や暴力そのものについて調査し理解する。そして、法的行動をとるための支援をする。被害者に行動の起こし方を示し勇気づける。
2. 調停のプロセスにおいては、①それぞれの問題に関して、法の所在を明らかにする。そして、②調停の必要性に基づいて共同で行動を起こす。
3. 抑圧されてきた当事者が信じている迷信を取り除くよう支援する。恐れを取り除くよう促し、義務を率直に説明し、勇気づける。
4. 暴力はカルマや悪い時期、不吉な前兆、魔術、オカルト信仰によって起こるものではなく、法の支配の欠如によって起こるということを十分に説明する。


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「はだしの弁護士」である女性の多くは農業をしながら、家庭を支える母親でもある


■重要な資質

「はだしの弁護士」(リーガル・エイド・ファシリテーター)となるうえでは、すべての人は平等で、他者よりも優っている人はいないと考え、受け入れることが重要であり、人々を憂鬱にさせ苦しめてきた抑圧的な信仰や慣習に立ち向かい取り除くことであることがその役割であるということになりました。

問題提起の一例として、不可触民の下層階級に生まれたDr. Babasaheb Ambedkarが制作したドキュメンタリー映画の一部が上映されました。この映像を視聴した参加者は、スリランカ社会に浸透しているカースト制について話し合い、それは大海に浮かぶ氷山の一角に過ぎないという意見で一致しました。


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18女性組織から各2名が委員となり地域全体で法的支援体制を整備することになった


■法的支援委員会を発足

今後の活動について次のようなことが確認されました。

・各女性組織(18組織)から各2名の「リーガル・エイド・ファシリテーター」を選出し、それぞれの地域や近隣で不正が起きた場合には、それを調査し証拠書類を提出する。
・「リーガル・エイド・ファシリテーター」計36名からなる委員会を組成する。毎月の会合では、地域で起きている不正や暴力などの問題について話し合い、関連する組織や機関に対して必要な行動を起こす。
・現在地域で問題となっている案件(暴力事件、母子への生活費未払い、土地問題、拷問等)に関して引き続き情報収集し、必要な働きかけを行い、被害者を調停し、必要なアドバイスを行う。
・法の支配の確立を助け、適切で正当な法的プロセスに則っておらず、法令に違反する犯罪を起こした可能性や証拠がないケースにおいては、いかなる個人も恣意的な逮捕や抑留を受けることがないように働きかける。原告と被告が対等な権利を持ち、司法が双方を公平に扱うべきであるということを心に留めておく。





<報告:鈴木 真里(ACC21事務局長、ACTチーフ・プログラム・オフィサー)>