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アジアNGOリーダー塾
アジアのNGOでのインターンシップ報告


2017年3月25日(土)、アジアNGOリーダー塾では、「アジアのNGOでのインターンシップ報告会」を開催しました。当日は、1名の塾生と1名の修了生が発表しましたが、吉野塾生の発表内容をここに掲載いたします。

「PAMULAANでのインターンシップで得た気づき」

発表者:第8期生 吉野 華恵 (元・中学校高等学校社会科教諭)


ANLP_Yoshino2.jpgのサムネイル画像 インターンシップ先:PAMULAAN, Center for Indigenous Peoples' Education
(パムラアン先住民族教育センター)
期 間:2017/01/25-2017/02/24
国・地域:フィリピン、ミンダナオ島ダバオほか

自己紹介
私は中高一貫校で社会科の教員をしていましたが、2014年から16年にかけて青年海外協力隊としてアフリカのマラウイ国で農民グループの収入向上活動に携わった経験から、今後は途上国における教育支援に関わりたいと思うようになりました。

そこで、NGOの活動に興味を持った私は、2016年秋、アジアNGOリーダー塾の門をたたきました。

インターンシップのテーマ
今回インターンシップをさせていただくにあたっては、渡航前にテーマを、
1. NGOが公教育でできないことをどのように果たそうとしているか(特に平和教育分野)
2. PAMULAANは教育を通して学生の人生のみならずコミュニティ開発にも影響を及ぼしている。その包括的なマネジメントについて学ぶ
の2つ掲げていました。

しかし、PAMULAANに到着して数日後、座談会で学生たちとざっくばらんに話し合いをしたことをきっかけに、より具体的にこの1か月間のインターンシップの目標が見えてきました。それは、①PAMULAANで行われている「先住民族に特化した教育」のカリキュラムや方法論を探る、②なぜ100%の学生たちが卒業後はコミュニティに戻って人々のために奉仕したいという強い意志を持つようになるのかを探る、③PAMULAANは学生のみならずコミュニティの発展においても影響を与えているが、その包括的な開発手法を学ぶ、です。

インターンシップ受け入れ団体「PAMULAAN」とは
パムラアンはフィリピンの先住民族に特化した高等教育機関で、Benjamin. D. Abadiano氏によって2006年に創立されました。公立の南東フィリピン大学と提携し、初等教育・社会起業・農業・人類学・平和学の5コースのいずれかで4年間修学後、学士号を授与しています。現在、生徒数は31民族から成る86名で、これまでに183人の卒業生を輩出しており、「変革を起こせるリーダーの育成」をビジョンに掲げています。ちなみに、「パムラアン」とは種が育つ苗床を意味しています。

PAMULAAN_entrance.jpg PAMULAAN_students.jpg

この高等教育機関の他、先住民族の子どもたちを対象とした小学校の運営、コミュニティリーダーの能力開発と技術とレーニング、先住民族の文化遺産保存活動、先住民族が栽培したコーヒー豆を用いたカフェの経営なども行っています。パムラアンのモットーは「Education for Self-Reliance and Community Service」。小学校でも大学でも、この「コミュニティに奉仕する人材を育てる」というキーワードをよく耳にしました。

インターンシップの内容
まず初めの1週間は大学の授業に参加させていただきました。フィリピンの初等教育や中等教育では先住民族についての歴史や文化を学校で学ぶことはほとんどないそうです。教わったとしても、自民族についてぐらいで、パムラアンに集う学生たちもここに来るまでは他の民族についてはほとんど知らなかったとのことでした。

PAMULAAN_Jugyo.png 私が参加させていただいたのは、「先住民族の発展における課題と展望」、「社会的文脈のなかでのジェンダー発展」、「先住民族のイデオロギーと世界観」、「先住民族の文学」の授業でした。驚いたのは、学生たちの英語力・プレゼンテーション力の高さです。どの生徒も堂々としていて、自信に満ち溢れています。これもパムラアンでの教育の成果だと感じました。

授業以外にも、学生たちは特別プログラムとして、村人対象の農業トレーニングを行うフィールドワーク、社会起業のコースの学生たちによるスモール・ビジネスの運営、各セメスター終了後1か月間のコミュニティ・サービス、1-2年間のボランティア、月に1度の民族デー(自民族の文化や伝統などについて紹介)が設けられています。こうした学びをとおして、学生たちは他民族についての理解を深め、先住民族が受けてきた不当な差別や現在横たわっている問題を解決するためにどのようにアプローチすればよいかを考え、自分が受けた学びをコミュニティに還元したいと思うようになるそうです。教育を受けて自信をつけた学生たちが堂々としており、目がきらきらしているのが印象的でした。

PAMULAAN_interview.png 私自身も「日本における先住民族」や「日本文学と日本人の精神性」などのテーマでプレゼンをする機会をいただきました。授業のなかで学生たちと意見交換し、学生たちをとりまくコミュニティでは、先住民族への差別・近代化に伴う固有の文化の喪失・土地所有権の収奪・鉱山開発・軍隊の拡大・環境問題・住む家がないこと・教育を受けられないこと・貧困などの諸問題が横たわっていることを知りました。また、学生たちがコミュニティを変革するために、パムラアンで受けた知識を民族のみんなに伝えたいという真摯な思いを持っていることを知りました。

ある日、パムラアンの運営する小学校を訪問しました。あるお父さんに「お子さんをパムラアンの小学校に入れてみてどうでしたか」と訊ねると、「近くに小学校があるのはとてもありがたいことです。ここは山深いところにあるので。子どもだけではなくて、親も委員会をとおしてマネジメントや会計や効率的な農業の仕方について学べるので、私たちも学校があることをとてもありがたく感じています」と答えてくれました。村人たちは持続可能な運営ができるように自主的な活動をしており、各家庭の収入も向上したとのことでした。教育とコミュニティ開発が一体化した事例を見ることができました。

まとめ
これらの活動から得た気づきは、何か事を興そうとする際に必要なことは、明確なビジョンを持つこと・プラクティカルに物事を見て行動することであるということです。また、学校という1つの中核的な活動の場を通して、家族・コミュニティ・地域全体が元気になっていく姿を見ることもできました。

いま私に必要なことは何か-それは、まずビジョンを明確化することです。「どの地域の」「どのような人々に」「どのような」支援を行うかを特定しなければなりません。また、塾長の伊藤道雄先生からよく言われてきたように、考えるよりも実際に行動することの大切さに気づかされました。

アジアNGOリーダー塾での学び
アジアNGOリーダー塾で学ばせていただき、支援する者・される者が信頼関係に基づき対等に話し合うことの大切さ、日本や世界をどうしたいかというデザイナーとしての視点を持つこと、「Asian Citizens」の1人として何をすべきかを考えることができました。半年前の自分と比較すると、ずいぶんと視野が広がったと思います。他の塾生や講師の先生方と開発についてじっくり話し合うことができたこと、また自分の足で途上国を訪れ現地の様子をつぶさに眺め、現地のNGOリーダーやスタッフたちと膝を交えて語る機会を持てたことは、確実に私のなかの種を芽吹かせてくれました。

(ありがとうございました)

【参考】
-アジアNGOリーダー塾とは、日本が深いつながりを持つアジアの中で、国境を超えて社会変革をめざす「21世紀を担うNGO起業家」の発掘・支援を目的に、2009年度に開講た人材育成塾です。
-2009年度からこれまでの8年間実施してきた「アジアNGOリーダー塾」は、2017年度より「アジア社会起業家育成塾」という名称に変更されます。間もなく、2017年度の塾生を募集しますのでどうぞお楽しみに!