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2013年8月30日  

【報告】アジア現地NGOリーダーが来日、貴重な経験を共有 (2013/8/2-7)


8月上旬、ACC21「アジア開発途上国と日本の新しい関係と協働への展望と提言-公益信託ACTと現地NGOsの戦略会議-」事業の一環として、内部会議のほか、公開シンポジウム・セミナー、アジアでの津波の復興支援実践者による日本の被災地訪問などを行いました。
本事業は、アジアと日本の経済的環境が大きく変容し、これまで海外より援助を受けてきたアジア開発途上諸国の市民組織(NGO)が能力を高め社会的役割を増大させつつある状況に鑑み、関係NGOのリーダーを日本に招へいし、日本のNGOその他民間機関からの資金援助・国際協力のあり方を共に検証し、今後の協働関係を構築し行動するための提言をまとめること、そして、アジアのNGOリーダーに日本社会各界のオピニオン・リーダーと交流する機会を提供することにより、セクターを超えたネットワークづくりに寄与することを目的としています。

<海外からの参加者>     ▶プロフィール

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ハイメ・アリストトゥル・アリップ氏(フィリピン) プラティープ・ウンソン
タム秦氏(タイ)
カルナワチー・メニケ氏(スリランカ) アニー・ジョージ氏
(インド)
エストレリア・ペヌニア氏(フィリピン)

※来日予定だったカンボジアのセン・コマ・ヤン氏は、カンボジアで7月末に行われた選挙後の政情が不安定化したため、急きょ来日をキャンセルされました。


<主なプログラム>     プログラム名をクリックすると、該当箇所にジャンプします
I. 内部会議「ACT戦略会議」
II. 公開セミナー、フォーラム、シンポジウム
  1.「アジアのNGOリーダーから見た日本企業のBOPビジネス-期待と提言-」
  2.「復興支援を支える人たちを結ぶ -スマトラ沖地震と東日本大震災-」
  3. 「アジアをつなぐNGOとソーシャルビジネスの役割~ラモン・マグサイサイ賞受賞者が語るアジアの未来~」
III. 現場での経験共有と人材交流
  1.インド洋津波被災地復興実践者による東日本大震災被災地の訪問と交流

I. 内部会議「ACT戦略会議」(8月4、5、7日)

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内部会議は、本事業の目的に沿い、(1)ACT助成事業の経験共有(アジア現地NGOリーダーによる事例発表)、(2)内発的発展と国境を超えた市民の協働とリソース動員:ACTに期待される役割、(3)アジアのNGOsとの新しい協働への展望とACTの役割をテーマに、3日間に分けて会議を行いました。
初日の8月4日は、海外からの参加者5名と、ACT運営委員、ACT事務局の計20名弱がオリエンテーションに参加し、今回の一連のプログラムを確認した後、ACTの過去の助成事業のインパクトおよびACTを含めた海外援助機関に関する評価調査の中間報告を行いました(調査結果は、本事業の提言・報告書に掲載する予定です)。
5日の本会議には、アジア現地NGOリーダー5名、ACT関係者、日本の国際協力NGOや財団関係者など計約40名が参加しました。
午前中にACTから助成を受けた海外と日本の5団体が事業の成果報告を発表した後、午後の分科会では3グループに分かれ、次のテーマで話し合いました。

(a) 内発的発展とは?
(b) 海外ドナーと内発的発展への影響(インパクト)
(c) 国境を超えたパートナーシップの構築とその課題
(d) アジアのNGOs/POsは、内発的発展を推進する活動のための持続可能な資金をどのように確保できるか?
(e) ACTへの提案

その後、終日会議の締めくくりとして、全体会「アジアのNGOsとの新しい協働への展望とACTの役割」では、分科会で話し合われた課題と提案がドラフトとしてまとめられました。この内容をもとに、7日の会議で海外からの参加者5名とACT事務局が話し合い、課題と提案を最終的にまとめました。


II. 公開セミナー、フォーラム、シンポジウム
1.「アジアのNGOリーダーから見た日本企業のBOPビジネス-期待と提言-」(8月6日)

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アリップ氏(フィリピン最大のマイクロファイナンス機関設立者)、プラティープ氏(タイのスラムで教育・福祉に取り組む財団設立者)、ペヌニア氏( アジア10カ国の農民ネットワーク事務局長)の3名を講演者に迎え、日本企業がこれからのアジアにどのように貢献できるかについて考えるセミナーを開催しました。
本セミナーでは、参加した企業関係者など約60名に対し、東南アジア諸国でのマイクロファイナンスと小規模ビジネス開発、貧困家庭の子ども、小農民のための農業・農村開発という異なる分野で支援活動に取り組む3氏の経験と成果を発表しました。さらに、日本企業のBOPビジネスの事例として、味の素(株)CSR部長沖田氏から、同社がガーナで取り組んでいる子どもの栄養改善プロジェクトの事例を紹介していただきました。
その後行われた会場との意見交換を通じ、講師3名は日本企業のBOPビジネスについて、「現地のニーズをとらえること」「現地の生活に悪影響を及ぼさないよう配慮すること」「現地NGOや地元住民組織と協働すること」「地元資源を活用し、地元住民がオーナーシップをもてるようにすること」を提案しました。
今回のセミナーをきっかけに、日本企業が彼らのような現地NGOと連携し、ビジネスを通して、アジアの国々の貧困問題の解決と豊かで持続的な社会づくりに貢献することを期待しています。
(共催:(公社)日本フィランソロピー協会、協力:味の素(株))


2.「復興支援を支える人たちを結ぶ -スマトラ沖地震と東日本大震災-」(8月6日)

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ACT「大和証券グループ津波復興基金」からの助成を受け、2004年末のスマトラ沖地震・インド洋津波で被災した地域で復興支援活動に取り組むメニケ氏(スリランカ、女性1,300人のマイクロファイナンスと収入向上)とジョージ氏(インド、2万世帯の防災村づくり推進)が、スマトラ沖地震と東日本大震災の、2つの震災の被災地を結ぶフォーラムに登壇し、現場事業の進捗と成果、東日本大震災被災地を訪問した際の感想や学びについて発表しました。
パネル・ディスカッションでは、東日本大震災の被災地で活動する地元NPO関係者とともに、それぞれの活動と成果、課題を共有し、インド洋と日本の共通課題と、参考になる経験これからの災害復興支援について意見を交換しました。ジョージ氏は、被災地が復興し持続発展するためには「(1) (被災)当事者が参画すること、(2) 地域住民に関係する正確な情報を収集・管理し、住民や外部者に伝えること。そして住民の声を外部に届けること、(3) 政府を含めたすべての利害関係者(ステークホルダー)を関与させてコーディネーションをすること、(4) 復興活動は段階ごとに計画するものであり、危機対応は第1歩にすぎない。開発・発展に目線を置き、避難、自立、生活再建など、平常時に何をするかを念頭に置いた計画でなくてはならない。」と、うったえました。
いわきおてんとSUN企業組合の吉田氏は「お二人(メニケ、ジョージ氏)の話を聞き、どうして私たちはこのようなお話を事前に聞いておかなかったのだろう、と思った。ジョージの『地元にいる当事者だけが、長期的にその問題に関わることができる』という言葉を聞いて、地域の利害関係者(ステークホルダー)と情報を共有し、長期的に協働することが大事と痛感した」と述べられました。男女共同参画での復興という点で、メニケ氏は「男性も女性もそれぞれに重要な役割がある。開発の持続性を考えると男性・女性が協力して復興事業に関わることが必要。私たちの事業では男女が平等に参画しているし、次世代はそれが当たり前になるだろう。」と自身の体験をもとに発言されました。そしてメンタルケアと復興の関係についてジョージ氏は、「生計を取り戻すことが当事者の精神的安定と自信を取り戻す。長期的雇用も大事だが、まず短期的でも生計手段を確保すべき。がれき撤去、インフラ復興作業などでの現金収入、その日に食べるための収入確保が大事。中期的には1~2年の雇用を確保する。最終的にはもとの生業に戻るのが理想でしょう。」と述べ、インド洋津波での経験を踏まえた発言に、頷かれている方も多くいました。
当日、会場には100人以上の方が訪れ、パネラーの方々のお話を熱心に聞いていました。
(共催:(株)大和証券グループ本社、(特活)女子教育奨励会(JKSK)、(特活)日本NPOセンター)


3. 「アジアをつなぐNGOとソーシャルビジネスの役割~ラモン・マグサイサイ賞受賞者が語るアジアの未来~」(8月7日)

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「アジアのノーベル賞」とも称される「ラモン・マグサイサイ賞」を受賞した、アリップ氏とプラティープ氏を講師に迎え、シンポジウムを開催しました。
第1部では、自らもスラム地域に育ち、「なぜ学校がなく、子どもたちは平等に教育を受けられないのか」という疑問を持ったプラティープ氏が、16歳でお姉さんと自宅を利用して学校をつくったのち、「ラモン・マグサイサイ賞」の報奨金を投じて「ドゥアン・プラティープ財団」を設立し、幼稚園運営、奨学金支援、人形劇をしてまわる移動図書館(ACTからの助成で1985-87年実施)、人材育成、「生き直しの学校」(家庭が崩壊した子供の更生施設)、スラム地域開発など包括的なプログラムを実施していることなどを発表しました。
また、アリップ氏からは、団体立ち上げ時に日本のACTから資金援助を受け、27年前に設立したCARDが、現在では約200万人の貧困女性に対し、金融、医療、ビジネス開発、住宅供給など包括的なサービスを提供するフィリピン最大のマイクロファイナンス機関に成長した経緯と活動内容を説明しました。
第2部では、両氏が活動する地域社会、国、アジア地域における、今後のNGOと社会的企業の役割、BOPを通じた貧困層支援を検討している企業との連携などについて、どのような社会デザインを描いているかを伺い、第3部では両氏が「日本市民への期待とメッセージ」として会場に呼びかけました。
学生など大学関係者を中心に100人以上が参加し、会場からは「タイで成人向け識字教育はやっているか」「フィリピンには土地なし農民がなぜ多いのか」「日本での低所得者向け融資は回収率が悪いが、フィリピンではなぜ成功しているのか」「なお貧富の格差が広がる傾向にある要因はどこにあると考えるか」など、さまざまな質問が出され、両氏と会場との間で活発なやり取りがありました。
(共催:立教大学21世紀社会デザイン研究科、立教大学社会デザイン研究所)


III.現場での経験共有と人材交流
1.東日本大震災の被災地訪問(8月2-3日)

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南三陸町の農漁家レストラン「慶明丸」を再建したおかみさん(中央)から、店の看板がアラスカまで流され、現地から返された話を聞くメニケ氏(左)とジョージ氏(右)

2004年末のスマトラ沖地震・インド洋津波で被災した地域で復興支援活動に取り組むメニケ氏(スリランカ)とジョージ氏(インド)は、8月2日、3日に東日本大震災で被災した宮城県の南三陸町と気仙沼市を訪問し、地元のNPO、自治体、学校関係者や仮設住宅で生活される被災者の方などからお話を伺いました。この訪問プログラムでは(特活)ウィメンズアイ(WE)にご協力をいただき、代表理事の石本さんのご案内で南三陸町と気仙沼市を訪問しました。
南三陸町志津川地区まちづくり協議会で公園部会副部会長を務める傍ら、町民有志が集う「かもめの虹色会議」を主催されている工藤氏(上山八幡宮の禰宜(ねぎ))から、被災当時の話からまちづくり計画への住民参加についてお話を聞きました。続いて、平成の森仮設住宅を訪問し、住民の方にお話を聞いた後、仮設カフェ「アズマーレ」で、住民から話を聞く支援員の方々と懇談しました。志津川中学校では、防災教育に力を入れている先生から、地域住民の協力を得て、総合的なシミュレーションを1日がかりで行う訓練とその重要性について教えていただきました。1日目の最後は、手編みブランド「moco made」の店舗を志津川で運営されている矢野さん、小さなお子さんをもつお母さんがたのグループをたちあげた女性、海産物のネット販売などの事業に取り組む男性などのお話しをうかがいました。
2日目は、現在も地元で活動する国際協力NGO、地元の若者でたちあげた団体の方々にお話を聞きました。(公社)シャンティ国際ボランティア会(SVA)気仙沼事務所では、被災直後の緊急救援、避難所での活動などについてのほか、NPO/NGO連絡会など被災地でのネットワーキングについてうかがいました。(特活)ピースウィンズ・ジャパンでは、南三陸町で地元産業や環境など幅広い分野で住民の方々が先生になって子どもたちが参加する「ふるさと学習会」の活動についてお話を聞きました。(一社)南三陸町復興推進ネットワークでは、代表理事の及川さんから、若手を中心にたちあげられた団体のビジョンと活動についてお話しいただいたほか、地域住民の方々の意志を最大限反映するまちづくり計画と実行について、スリランカ、インドの2人とそれぞれの経験談を熱心に話し合っていました。また訪問の間、食事したレストランや宿泊した地元民宿では、再建を決意した理由や苦労話などを聞き、2人は熱心に耳を傾けていました。


この東北訪問の他、ACT関係者(寄付者、受託者、運営員会)への成果報告、在日フィリピン人とのセミナー(アリップ氏)、東日本大震災被災地の実践団体関係者との会合(ジョージ氏、アニー氏)など、様々なプログラムを行い、貴重な経験をたくさんの方に共有していただきました。

(本事業を実施するにあたり、 (公財)トヨタ財団、(一財)MRAハウス、(公財)庭野平和財団から助成金を受け、そしてACTの広報費とACC21の自主財源を充てました。ACC21理事会より、三財団に謝意を表します。)