ニュース
2017年11月20日  

「アジア社会起業家育成塾」2017年度フィリピン現場訪問
報告会を開催しました!



20171111_asec_tour_report_1.JPG

2017年11月11日、アジア社会起業家育成塾2017年度フィリピン訪問(9月上旬)の活動報告会を開催し、計18名が参加しました。このフィリピン訪問で、塾生は何を見てきて、何を感じたのか、そして今後どのような活動をしていきたいのかについて盛んに議論が行われました。


当日のプログラムはこちら


※今回のフィリピン現場訪問の報告は、後日報告書としてまとめ、当HP上に掲載します。


開会あいさつとして、伊藤運営委員代表が、本塾を始めた経緯、名称を「アジアNGOリーダー塾」から本年度に「アジア社会起業家育成塾」に変更した経緯について話しました。日本が戦後の経済成長とともに、日本の政府開発援助(ODA)が増大していった80年代は、日本は世界の注目を集めていましたが、自分自身が歩いたアジアの現場では、ダム開発や大規模漁港の開発援助の裏では、先住民族など草の根の人々が住んでいた土地から追い出されたり、小漁民に魚が獲れなくなるような事態が起き、また、日本で公害を出していた企業の進出の結果、投資先で環境汚染をもたらしていて、日本への不信感を耳にしました。政府が第1トラック、企業が第2トラックであるとすれば、非営利の民間セクターが、第3のトラックとしてアジアの民衆の立場に立って、交流・協力し、彼らの自立自助に協力することによって、日本の人々や社会への信頼を勝ち取りたいと考えるようになっていました。そして、こうした活動を引継ぎ、役割を担う若者の育成を図りたいと考えました。これが、本塾をたちあげたきっかけであると説明しました。また、名称を変更する際には運営委員の間でも議論がありましたが、NGOを起点として、社会の課題に挑戦するビジネスの良さを取り入れたソーシャル・ビジネスを担う人材も併せて育てていこうという考えで名称を変更したという経緯が語られました。


●塾生からの報告概要


「フィリピンの経済格差におけるソーシャル・ ビジネスの役割」(荒川塾生)
「貧困層と共に生み出すソーシャル・ビジネスのNGO的側面」(大野塾生)
「教育というビジネス~機会を活かせる力を~」(早川塾生)


「フィリピンの経済格差におけるソーシャル・ビジネスの役割」(荒川塾生)

 入塾のきっかけは①自分は世の中の役に立っているのか?②幸せとはなにか?③途上国の現実とは?などの疑問を生活の中で感じたことでした。フィリピン訪問では15団体ほどを訪問し、とても勉強になりました。


20171111_asec_tour_report_2.JPG

 訪問したなかでも、元ストリート・チャイルドのジュード君が立ち上げた「SKTAP」、フィリピン最大のマイクロファイナンス機関の「CARD MRI」、日本人女性が元ストリート・チルドレンの子どもたちを雇用し立ち上げた自然食レストラン「ユニカセ」、ダンスや音楽等の芸術分野で子どもたちの心のケアを行う「KMAL Foundation」の4団体が特に印象的でした。これらの団体への訪問を通して、貧困の負のスパイラルを断ち切るには、教育や家族計画が重要であること、ソーシャル・ビジネスとして、貧困層の人々に寄り添いながら行う支援の形があるなど、勉強になることがたくさんありました。


 このように、様々な支援の形があることは分かりましたが、自分には何ができるのか、と自問し、営業力、物流コントロール、生産品質管理、商品開発力など私が持つ強みを生かせないかと考えました。今回訪問したCARDの顧客である、貝殻細工の工場経営者との出会いで、ソーシャル・ビジネスを考える上でのヒントを得ることができました。原材料コストがかからず、専門性も高くない、さらに環境への負荷も少ないというビジネスのあり方は魅力的です。この会社は現在では日本企業から年間35万ドル規模で受注しているそうです。途上国からの搾取ではなく、貝殻のように従来金銭的に価値が低いとされていたものに付加価値を与え、そこから得られた利益を内部留保するのではなく、従業員の給与へ反映させたり、労働環境の向上に活かすなど、より社会に還元できるようなビジネスを行っていきたいと考えました。


 今後の自分の課題は、英語力の向上、そして仕事を通して得たスキルを活かしつつ開発学等も勉強していきたいと思っています。今後の目標は、「人を幸せにする商材を生み出す」ことです。




「貧困層と共に生み出すソーシャル・ビジネスのNGO的側面」(大野塾生)

 2014年に大学のプログラムを通してフィリピンを訪れて以来、フィリピンのNGOやソーシャル・ビジネスについて興味を持つようになりました。昨年1年間、フィリピンのNGOでインターンをし、ソーシャル・ビジネスをテーマに足を動かして活動をしてきたが、学問的に学んだことが少ないので、今回、アジア社会起業家育成塾に参加しました。


 Mga Likha ni Inay(マガ・リクハ・ニ・イナイ:「お母さんが作ったもの」という意)は、バッグやアクセサリー、キノコのチップスなど、CARD(上述)のメンバーである(貧困層の)女性たちが製造しているものを販売しています。ここを訪れて感じたのは、「いい商品」を生み出す可能性と、市場開拓の難しさでした。私はここで購入したバッグを使っているのですが、チャックが引っかかってしまうなど、消費者の目線では気になるところがあります。このように、製品の品質やパッケージの問題は残るものの、それを改善できれば、販路を拡大する可能性は大いにあるのではないかと思いました。CARDの役割は、製品のプロデュースやマーケティング、販路開拓であり、その立場は「サポーター」や「アドバイザー」であり、あくまで主役は製造者のお母さんたちであり、それを下から支えるCARDの姿勢は素晴らしいと思いました。


 Bahay Tuluyan(バハイ・トゥルヤン)は、ゲストハウスや孤児院の運営をしており、そこでは元ストリート・チルドレンの子どもたちが働いており、彼らの職業訓練の場ともなっています。施設は清潔に保たれており、彼らからのサービスも十分といえるほどでした。この「ゲストハウス」というソーシャル・ビジネスは、NGO活動の延長線上にあるということに気づき、ソーシャル・ビジネスとNGO活動を分断させて考える必要はないのではないか、と感じました。


20171111_asec_tour_report_3.JPG

 私は今まで、NGOはチャリティやボランティアとして利益を出さず、泥臭くやっていくというイメージでした。日本では、NPOは営利活動をしてはいけない、高給取りになってはいけないと考える人が多いようですが、営利活動してもよいのではないかと考えるようになりました(*)。NGOとソーシャル・ビジネスの合体という可能性を探していきたいと思います。



* 事務局補足:特定非営利活動法人(NPO)では、法人税法上の「収益事業」は実施可能で、「特定非営利活動に係る事業」ではない「その他の事業」も定款に記載していれば実施できる。


伊藤運営委員

 NGO活動から発展し、活動実績を積み、ステップアップしながらソーシャル・ビジネスの方向にもっていくことはありえる。今回訪問したひとつで、今や巨大な組織となったCARD MRIがそうだし、成功している他の団体でもそうした発展の経緯を辿っているのがある。最初から株式投資や融資を受けて始めるというのは難しいだろう。そしてNGO向きの人と、ビジネス向きの人がおり、求められている性格と能力が違う。自分の能力、性格は何か、ということを見極め、必要に応じ自分にない能力を持つ人をパートナーにしてステップアップしていかないと、結果は出せない。大切なのは、しっかりした問題意識を持ち、誠意を持って周りに働きかけ、人間関係を創っていくこと。まだ若いから失敗をおそれずに突き進んでほしい。



「教育というビジネス~機会を活かせる力を~」(早川塾生)

 私は小学校低学年の頃にテレビを通して貧困という問題を知り、興味を持ち続けてきました。当時は命を救うことができる現地の人材を多く輩出したいと考え、教育に関わり始めました。今回のフィリピン訪問では、「教育」というテーマを持って、NGO活動やソーシャル・ビジネスの可能性を探しました。


 SKTAP(上述)でボランティアをしている高校生や大学生に、彼らが貧困という問題をどう考えるのか、という点を尋ねたところ、「衣食住とともに、コミュニティの存在が欠かせない」という返事がかえってきました。路上で生活する人たちには、そこでのコミュニティがあり、彼らが真に欲しているものは何なのか、という疑問が生まれました。それと同時に、勉強等で忙しいながらも、ボランティア活動に励む学生の姿が印象的でした。


20171111_asec_tour_report_4.JPG

 Childhope Asia Philippines(チャイルドホープ)では、職業訓練を受け、仕事を得て路上生活から抜け出すことの できた4人の若者に話を聞きました。家庭の貧困で学校をドロップアウトし、路上生活することは、単に教育の機会を失うだけでなく、早婚などの問題にもつながり、生まれた子供にも引き継がれる 貧困のスパイラルを生み出してしまいます。国による教育への投資は、成果が出るまでに時間がかかるため後回しにされがちですが、今回の4人のようにミクロに見ていくと、教育の仕方によっては1~2年で大きく生活に良い変化が見えるということが分かりました。


 「ZERO EXTREME POVERTY PH 2030」は、フィリピンのNGOや財団、フィリピン社会福祉省が連携して行う運動です。その代表を務めるベンジャミン・アバジャノ氏は、自身の団体でも先住民による先住民のための大学プログラムをつくるなどの活動をしていました。この運動を見ても、フィリピンでは市民社会の動きが極めて盛んであることが分かりました。


 現在、フィリピンは教育制度が移行時期にあるため、今後学校教育の状況がどうなるかを見極める必要がありますが、私はインフォーマル教育の分野で活動を行いたいと考えています。いわゆる塾のような形で、比較的富裕な層には有料の授業を提供し、貧困層の子どもたちに関しては、無償で授業を提供する。日本の塾で教員を目指す大学生がアルバイトをするように、教員志望者にとっては、無償授業に携わることにより教育する側としての経験を得られるのではないかと考えます。しかしこのアイデアを具体化するには、現地の学生の状況、教育への価値観について分析する必要があり、もっと勉強していきたいです。貧困層出身の教育者を養成することが最終的な目標です。


一般参加者(NGO関係者)

 「教育」と「生活」は違う。大学に進学する人を輩出することの価値は認識しているが、教育を受けたその後の生活についても追及しなくてはいけないと思う。フィリピンの教育制度は従来の10年から12年制に変わり、自分たちが活動していた地域では、30年前は公立校が1校しかなかったが、現在では小学校が25校まで増え、先生が足りず、教室も足りない問題が全国各地で起きている。これらは少数民族が多い地域でもあり、優遇措置があるので行きやすくなった。政府も教育に力を入れようとしている。ある現地NGOでは、教育を継続するには親の力が大きいので、親の教育をしている。



以上の発表と意見交換を経て、廣野運営委員からは本報告会を総括し、それぞれの塾生がフィリピンの現場から自身のテーマや問題意識と照らし合わせながら学んだこと、そして伊藤運営委員が話したように、本塾は「NGO」に軸を置いた社会起業家の育成塾であり、そのような人材に育ってほしいと述べ、閉会しました。