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ACT30周年記念シンポジウム 実施報告


11月第一週にアジア3カ国(フィリピン、インド、カンボジア)から現地NGOリーダーを迎え、公益信託アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)では、「ACT30周年記念シンポジウム」をはじめ、関係機関・団体との共催で各種セミナーを開催し、多くの皆様にご参加いただきました。
詳細については、ACTのニュースレター「ACT NOW」などでご報告しますが、シンポジウム当日の実施内容についてご報告します。

11月2日(火)
ACT30周年記念シンポジウム
「アジアの共生社会を"紡ぐ"ACT~アジアの未来、コミュニティ型公益信託の役割~」


天候に恵まれたこの日は、平日の午後にも関わらず、一般参加者として70余名の皆様が参加されました。
プログラムの第1部「共生するアジアの社会づくりのこれまで」として、フィリピン、インド、カンボジアの現地NGOリーダーが、地域の現状と課題そしてその改善と解決に向けて、ACTの支援を受けて取り組んだ事業を中心に、活動報告を行いました。


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フィリピンからの報告
「120万人の女性が参加‐マイクロファイナンスと零細規模ビジネス開発支援を通じた女性のエンパワメントと貧困削減」
「CARD MRI」創設者・マネジング・ディレクター ハイメ・アリストトゥル(アリス)・アリップ


   フィリピン最大のマイクロファイナンス機関で、2008年ラモン・マグサイサイ賞受賞団体の「CARD MRI」は、1986年、当時29歳のアリス・アリップ氏によってNGO「Center for Agriculture and Development (CARD)」として立ち上げられました。わずか20ペソ(現在の換算額で約37円)と古いタイプライター1台だけで、土地なし農民女性への支援活動を始めました。
actsympo.1.jpg    同氏は、CARD設立当初は、彼の挑戦を支援しようという助成機関がなかなか現れず苦労したこと、しかしその後88年にACTが初めての助成を行ったのをきっかけに、国内外の援助機関の信用を得ることができ、多くの支援を受けたことで規模を着実に拡大させ、24年後の現在では140万人の貧困女性に対して、さまざまな金融サービスを提供する同国最大規模のマイクロファイナンス機関に成長するまでの、経緯とエピソードを披露しました。また、CARDのマイクロファイナンス手法の概要、成功事例も紹介され、2005年以降はアジア5カ国においてCARDの手法・経験を共有するための海外事務所開設や現地機関との連携を通じ、アジアの貧困削減に貢献するための取り組みなど、同氏の熱意あるプレゼンテーションは多くの観衆を惹きつけました。



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インドからの報告
「持続可能な農業の実現に向けて自然農業に取り組むアジアの農民たち」
「南アジア農村復興連合」(SARRA) エクゼクティブ・ディレクター  ロヒニ・レディー


   レディー女史は、インドの伝統衣装サリーで登壇され、インドは急速な経済発展の一方で、気候変動による干ばつの被害や、1960年代に流入した「緑の革命」によって交配種(ハイブリッド)が普及したことで伝統的な在来種が減少し、農薬や化学肥料、機械化などの投入コストが増加したことで、数世代にわたる貧困状態から脱却できないインドの農業セクターの現状を分かりやすく説明されました。
actsympo.2.jpg    そしてSARRAが2005年から取り組んでいる自然農業の特徴と取り組みについて紹介しました。持続可能な環境づくりや健康維持の観点でも、地域の資材を使って土着微生物を活性化する自然農業は、「革新的、シンプル、経済的、実践可能、複製可能、その土地に合わせ応用可能」であるとし、被差別カーストなど貧困に苦しむ農民が実践可能で、より多くの収量と健康をもたらす自然農業の実践・普及の必要性を訴えました。


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カンボジアからの報告
「コミュニティ・ベースの就学前教育を通じた貧困家庭児童の権利保護」
「ケマラ」(KHEMARA) エグゼクティブ・ディレクター コイ・パラニー


   カンボジア初の現地NGOである「ケマラ」(KHEMARA)のコイ女史は、7~14歳の子どもの約半数が経済活動に従事していること(2001年)、小学校1年生登録者(2006-07年)の約半数だけが6年生まで進級できると予想されており、中退がいかに多いか、そして、就学前教育が進んでいない同国では、3~5歳児の15%しか幼稚園に通っておらず(2007年)、その多くは裕福な家庭の子どもであることなどの現状を説明しました。
Khemara.jpg    こうしたなかで、農村地域から首都プノンペンに移住してきた多くの家庭では、両親が縫製工場や日雇いの建設労働など、収入が不安定で子どもたちを家の中に置き去りにして働かざるを得ず、子どもたちは家事や幼い姉妹の面倒などで学校に通えず、 虐待や人身売買の危険にさらされている状況を改善するため、ケマラがACTの支援で行っている保育所事業での取り組みと成果について報告しました。就学前教育と健康管理を通じ、また各家庭と保育所間のコミュニケーションを密にすることで、家庭環境や保護者の意識の改善にもケマラの活動が貢献していることを発表されました。




第2部パネル・ディスカッションとして、「共生するアジアの社会を"紡ぐ"コミュニティ型公益信託:課題と今後の展望」が話し合われました。


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パネリスト:太田達男(ACT信託管理人)
河口真理子(大和証券グループ本社 広報部CSR担当部長)
神田外語大学CUP(Create Universal Peace)*代表
*神田外語大学学生による"地域活性化と社会貢献"を目的とするボランティア団体
鈴木真里(ACT事務局)ほか
モデレーター:伊藤道雄(ACT事務局長)
コメンテーター:アジア現地NGOリーダー3名


   太田氏は、日本初のコミュニティ型公益信託であるACTの設立経緯を説明され、ACTは米国の募金型地域貢献基金(Community Trust (Foundation))に範をとったこと、ACTの仕組みや公益信託の事例を踏まえ、その利点や魅力が発表されました。河口氏からは、「大和証券グループ津波復興基金」を通じた過去5年間のACTとの連携事業を通して感じられた公益信託による援助の意義などについて、お話をうかがいました。
   続いて、神田外語大学の学生グループ「CUP」の代表者からの発表では、大学がある幕張の地域住民・企業と学生が交流・協力して、毎年開催しているチャリティ・フリーマーケットでは、モノ、お金、時間の3つの「寄付」で成り立っていることや、関わる人々の思いについて説明されました。こうした努力によって、ACTへの寄付が行われ、現地事業に生かされていることを知った海外のNGOリーダーたちも、学生たちの実行力に感銘していました。
actsympo.3.jpg   ACT事務局の鈴木からは、寄付者(各基金)と現場からのニーズとの橋渡しとしての受託者、事務局の役割、より助成プログラムを絞った形態の特別基金の事例紹介とその長所、事務局による情報収集やモニタリング方法などについて紹介しました。
   パネル・ディスカッションでは、コミュニティ型公益信託であるACTの長所が、まだ日本では一般的に知られていないなど、今後の課題も浮き彫りになりました。最後に、コメンテーターとしてアリップ氏からは、ACTの基金を日本だけでなく、アジア各国から募る壮大なプランが提案され、コミュニティ型公益信託の将来性の高さを実感できるシンポジウムとなりました。