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2018年11月15日  

【開催報告】公益信託アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)助成事業報告会
アジアの民衆とどうつながるか
8月15日に向けて考える
ACT「アジア民衆パートナーシップ支援基金」助成事業の現場から



日時: 2018年8月19日(日)14:00~17:00
場所: 「アジア文化会館」本館2F「129教室」
主催: (特活)アジア・コミュニティ・センター21
協力: 公益信託アジア・コミュニティ・トラスト


    2018年8月19日(日)、公益信託アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)の「アジア民衆パートナーシップ支援基金」の助成事業報告会を開催し、約30名にご参加いただきました。
    ACT「アジア民衆パートナーシップ支援基金」(Asian People's Partnership Support Fund)は、アジア、とくに第二次世界大戦中に多大な被害を与えた東アジアおよび東南アジアの民衆と日本の人々が交流し、経験・知見の共有を通して共に成長・発展しようとする活動を支援することを目的に2009 年8 月に設定された特別基金です。個人2名により2,000万円で設定され、その後、のべ35人から計580万円のご寄付をいただいています。
    本基金では2017年度までの9年間で、アジア16カ国(*)と日本の相互交流・協力活動を行う15事業に1,850万円を支援しました。
    2018年8月で戦後73年となった今、過去で得た教訓や経験を忘れることなく、そして日本とアジアの人々の間に、より深い信頼関係を構築し、平和で公正なアジアを実現するために、今私たちには何が必要かを考えたい、という思いでこの報告会を企画しました。小農民、労働者、社会的に差別を受けている、あるいは諸権利を享受できない人々とともに経験や教訓を共有し、よりよい未来づくりに向けて活動している次の5団体から、これまでの成果について報告していただきました。

* アジア16カ国(中国、韓国、モンゴル、タイ、カンボジア、ミャンマー、ラオス、ベトナム、フィリピン、インドネシア、 マレーシア、東ティモール、インド、スリランカ、ネパール、バングラデシュ)と日本

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  冒頭、ACT事務局長で(特活)アジア・コミュニティ・センター21(ACC21)代表理事があいさつし、基金設定者の想いである、先の戦争被害国であった農民や労働者等の民衆に焦点を当て、地縁技術を通した交流や協力、平和に向けた民衆どうしの平和に向けた交流や協力を支援するという意味で、基金名に「民衆」を冠して、本基金が設立されたという経緯をご紹介しました。



活動報告

(1) (特活)Asia Commons亜洲市民之道「日中市民交流対話プロジェクト」(助成期間:2010~14年度)報告者:麻生水緒氏(理事長)、麻生晴一郎 氏(副理事長)
(2) (特活)アントレプレナーシップ開発センター「日本とインドネシアの若手ソーシャルリーダー育成・交流事業'Gerakan Mari Berbagi'(共に分かち合おう)プログラム」(2015~16年度)原田紀久子氏(理事長)
(3) (特活)WE21ジャパン「先住民族の『命と暮らしと文化』を守る~フィリピン・ベンゲット州の先住民族の環境と伝統的コミュニティをサポートする市民の経験交流活動~」(2010~12年度)藤井あや子氏(前理事長)
(4) 外国人支援ネットワークKAMEIDO「『自分を守るためにあなたができること』広報配信プロジェクト」(2017~18年度)内田正子氏
(5) フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)「第二次大戦中、日本軍によって性暴力を受けた女性たち(フィリピン元『慰安婦』」の闘いを記録するプロジェクト)」(2010~11年度)竹見智恵子氏


    「日中市民交流対話プロジェクト」では、反差別の定着化、農村図書館づくり、民主化モデル(選挙)、環境問題などさまざま問題に地方で取り組んでいる方々を中国から招聘し、日本国内各地でセミナー、シンポジウムを開催しました。2回目の招聘時には山形県の農家30人に参加していただき、「地域づくり」で日中の共通項があるのではないか、という落としどころに気づき、第4回目以降は自助努力で招聘活動を行うほか、北区の団地で毎週「アジア図書館」を開催しています。日本の農民と中国の農民という視点で話せば「村づくり」という共通価値観で話せること、区民という立場で末端のコミュニティで話すと、「まちづくり」という共通の価値観が見えたという話をしてくださいました。

ACTMinshu02_resized.jpg     「日本とインドネシアの若手ソーシャルリーダー育成・交流事業」は、2012年にインドネシアで始まり、初年度はインドネシアから6名が東京と京都の公共施設や大学、起業支援をしている団体などを訪問し、一般家庭でホームステイをしました。その後、日本の若者をインドネシアに派遣し、ホームステイをしながら現地の学生たちとワークショップを行うほか、現地団体でインターンをするなど、両国が双方向でサポートされたことをお返しする、という仕組みで毎年行われています。日本への渡航費を自分たちで資金調達したインドネシア人学生を見て、日本人学生もクラウドファンディングなどで資金調達の方法やその苦労を体験から学んでいきました。日本人学生はインドネシア人学生に刺激を受け、ゴミ処理問題への取り組みを学校で始める、協力者を集め資金調達を行うなど、社会での実践力がついてきたそうです。一方でインドネシアの学生たちは、どのように付加価値をつけて利益を得るかについて、日本人学生から学んでいます。

    「先住民族の『命と暮らしと文化』を守る」事業の発表は、『「スマートフォン」は、実は"スマート"ではなく、鉱山開発で搾取されていることはご存じでしょうか』という藤井さんの問いかけから始まりました。先住民族の人々が生活の場としていたフィリピンのルソン島ベンゲットの2つの山が鉱山開発による露天掘りで消滅し、跡地がため池になった場所を中心に、土壌改良と植林、日本での学びなどの活動を行いました。第3フェーズ(2017年)では、現地調査をしながらサポートを考え、足尾銅山跡地での研修を活かしルボ村のため池の周辺に森林をつくり環境修復をはかる具体的なアクションにつなげる活動を行いました。「堆肥ができた」「日陰ができた」「環境がよくなった」など現地で高く評価され、「足尾スペース」という名で実証実験を行い植林を続けた結果、木が成長し緑が増え、環境が変化していることを住民が実感し、参加者が2倍近くに増えたそうです。日本の市民との連携でフィリピンでは行政を動かせたこと、ベンゲットの状況を知ることで、足尾、日立銅山などの経験から日本の市民は逆に学びを得たこと、そして現地の住民が仲間を広げてコミュニティを再建する姿を見て、日本の貧困問題でも協働する姿勢の大切さを学んでいるということでした。藤井さんは『豊かで便利になったその背景を知る、その原材料や流通に問題があることを知ること、そして分かち合う価値は大切だと思います。身近な平和づくりにも資金作りは必要です。』と締めくりました。

    「『自分を守るためにあなたができること』広報配信プロジェクト」は、東京労働安全衛生センターと下町ユニオン、カトリック東京国際センター(CTIC)の3団体が連携している「外国人支援ネットワークKAMEIDO」が実施しています。同ネットワークは在日外国人の労働と生活の両面での相談に応じる月2回の相談会活動を継続して行っています。
わからないことがあれば検索して相談窓口に行くことや、日本の法制度を理解することが難しい外国人労働者には、残業未払い、暴言暴力、強制送還など、増加している技能実習生問題も含めて強制帰国や不当解雇なども起きています。2017年3月の法務省によるデータ(16年12月時点での労働者数)によると在日外国人は238万人で、その約1割にあたる22万人が技能実習生です。近年はフィリピン、ベトナム、ブラジル、ネパールの出身者、とくに留学生と技能実習生が増えているということです。

ACTMinshu03_resized.jpg     そこで同事業では、相談会や労働基準監督署に相談する前までに、自分自身がどのような形態で働き、トラブルに直面しているかを説明できるようにするために役に立つ情報を広報配信しています。自分の働き方、自分の身に起きたことの記録とその重要性について注意喚起し、自分で注意するポイントや行動について記載したリーフレットを2017年度は英語、ベトナム語、ミャンマー語で発行しました(写真参照)。このほか、3言語でのミニ動画を作成し、YouTubeにアップして無料で視聴できるようにし、18年5月時点で再生回数は計5,300回を超えました。2018年度は翻訳対象を拡大して行う予定です。


    ロラネットによる発表では、当時最年少で10歳の少女が性暴力を受けたロラ(フィリピンの元「慰安婦」)たちが80歳代になり、亡くなる方が増えるなかで、映像に残す取り組みが始まった経緯が語られました。レイテやルソン島などを訪問して当事者に取材した際にロラたちに描いてもらった当時の様子の絵のタッチに心を揺さぶられたという竹見さん。問題が表面化して約20年が経過し、日本の大学生でもこの問題を知らない人が多くなっていました。東ティモールやアフガンなどの紛争地の出身学生が多く学んでいるコスタリカの国連平和大学で発表した際には、「どうしたら平和な状態をつくれるのか」「自分たちの世代では何を学ぶべきか」と積極的な反応があったそうです。『過去だけでなく、今もこういう問題が起きています。政治問題ではなく、人権問題としてしっかり取り組まないといけません。私たちが「歴史の子」であるというよりも、私たちが「歴史を作っている」のだから、ほかの人たちがつくる流れにまかせていてはいけません。』というメッセージが印象的でした。


以上