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アジアNGOリーダー塾
アジアのNGOでのインターンシップ報告



2016年4月3日(日)、アジアNGOリーダー塾では、「アジアのNGOでのインターンシップ報告会」を開催しました。当日は、4名の塾生が発表しましたが、赤木塾生の発表内容をここに掲載いたします。

「体育教育の普及、子どもたちの成長のために~NGOであるから出来ることと難しいこと」
発表者:赤木 亮太 (東洋大学2年生(当時))


anlp_ryota2015_TT-2.JPG インターンシップ先:Tiny Toones Organization(タイニー・トゥーンズ)
期 間:2016/2/9-2016/3/20
国・地域:カンボジア、プノンペン市

自己紹介
僕は、途上国での体育教育の普及に関心があり、国際協力の幅広い知識を身に付けたい、将来の夢に繋がるよう、現地での経験がしたいと思い、入塾しました。そして、ダンスやスポーツが子どもたちにどのような影響があるかを探りたいと思い、「Tiny Toones」をインターンシップ先に選びました。

「タイニー・トゥーンズ」について
創設者のトゥイ・ソビル氏は、タイのカンボジア難民キャンプで生まれ、その後アメリカのロサンゼルスに移住。アメリカではギャングに加わり、薬物使用や強盗などの罪を犯し、2004年、カンボジアに強制送還され、初めて母国に足を踏み入れたそうです。ダンスをしていたら子どもたちが近寄ってきて、子どもと触れ合っている中で、「ダンスを教えて」と言われたことが始まり。そして、段々と英語や数学も教えてほしいと言われ、どんどんと大きくなり、今のような団体となったそうです。

ANLP_ryota_class.jpg活動内容は、5~24歳を対象とした教育支援。アート、クメール語の数学とダンスと英語、コンピューターのタイピング練習、英語での数学、クメール語、スポーツ・ゲームという日本で言う体育、音楽などの授業を行っています。子どもの年齢にあわせクラスが分かれており、ローテーションを組んで授業が行われています。公立学校に通っている子どももいますが、通っていない子どももいます。

特徴は、ダンス、アート、スポーツなど情操教育に力を入れている点です。カンボジアの公立の学校はあまり情操教育に力が入っておらず、体育、図工、音楽の授業がないそうです。

Tiny Tonnesにはダンス用に鏡張りの大きな教室があり、そこでブレイクダンスの練習をしています。先生たちはプロのダンスチームに所属しているので、習う子どもたちのダンスのレベルはかなり高いものでした。

インターンシップで行った活動

1)アンケート調査
アンケート調査は対象別に行いました。
対象1)Tiny Toonesに通う子どもたち計30人
対象2)Tiny Toonesに働くスタッフ(教師6人と代表とジェネラルマネージャーの)計8人

子どもを対象としたアンケートでは、「ダンス」が子どもたちがTiny Toonesに通うモーチベーションとなっていると分かりました。ダンスをして楽しむことが英語や数学などの学習に繋がっていると感じました。独自の授業スタイルが子どもたちの夢を広げていると感じました。

スタッフへのアンケートから見えたことは、教師の給料が100ドル〜200ドルと低いことです。朝から夕方まで子どもたちに教えているので兼業はできません。また、Tiny Toonesにはダンスのプロがおり、子どもはダンスを楽しみに参加していて、スタッフはTiny Toonesの強みは「ダンス」と捉えていることも分かりました。

立ち上がりゲーム.png 2)「スポーツ・ゲーム」の授業
僕は、大学で健康スポーツ学科に所属しており、体育の授業を担当させてもらえることになりました。コンクリートの狭いスペースでバスケットボールコートがひとつあり、そこで皆が遊んでいましたが、「体育」としては、普段はサッカーやバスケットしかしていないとのことでした。教えている先生は全員、体育の授業を学生時代に経験していませんでした。そこで、僕は、遊びやスポーツの選択肢を増やすことを目標にしようと考えました。ドッチボールなど、みなで協力して行うスポーツや遊びを取り入れることで、違う形で協調性を身に着けることができると思い、授業を組み立てました。

授業例)
(1)手を繋いで皆で立ち上がれるかを試してみるゲーム(右側の写真)
(2)間隔に靴を置き、ひとりずつジグザグに走る、または、チームごと手を繋いで走る速さを競うゲーム
(3)お友だちをおんぶして走るゲーム
(4)3人並んで真ん中の人を両側から押し、バランスが保てるかを体験するゲーム

このような遊びを通じて、子ども達と一緒に楽しみながら授業を作っていきました。

ドッチボールは、子どもも先生にもとても人気で、ほぼ毎日、やっていました。ボールを前に投げるという経験が子どもたちはなかったようで、新鮮な経験だったようです。 ドッジボール.png

3)先生に向けた体育教育のワークショップの開催
先生たちは体育教育の重要性をあまり理解していないと感じ、僕が日本に帰っても、体育教育の質を保てるようにと考え、ワークショップを4回、実施しました。最後にワークショップの内容を紙にまとめ、先生たちに配り、誰でも手にすることができるように場所に1部、置いてきました。

僕はまだ大学2年生で体育教育のプロではないですし、ワークショップでは先生たちとの対話を大切にしました。Tiny Toones にとって体育の授業はどのようなものがよいかを先生たちと一緒に考えるように努めました。

ワークショップのテーマは次の通りです。
第1回:「スポーツ・ゲーム」から何が学べるのか。何を学んで欲しいか。
第2回:ダンスと比べて「スポーツ・ゲーム」の授業では何が学べるのか。
第3回:どんな種目がTiny Toonesではできるか。子どもたちを惹きつけるための指導法
第4回:子どもたちにとって学び多い授業になるための指導法(チームワーク、規律、責任感)


第4回の「チームワーク、規律、責任感」は、第1回のワークショップで「子どもたちに学んだほしいこと」について考えたとき、先生から挙がった内容でした。「チームワーク、規律、責任感」が身に付く授業内容について、互いの考えを分かち合いました。

4)代表とディレクターに向けた提言
40日間をTiny Toones で過ごし、最後に代表、ディレクターに向けて自分の考えを提言という形でまとめました。

提言1:先生の教育に力を入れる
子どもの学習度を上げるためには、先生の教授法などの質を上げることも必要です。具体的には、先生たち同士で勉強会を開く、先生の研修を実施することなどです。また、沢山のボランティアがきており、ボランティアから積極的に学ぶ機会があると良いのではないかと提案しました。

提言2:先生のモチベーションアップ
例えば、モチベーションアップのために代表と個人面談をする、パーティー開催、旅行などといった先生にとっての楽しみを設けるなど、提案しました。

Tiny Toonesから学んだこと
まず、Tiny Toonesの授業はとてもユニークで、生徒を第一に考えたアプローチだと感じました。先生たちは、「課外活動をやろう」とか「歴史を学ぶ遠足をしよう」などと、授業を面白いものにしようと努力していました。また、授業が終わって30分間フリータイムがありますが、その間、補習を行ったり、困っている子どもがいたら、先生たちが相談にのったりしていました。子ども一人ひとりと向き合うことができていて、NGOだからこそできることだと感じました。

次に、「人を巻き込む力」です。滞在期間の40日間で、6カ国からボランティアや訪問者が来て、とても驚きました。訪問やボランティアの依頼はほとんど受け入れていると聞きました。色々な人に出会うことにで、子どもは文化やコミュニケーションを学ぶ機会を得ていると感じました。

そして、Tiny Toonesの資金源は寄付が大半を占めるそうですが、今年の4月から、先生のプロとしてのスキルを活かして、ダンススクール、ミュージックスクール、ヨガスクール、レストランを経営する計画があると聞き、驚きました。富裕層向けにスクール事業を行うことで持続可能な資金調達ができるよう、考えていました。

Tiny Toonesの素晴らしさはまだあります。ベトナム系の子どもや、障がいを持つ子どもがいますが、差別がない点です。そして、子どもたちは活き活きとしていて、積極的に人に話しかけていました。Tiny Toones が地道に行ってきた活動の成果が子どもたちの笑顔に繋がっていると感じました。

ANLP_ryota_smiles.jpg このインターンシップを通して学んだこと
このインターンを通して、まず、僕はまだ専門性が足りないと感じました。ワークショップを行いましたが、先生の心に響いたか、不安が残りました。まずは専門性を身に着けてから、途上国の団体に体育教育という分野で関わりたいと感じました。

次に、現地の団体に寄り添って理解することとは難しいと実感しました。僕はTiny Toonesに提案を行いましたが、すでにやっている内容であったり、「検討してみる」という返答であったりで、提案が実現されることはないと感じました。「寄り添う力」が必要だと感じました。

そして、僕のイメージしていたNGOとは、世界に対して何か働きかえるというものでしたが、Tiny Toonesは地域に根差した地域密着型のNGOでした。支援の方法として、Tiny Toonesようなやり方もあるし、政府と協働して世界中に働きかけるなど、色々なやり方があることが分かりました。

今後の展望~専門性を身に着け、いつか体育教育の普及のための組織を設立
まず、専門性を身に着けるために勉強を続けたいと思います。スポーツトレーナーなどとしてしばらく働き、経験を積みたいと思います。そして、専門性を活かし、NGOかどうかはまだわかりませんが、体育教育の普及のための組織を設立したいと考えています。政府とも協働し、その国の体育教育指導に携わっていきたいと考えています。

貴重な経験をありがとうございました。

【参考】
-アジアNGOリーダー塾とは、日本が深いつながりを持つアジアの中で、国境を超えて社会変革をめざす「21世紀を担うNGO起業家」の発掘・支援を目的に、2009年度に開講た人材育成塾です。
-2016年度 アジアNGOリーダー塾 塾生追加募集中 ご案内はこちら
-2015年度 赤木さん以外の塾生のインターンシップについて「塾生および派遣団体紹介