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2018年3月2日  

「アジア社会起業家育成塾」(旧「アジアNGOリーダー塾」)新年交流会
開催報告



【主  催】(特活)アジア・コミュニティ・センター21(本塾主催団体)
【開催日時】 2018年1月27日(土)13:30-16:30
【開催場所】 アジア文化会館 本館2F「129」教室


 「アジア社会起業家育成塾」(旧「アジアNGOリーダー塾」)では、2018年1月27日に新年交流会を開催し、現塾生と修了生、運営委員、講師など28名が参加しました。


1.開会あいさつ(伊藤道雄運営委員)

 伊藤運営委員(ACC21代表理事)は、『2009年度に「アジアNGOリーダー塾」としてスタートした本塾は、2017年度に9年目を迎え、「アジア社会起業家育成塾」に名称を変更した。 これまでのNGOリーダー育成の実績を土台にし、ソーシャルビジネスの考えを積極的に取り入れ、海外(フィリピン)訪問においては支援を必要とする地域住民そしてソーシャルビジネスの成功団体を訪問し、直接的な意見交換、さらに社会人も参加しやすいように訪問期間を8日間に短縮した。 一方、国内での講座にはソーシャルビジネスのパイオニアを訪問し、親しく学習する機会を持った。 NGOの行う事業が寄付や政府からの補助金や委託金に依存しがちであるという現状に鑑み、NGOとしての原点(非営利・非政府として独立したセクターの団体であること)を念頭に置きながらビジネス感覚を持ってもらうため、"社会起業家"というキーワードを取り入れた。 過去の修了生たちも一堂に会した今日の交流会では、現塾生と修了生がこの出会いを新しいスタートアップの機会として今後の活動につなげられるよう、最大限にこの時間を活かしてほしい』との考えを述べました。


2.元塾生からの報告と経験共有の時間

 -石本めぐみ氏(2期生:2010年度)/(特活)ウィメンズアイ 代表理事
       『女性のまなざしで地元と日本社会を元気に!~災害ボランティア活動からのはじまり~』
       (http://womenseye.net

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東日本大震災の避難所でのボランティア活動を通じ、女性が直面している問題を強く意識するようになったという石本さん


 本塾で"2度も人生が変わった"という石本さんは、金融機関で役員秘書をしていた時代にCSR(企業の社会的責任)に関心を持ち、当時、仕事をしながら大学院に在学する中でアジアNGOリーダー塾へ参加を決めたそうです。現在は、宮城県の南三陸町を拠点に、東北被災3県で活動する若手の女性を集め、彼女たちの研修とネットワーク化を行う「グラスルーツ・アカデミー東北」を2015年から主宰しています。この活動を始めたきっかけは、2011年3月の東日本大震災発生直後に、伊藤運営委員を含めた塾生5人で被災地に赴き行ったボランティア活動で、被災者の方がつらい夜を幾晩も過ごしていたことが非常に心に残ったことにあるといいます。その後、他の援助団体に参加し被災者と同じ目線で避難所支援を行っていく中で、国内に残る男女の不平等、女性が言わない、言えない環境があることに違和感を覚え、女性に焦点をあてようと考えたそうです。「グラスルーツ・アカデミー東北」では、プログラム終了後にミニ助成を行い、修了生が行う活動をフォローしています。「私なんか...」と言っていた女性が、「みんなの前でつるし上げられたが、それはついに地域の中で自分がリーダーとして認められた証である」と嬉しそうに語ったというエピソードも披露し、女性が持つ能力を地域の活動にどう生かしていくか、女性一人一人が力をつければ東北は変わる、東北から日本を変えられるという強い信念に基づき活動を行っている話をしてくださいました。


 現在は、この活動をつづけながら博士課程で震災後復興期の女性のリーダーシップについて研究を重ねている石本さんは塾生や修了生との連携について『自分の持つスキルをどう提供できるか、今日参加している方とネットワークを広げ、それをどう最大限に生かすことができるかを一緒に考えていきたい』と結びました。


 -柚木理雄氏(5期生:2013年度)/
      『チャレンジで開かれるキャリア~農林水産省、NPO、地域と世界をつなぐ
       「Little Japan」の取組を通じて~』(http://www.littlejapan.jp/"
       〔参考(柚木氏が運営する他のNPO):http://social-artist-village.org


 元農水省職員でNPO芸術家の村理事長、そして(株)Little Japan代表取締役と3つの顔を持つ柚木さんは、移動先の山口県からSkypeでプレゼンをしてくださいました。柚木さんは「地域の資源を生かした海外向けのサービスを創る。そして地域に産業を創る。」をキーワードに活動を行っています。小さいころから海外での生活経験があるなど学生時代は海外志向が強かったそうですが、翻って日本が持つ課題に直面し、東日本大震災を機に地域活動の重要性を認識し、現在の活動をスタートしたそうです。これまでのキャリアを生かし、"ビジネス、ソーシャル、パブリックの3セクターを自由に移動できる、誰もなしえたことのない仕組みを作る"という壮大な構想になっているといいます。従来の人事交流では所属組織のために働くことが前提になってしまっているがそれでは不十分で、3つのセクター間を移動しながら、特定のプロジェクトに腰を据えて取り組む、というもの。具体的には、現在の日本で社会問題化している"空き家問題"と"人口減少"という課題をベースに、これまで得てきた信頼、知識、ノウハウを蓄積し、人とのつながりを活かしながら、5,200万円もの資金を調達し、訪日外国人をターゲットとしたゲストハウス「Little Japan」(都内)を運営しています。この活動にとどまらず、今後は日本各地の地域を訪問しながら、地域イノベーターのネットワークやゲストハウスネットワークを構築し、地域創生のコンサルティングを行っていく予定だという柚木さん。『一度きりの人生、大会社が潰れるこの時代に、チャレンジしないリスクの方が大きいですから、いろんなことにチャレンジし続けます』と、熱い思いを語ってくださいました。


 -有川凛氏(7期生:2015年度)/RINDA Foundation創設者)
      『除菌水"まましゅっしゅ"の開発からインドで財団の立ち上げへ~誰だって世界は変えられる~』
      (http://rinda-f.org/in/birth-story

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"RIN&Darling"というキャラクターをつくり、プロジェクトを次々と立ちあげている有川さん


 有川さんは塾に入る少し前まで、"NGO"という言葉も知らず、途上国については遠い世界の話だと思っていたそうです。自分は特別な存在でも専門家でもない普通の人間だが、地球上の富が1%の富裕層に偏っていること、子ども、大人、老人がバランスよくお互いに支えあう社会ができないかなど、地球上に存在する様々な疑問やモヤモヤを常に見過ごさずに生きてきたといいます。そうした中で、除菌スプレーの「まましゅっしゅ」を開発するなど活動を始め、その後本塾を主宰するACC21代表理事を通じて「アジアNGOリーダー塾」を知り、参加し、自身の誕生日に、インドでRINDA Foundationが設立されるに至った経緯を語ってくださいました。「まましゅっしゅ」でキッズデザイン賞を受賞したことがきっかけでベトナムを訪問した際に貧困を目の当たりにし、お金をもっと回さなければならないところがあると感じるようになった中で、「まましゅっしゅ」がきっかけで出会ったインド人のビジネスマンと想いが合致し、「RINDA Foundation」が生まれました。現在、公式キャラクター〝RIN&Darling゛を取り入れて参加する入口のハードルを下げた上で、子ども、大人、高齢者の3つの"主体"へのアプローチをとっているといいます。子ども向けには、世界中の子どもたちがリレーして紡ぐストーリーからなる絵本を作成するプロジェクトを始動。大人向けには、誰もが幸せな働き方ができる環境構築を目指す認証制度:Equal SHE "S =H×E"(ISO取得)を設けました。そして高齢者向けには、日本語が話せる看護師や介護士をインドで育成する学校設立プロジェクトを始めるといいます。


 活動の根底には、同じ地球に生まれてきた人=「地球市民」であるという思いがあり、それを実現するためには、自分だけでなく周りの人をワクワクさせ、巻き込む工夫をたくさんすること、そして、小さく、無理せず、コツコツやり続けることが大切であると語りました。


3.交流会

 3名の修了生の話を聴いて、会場参加者からは次々と質問や感想が寄せられ、その熱気を保ちながら、交流会に移りました。参加した修了生のなかには「今後の方向性を迷っており、そのヒントがほしいために足を運んだ」という人もいるなど、参加者全員が1時間以上にわたり、旧交を温めながら、活発な意見交換や情報交換を行いました。


 会場では、当日参加できなかった修了生から提供された活動資料が展示され、興味深く目を通す人が多くいました。読み物を中心としたコンテンツで"途上国"の人々と日本人との間に親しみや共感のある関係づくりを目指した活動を始めた第7期生、日本国内の軟骨無形成症の様々な課題の解決に向けて活動するNPOをたちあげた第1期生、宇宙をベースにしたフィリピン小学生への科学教育を行う団体「We're Children of Space(WeCoS)」で活動している第5期生などです。


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生活クラブ生協・神奈川顧問の横田氏から「市民が政治社会を揺さぶることができる世の中を目指してほしい」というメッセージをいただきました


4.閉会あいさつ

 本塾実施に際し助成していただいている(一財)MRAハウスの佐藤理事長よりご挨拶をいただきました。『修了生3人の話を聴きながら、彼らを自分に置き換えて考え、これまでにもチャンスがたくさんあったのではと振り返りました。これからやるべきことがたくさん湧き出てきて、希望を持つことができた新年交流会でした』というお言葉をいただきました。過去に講師としてご指導いただいた、生活クラブ生協・神奈川顧問 横田克巳氏からは、『環境の変化に追いついていけないようなこの時代に、国境を超えてチャレンジし続けることは必要です。今の社会では "市民"がほったらかしになっているが、今日の発表内容には、論理における具体性がちりばめられています。市民が政治社会を揺さぶることができる世の中を目指してほしいです』と激励していただきました。最後に修了生からは、『石本さんからは原点を、柚木さんからはパラレルキャリア(*)を、そして有川さんからは小さく楽しく続けることの大切さを教えてもらった。自分自身も現在、フィリピンのストリートチルドレンを助けるボランティア活動を始めているが、10年後、次は自分が発表者としてこの場に立てることを目指したい』と感想と抱負を語っていただきました。

*仕事を持ちながら、NGO活動を行うなど