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2017年8月28日  

8月19日「アジア社会起業家育成塾」フィリピン訪問事前勉強会



9月上旬に予定しているフィリピン現場訪問の事前勉強会を8月19日に開催しました。


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午前は、「ストリート・チルドレンを考える会」共同代表の野口和恵さんをお招きし、「経済のグローバル化の中で人権を奪われる子どもたち~日本とフィリピンを生きる子どもたちの実態から考える~」というテーマのもと、JFC(ジャパニーズ・フィリピノ・チルドレン)の抱える問題や、その背景についてのお話を伺いました。


JFC(ジャパニーズ・フィリピノ・チルドレン)とは、日本人とフィリピン人の間(主に父親が日本人、母親がフィリピン人)に生まれた子どもたちのことを指し、日本国内、フィリピン国内で10~20万人いると言われていますが、正確な統計はありません。こうした子どもたちの中には、婚外子として生まれ、父親から養育放棄されたり、自分は何人なのかというアイデンティティの確立に困難を抱えたりする子どもも少なくありません。


母親の多くは興業ビザ(踊り、歌など文化的な芸能活動をするという名目のビザ)を受けるため、現地エージェントが主宰する歌や踊りのレッスンを受けた後、ビザを取得して日本に入国しますが、実態はパブで働かされ、給与はフィリピンに帰国するまで支払われないことが多いため、滞日中は生活費を稼がなければならず、店外で客とデートし、チップを受け取った収入で生活を繰り回し、母国の家族に送金しているといいます。子どもが1~2歳の間は父親(日本人)が養育費を支払い、おもちゃを買って贈るなど連絡がとれているため写真も残っていますが、3歳を超えると連絡が途絶えるケースが非常に多いということでした。


現在、JFCの最初の世代は30歳を超えています。日本人の実子であるJFCが日本国籍を取得するためには、20歳までに申請しなければなりません。子どもが未成年であれば母親は「定住者」の在留資格を得ることができますが、近年、こうした人たちをターゲットにした「国境を越えた貧困ビジネス」が増えており、渡航費・手数料名目で借金をさせ(20~150万円)、パスポートを取り上げた挙句、日本に来ると何もせず放置し、契約内容と違う職種で、保険もなく働かされているそうです。日本国籍を取得し、日本で就職して頑張っているJFCも多く、彼らの声や取り組みについても紹介されました。



 つづいて午後は、フィリピンの移民研究や開発研究を専門とする名古屋学院大学教授の佐竹眞明先生より「フィリピン民衆を見る視点―ドゥテルテ政権と私たち―」というテーマで、ドゥテルテ政権の政策やフィリピン経済の構造、民衆のくらしなど幅広くフィリピン社会について話を伺いました。

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ドゥテルテ政権発足以来、しばしばメディアでも取り上げられる麻薬取締強化、いわゆる「麻薬戦争」についてのお話など、外部からでは知ることのできない内部構造を説明していただきました。現地メディアの独自調査によると、2016年5月からの1年間で3,400人が死亡し、うち1,338人がマニラ首都圏に集中。130万人が自首し、8.6万人が逮捕され、800人しか収容できない刑務所に何千人も収容されています。(政府発表では)犯罪率が13%減少したということもあり、78%という高い国民支持率を維持しています。


 「8ポイント経済アジェンダ」とする経済政策では、PPP(Public Private Partnership)の推進を通じて、外国援助を民間に委譲するインフラ政策など、ベニグノ・アキノ政権のマクロ経済を継承し、外国投資を重視し、道路網などのほか農村開発では灌漑プロジェクトなど70もの大型プロジェクトが進められており、うち48外国援助によるものです。教育や保健分野では、前政権から行われているCCT(Conditional Cash Transfer。子どもが学校に行く、母親が母子検診を受けることを条件にした低所得者向けの現金給付)や基礎教育を、小学校6年高校4年の10年生から「K-12」(幼稚園(1年)、小学校6年、中学4年間、高校2年)に移行した政策を継承し、さらに国立大学の学費を無償化する政策が現政権から始まりました。


経済成長が旺盛で、2010年以降、6~7%のGDP成長率を維持しているフィリピンは、アジアの"劣等生"から"優等生"へと変貌を遂げつつあります。その背景には、OFWs(海外への出稼ぎ労働者)から本国への送金(GDPの約10%で2兆円以上)、(多国籍企業の)コールセンター受注の伸び、インフラ整備の推進が要因だと考えられるということでした。


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その一方で、人口の「階層化」が進んでいます。国民の約21%が貧困層で、そのうち農民と漁民が約68%を占めており、構造的に農・漁業が弱い状態が続いています。それと対極にあるのが、地主、企業家、政治かなどのスーパーリッチやエリート層、その次に海外出稼ぎ労働者およびその家族などが「新興ミドルクラス」を形成し、いわゆる「庶民」「民衆」は工場労働者、サービス業者、運転手、農民漁民などで構成されています。


このように国全体の経済は成長しているものの、貧富の格差が拡大しているなか、民衆が持続可能な生活をしていくためには、生業・起業の大切さではないか、という重要なヒントを与えてくださいました。


野口さん、佐竹さんから講義を受けた塾生からは以下のような疑問・質問が上がりました。


Oさん: これだけJFCが多くいて問題を抱えているのに、なぜその対策としての政策が出てこないのかが疑問である。

Hさん: JFCのアイデンティティの話について、彼らはまったくの日本人として扱われることを望むのか、フィリピン人として扱われることを望むのか、明確に分からない。

Aさん: フィリピンにコミュニティはあるのか、またどういうものなのか。

Mさん: 貧困率や潜在的失業率が高くなり、麻薬取引に手を染める道を与えてしまっているのではないかと思う。農業に従事する家庭は、そのまま家業を継ぐ形になってしまうのだろうか。

Aさん: 中長期的な成長に製造業は要とのことだが、フィリピンに工場を持つ海外の企業にはどのようなものがあるか。