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2017年10月12日  

8月26日、第2回「アジア社会起業家育成塾」フィリピン訪問事前勉強会



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8月26日、第2回「アジア社会起業家育成塾」フィリピン訪問事前勉強会を開催しました。


今回は、(学)アジア学院で農場管理アドバイザーを務めるギルバート・ホガンさんに「フィリピンの先住民族」について講義をしていただきました。ギルバートさんご自身が先住民族で、先住民族組織の全国ネットワーク「KASAPI」の理事長を務められ、先住民族地域の住民や子どもの支援を行ってきました。


フィリピンの先住民族

 フィリピンには110の民族グループがあり、1,200万~1,500万人の先住民族がいるとされています。その大半は先祖伝来の土地に居住していますが、現在ではそうした土地の大半が「公有地」とされています。北東、中央、南ルソンやビサヤ諸島、北東ミンダナオに住むネグリト族、北ルソンやコルディレラ・カラバロ山岳地帯に住むコルディレラ族、島に住むマンヤン族をはじめ、ルマド族(ミンダナオ)や、ムスリム教徒の民族などがおり、それぞれ独自性を保ちながら、文化、習慣、伝統においては大半が類似しています。


現在も伝統的な儀式を守り行っている地域はありますが、伝統舞踊において、かつては伝統衣装を着て踊っていたのがTシャツなどのラフな服装になり、自家製の酒を供えていたものが既製品の酒を使うようになるなど、生活に変化が起きているそうです。


必要最低限の生活を維持できる規模の農業(稲作やトウモロコシ栽培など)や伝統的な漁法での漁業で生計を立てている人が大半ですが、中には狩猟採集や小規模の鉱物採掘場で働き生計をたてている人たちもいます。しかし収入は非常に限られており、カラガ地域(ミンダナオ北東部)の先住民族の1997年の平均世帯収入は全国平均の42%しかなかったという記録があります。



先住民族の人々とその地域が直面する課題

 先住民族の人々が大切に守り居住していた森林地帯は、外国企業や政府によって切り開かれ、鉱物採掘場や商業用プランテーション用地に転用されました。彼らは森から追い出され、生活様式にも大きな影響を与えました。「開発」という名のもと、先住民族の人々への人権侵害さえも注目されることはなく、時には声をあげた先住民族のリーダーが誘拐され殺害されたりする事件が起きています。


先住民族に関する法的措置

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 先住民族の保護を促進するための国際政策として、国際労働機関(ILO)条約第169条や先住民族の権利に関する国際連合宣言、また京都議定書や生物多様性条約があり、フィリピンは、生物多様性条約の締約国であるとともに、フィリピン国内法として1997年には先住民族の土地の所有権や伝統資源の権利を認めた法「先住民族権利法」(IPRA)が制定されました。しかし、実行のために組織された国家先住民族委員会の経験・能力不足や政府機関間の管轄に関する調整不足、既存法との不一致(鉱業法(1995年制定)に先住民族権利法に相反する規定があること等)などもあり、先住民族が法律で規定されているとおりに保護される状態にはなっていないのが現状です。


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今後は、より多くの人々に先住民族権利法に関しての教育を行い、同法の完全実施のために市民社会の参加を奨励していく必要がある、と話してくれました。


<塾生の疑問・質問>

Mさん: 先住民族の人々は、携帯電話などの電子機器を持っているのか。

⇒ギルバートさん:スマートフォンを持っている人たちもいる。
        しかし、その使い方等に関しての教育は行われていない。

Aさん: 先住民族自身の伝統工芸品やアクセサリーを商品として、ビジネスをすることは出来ないのか。

⇒ギルバートさん:質の問題がある。 彼らが現在持っているスキルでは、商品化することは難しい。
        実際に売るとなると、技術協力を得る必要がある。

Hさん: タイの山岳民族などは、国籍を持てないという問題を抱えているが、フィリピンの先住民族の人々は、正式にフィリピン人として認められているのか。また、フィリピンの人々は、先住民族や先住民族権利法について知っているのか。

⇒ギルバードさん:全員がフィリピン人として認められているだろう。
        先住民族が住む地域に近い地域の住民たちは比較的知っているが、フィリピンの都市部では、
        先住民族や先住民族権利法に関しての認知度は低い。