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2020年8月7日    

女性農家を起業家に! スリランカ事業成果報告 その3
~「リーガルサポート」と「共同ビジネス開発・市場開拓」プロジェクト始まる~


2017年4月に始まったACC21と現地NGO「ウバ・ウェラッサ女性団体」(略称:UWWO)の共同プロジェクトは、18の女性組織のメンバー780人が、村の特産品であるピーナッツや有機農産物に付加価値をつけて新たな市場を開拓し、農業で十分な収入を得られるようにするとともに、長年変えられなかった商慣行を打ち破り、当事者が自分たちの手で新しい地場産業を実現するという画期的なチャレンジです。

3年計画の最終年度を終えたいま、数回に分けて、このプロジェクトを振り返っていきます。その2(クジャクの楽園の陰で)では、UWWO理事長のソーマさんと仲間の女性組織のメンバー(780人)が、3世代前の開拓時代からこれまでにどのような歩みを進めてきたのか、そして、どのような問題に直面しているのかを知るため、現地で女性たちの話に耳を傾けた内容をご紹介しました。
(報告:事務局長、事業担当 鈴木真里)


女性たちを悩ます問題とは
1984年に設立されたUWWO(ウバ・ウェラッサ女性団体)は、周辺村で女性組織の設立支援を行って仲間を増やしながら、土地なし女性農家の権利推進、選挙監視と立候補者への提言、家庭内暴力や少女への虐待撲滅キャンペーンなど、村の人々が自らの権利についての認識を高め、推進するための意識啓発やキャンペーンを行ってきました。そして近年は、有機農業技術の普及や零細規模の貯蓄・融資活動に力を入れるなど、フィールドでの活動にも取り組んでいました。

sri20200807-1.jpg 政府による種登録義務化に反対するデモ

30年以上をかけ、地域住民や行政の人たちの考え方や意識が徐々に変わっていき、女性組織の認知度は高まっていました。しかし、それでもなお、根本的な問題は解決されていませんでした。女性組織のリーダーたちがまとめた地域の優先課題は、次の4つです。

・まとまった資金が必要な農業ビジネスに投資できない
・作物被害と健康障害
・夫婦、家庭の問題
・進まない女性のエンパワメント

そして、女性たちは次のような問題を抱えていました。「夫がある日突然、家族を捨てて失踪した」という女性メンバーが何人もいました。

・若年女性は早婚の後、離婚し、置き去りにされているケースが多い。
・シングルマザーには、養育費や慰謝料などが保証されず、経済的困難に直面している。
・必要としている人々に法的知識、カウンセリング、法的支援が届いていない。
・警察署の「女性と子ども担当特別デスク」はあるが、あまり機能していない。
以上の問題を解決するために話し合いを進め、ACC21とUWWOは、「リーガルサポート」(法的支援)と「集団での農業ビジネス開発」という2つのプロジェクトを共同で企画・実施することになりました。

共同事業1.リーガル・ファシリテーターの育成と法的支援(2017年1月~)

貧困、教育の問題、家庭内暴力、土地をめぐる争い、警察による夫や息子の不当逮捕など、日々さまざまな問題を抱えて生活しているなかで、とくに行政や司法が絡む問題については、知識不足から法的な手続きを取ることができず、女性たちは泣き寝入りをせざるを得ませんでした。

そこで、法律や行政手続きについての知識をもつ「リーガル・ファシリテーター」として地域の女性リーダーを育成することを目的にこの取り組みが始まりました。ACC21は、『行政の手続きや法律の知識がなく、泣き寝入りするスリランカの女性たちを救いたい!』と題したクラウド・ファンディングを通じるなどして、49の個人・団体から約43万円のご寄付金をいただき、事業を開始することができました。

女性組織のメンバーの中から2名と、各村の女性組織と人権保護NGOとの間で調整役を果たす女性1名の計3名を選定し、2017年1月中旬から約3カ月間、人権保護問題に取り組むNGO「ジャナサンサダヤ」で法律や制度についての研修(座学、手続きや裁判見学など実地訓練)を実施しました。ジャナサンサダヤでは不当逮捕や拷問などの被害を受け、不公正な立場にある市民のケースを全国規模で多数扱っており、人権委員会や国際ネットワークと連携しています。

人権に関する各種法令、条例についての学習、相談業務とそのプロセス、裁判の傍聴、専門家によるレクチャーなど様々なことを学んだ女性たちは、研修後に、法律相談窓口に配属され、相談とサポート業務を行いました。コロンボで研修を受けた3名のほかに、法的支援を必要とするケースを集める担当者を18の女性組織内が選び、計24人の「リーガル・エイド・ファシリテーター」が誕生しました。彼女たちは、必要に応じてUWWOがジャナサンサダヤや弁護士などに照会する活動を行っています。

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3カ月間寝食を共にしてコロンボで研修を受けた女性たちと、
研修をしてくれた「ジャナサンサダヤ」代表のチットラルさん(右)

相談窓口を開設した直後に10日間で6件もの相談が寄せられました。UWWO代表のソーマさんは、『ひとつのケースを相談者から聴きとるのに6時間かかったこともあり、1日中聴くだけでも大変な仕事です。相談者は、これまでの問題やフラストレーションを吐き出すようにして、思いをぶつけてくるので真剣に向き合っていますが、時間をかけて聴いても要点をまとめると2ページにしかならない、ということもあります。これまでに受けた相談は、暴力や土地に関する問題です。』と、予想を上回る地元での反響に驚いていました。

相談に来たある女性の話から、女性たちが日常的に危険を感じていることがよくわかりました。
『私のように夫を亡くした女性たちは、近所の男性たちに狙われるなど常に危険と隣り合わせです。道路工事の日雇にきちんとした格好で出かけると、"体を売りに行く"などとあらぬ噂をたてられたりします。女性はいつも弱い立場。私たち女性が立ち上がらないといけません』。
(本事業の詳細は、「スリランカ女性だより」第1号第2号をご覧ください)
共同事業2.スリランカ女性住民組織による共同農業ビジネス開発と市場開拓を通じた地場産業の育成と女性のエンパワメント(2017年4月~)

この地域の人々は、3世代前に移住して開墾し、農業を営んできましたが、農薬の過度な使用により健康障害が起きています。生産者の健康を守ると同時に、土壌や環境の持続性を高めることを目指し、有機農業を基本に、農業技術を改善し、その規模の拡大と多角化を行い、共同で市場開拓を目指します。

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現地パートナー団体UWWOの事務所は縦長の土地にあり、事務所の裏手が長らく空き地であったこと、そして主要道路にも近いことから、そこに必要な施設の建設と機械を設置し、ピーナッツや農産物の買い取り、加工、保管、販売を行う「マーケティング・センター」を開設する計画が固まりました。

(その3おわり)
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マーケティング・センターの建設前に土地を整備する女性たち