日韓みらい若者支援“語り場”レポート「日韓の教科書を読み比べる」
2022年度の「日韓みらい若者支援事業」の最初の“語り場”活動では、日韓学生会議(第37回、当時)との共催で「日韓の教科書を読み比べる」を開催しました。
日韓学生会議のメンバーである大学生、その他の大学/大学院生、合計14名が参加し、活発な質疑応答、意見交換が行われました。
第1回:2022年6月11日(土)<イントロダクション>
第2回:6月18日(土)<日韓の教科書を読み比べる1>徴用工
第3回:7月2日(土)< 日韓の教科書を読み比べる2>日本軍「慰安婦」
<講師>※詳しいプロフィールはページ下部にジャンプ
上山由里香氏(韓国近現代史研究者)
各回の概要と参加者の皆さんからの質問や意見についてご報告します。
第1回<イントロダクション>
日韓学生会議の学生が司会をつとめ、日韓学生会議の紹介を行ったのに続き、参加者は自己紹介と、それぞれの韓国の歴史教育や歴史教科書に対するイメージや知りたい内容を述べました。その後、上山氏による講義が始まりました。韓国近現代史研究者である上山氏は、元々歴史に関心があったわけではなく、「どうして韓国と日本は仲良くなれないのか」という疑問から研究活動が始まったというご自身の体験についてお話をされました。その後、日韓の教科書の特徴や特異性、講座で使用予定の教科書と教材について説明しました。
【参加者からの主な質問】
- 日本の教科書、韓国の教科書それぞれにどのような傾向があるか、教えてほしい。
- 三国共同編纂の教科書はあまり知られていないような気がするが、どれぐらいの学校で使用されているのか。
第2回<日韓の教科書を読み比べる1>徴用工
日本と韓国の歴史教科書や教材として、『韓国史』、『日本史 B』、『東アジアの歴史』、『日韓交流の歴史』(※正式名称と出版社は本記事下を参照)をとりあげ、それぞれの教科書、教材で徴用工についてどのように記述しているかを見て、特徴、共通点・相違点、長所・短所を比較していきました。
【意見交換で参加者から寄せられた声】
- 韓国史と日本史の記述が違う理由は、この2つの教科書は読んでもらう対象が違うからだと思う。
- 韓国史は人に焦点をあてていて、日本史は出来事に焦点をあてている。記述が少ない方が、より考えることができるのではないか。
第3回<日韓の教科書を読み比べる2>日本軍「慰安婦」
最終回では、各教科書、教材で日本軍「慰安婦」に関する記述内容を比較し、『日本軍「慰安婦」』や、『従軍慰安婦』など、表記の違いがあることなどについて解説されました。
【参加者の感想(一部)】
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- 情報量が多い方が、客観的な意見を持てるのではないかと思う。今後どうしていったらいいのかという記述がある教材がよいと思った。
- 現在も日韓の問題の一つである事柄だからこそ、韓国と日本の学生が利用する教科書である『韓国史』や『日本史B』では、より多くの情報と課題提起を載せるべきだと思う。
3回の講義を終えて―
第1回の冒頭に韓国の歴史教育や歴史教科書に対するイメージについて話した参加者たちからは、「3回の講義を終えて、当初持っていたイメージが変わった」という声が聞かれました。また、それぞれが高校時代にどのような歴史教育を受けたかについても共有しました。数年前に高校時代を過ごした大学生たちは、歴史を現在とつながる問題としてとらえていました。その他、「考えさせる教育」の必要性について述べた人もいて、若い世代ならではの意見を聞くことができました。
【日韓学生会議からの感想】
講座を通して複数の歴史教科書と教材の記述を見比べました。教科書や教材によって使われている語句や記述されている内容に違いがあり、一見小さい違いであっても、使われる語句によって読者が捉えるイメージが変わったり、その言葉や文脈に含まれるニュアンスが変わったりと大きな違いに繋がることもあることを知り、重要なことだと感じました。ただ知識として覚えるための教科書ではなく、今も続いている問題として将来どうするべきか、何ができるかなどこれからの深い学びにつながっていくような教科書が大事な要素になるとの意見が多数ありました。
(報告:シャープ 茜)
使用した歴史教科書と教材
- 【韓国の教科書】『韓国史』(パク・チュンヒョン他著、ヘネムエデュ、2020 年)※講師が翻訳したレジュメを使用
- 【日本の教科書】『詳説改訂版 日本史 B』(山川出版社、2020)
- 【韓国の教科書の日本語訳】『東アジアの歴史』(明石書店、2015)
- 【日韓共同編纂の歴史教材】『日韓歴史共通教材 調べ・考え・歩く 日韓交流の歴史』(明石書店、2020
- 【日中韓 3 国共通歴史教材】『日本・中国・韓国=共同編纂 未来をひらく歴史-東アジア3 国の近現代史』(高文研、2005)
講師プロフィール
上山由里香氏(韓国近現代史研究者)
大学生の頃に日韓の歴史認識の違いに疑問を抱き、その後、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修士課程を経て、韓国の成均館大学東アジア学科博士課程に留学し、博士号(文学博士)を取得。専門は韓国の近現代史、歴史教育、歴史教科書、人物史など。その他、日中韓三国共通歴史教材委員会として『新しい東アジアの近現代史(上・下)』(社会評論社、2012)の編纂にも携わり、新しい教材の編纂に取り組む。
日韓学生会議とは
1985 年10 月11 日、日韓両国の学生有志によって、「相互尊重と不偏不党の立場に立って日韓両国の学生に率直かつ建設的な対話の場を提供し、相互理解と友好を増進させることによって将来の両国関係と世界平和に寄与することを目的とする」ために設立された非営利・非宗教・非政治の学術団体。韓国にて活動を行う姉妹団体の韓日学生会議と共に、日本と韓国で毎年交互に「夏季交流大会(夏大会)」を開催。
週1回(主に土曜日)の「定例会」を行い、日韓問題や韓国の社会、歴史、地域研究などを扱う学術活動、夏大会での交流に向けての韓国語の勉強、姉妹団体の韓日学生会議との語学交流を中心として積極的な活動を行っている。毎年2月ごろに次の夏大会に向けた準備イベントである「冬季トレーニング」を日本と韓国で毎年交互に開催。夏大会・定例会を中心として、日韓問題や韓国・東アジア事情に興味のある学生自らが、日韓交流に寄与すべく、活発に活動に取り組んでいる、歴史ある学生団体。
10月から第38回日韓学生会議のメンバーとして活動したい方を大募集中です!
2022年冬には冬季トレーニング、2023年8月には韓国での夏大会を予定しています。学生の間に韓国の学生との交流をして一生の友情、忘れられない思い出を作ってみませんか?私たちの学生団体の特長的なポイントは夏大会に通訳官がいるため母国語で本格的な議論ができること、また2週間にもわたる期間で韓国の学生と生活を共にしながら深い交流をできることです。
是非ご参加お待ちしています!
参加条件:大学(短期大学含む)および大学院在学者、かつ日本国籍あるいは日本国の特別永住権または永住権の保有者質問・ご相談・入会希望は各種SNSのDMもしくはメールにて受け付けています。
第38回日韓学生会議実行委員会(JKSC)
HP: https://peraichi.com/landing_pages/view/jksc1985/
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E-mailアドレス:上記HP参照