ACC21はアジアに新しい流れをつくる国際協力NGOです

アジア女性支援

アジアには、男性と比べて女性の地位が低い国がたくさんあります。そのような国では多くの女性が家事、家族の世話、農作業など重労働を強いられている、暴力や一方的な別居・離婚で母子家庭になるケースが後を絶ちません。

私たちアジア・コミュニティ・センター21(ACC21)は、弱い立場にあるアジアの女性たちが収入を得て、暴力や不公正のないより良い環境で生活してゆけるように支援をしています。
2017年度から2019年度は、スリランカで活動に取り組み、ウバ州の18女性組織のメンバー780人が「マーケティングセンター」を通じ、仲買人を介さず特産品のピーナッツ、有機農産物を、仲買人を通さず宅配業者、大手バイヤーに直接販売できるようになりました。この結果、女性メンバーの年間農業収入が37%増となり、子どもの教育費(4%増)や家族の栄養改善にも役立っています。また、こうした経済的効果だけでなく、76.5%が、夫婦または家族全員で意思決定を行うようになりました。

そしていま、このような目に見える変化と成果をみた地元の若年女性たちの参加が増えています。
現在は、スリランカでの事業をモデルとして、国内外の他地域へ適用する第一段階として、新規対象候補事業とパートナー候補団体に関する情報収集、財源開拓に取り組んでいます。

スリランカでの活動の背景―女性たちが抱える課題

スリランカは、インド洋に浮かぶ小さな島国です。その南東に位置するウバ州モナラガラ県では、1990年代後半からバナナやサトウキビの大規模なプランテーションや加工工場が次々と建設されました。

それまで、住民たちは、季節ごとにさまざまな作物(野菜、豆類、香辛料、果物など)を育て、わずかな収入を得ていました。しかし、開発が進み、住んでいた土地を追われたり、単一作物の栽培に転換して気候変動のリスクにさらされたり、農薬や化学肥料の使用で深刻な健康被害が発生するなどの問題に直面するようになりました。

女性たちを取り巻く貧困、教育の欠如、暴力…

なかでも女性たちは、苦しい立場に置かれています。多くの女性たちは、十分な教育を受けられず、生活や医療、子どもの教育のために必要な収入を得られていません。早婚の問題も多く、10代で結婚・離婚した女性たちの多くは、養育費や慰謝料がないままに、子どもを育て、経済的な困難に直面しています。また、家庭内暴力や土地をめぐる紛争などの問題もあります。

しかし、女性たちには、行政の手続きや法律についての知識がなく、関係当局に支援を求めたり、法的な手続きを取ることができません。その結果、泣き寝入りする女性も少なくありません。

女性たちが抱える課題に、ひとつずつ取り組みます

私たちACC21は、この地域で30年以上の活動実績をもつ住民組織「UWWO」(ウバ・ウェラッサ女性団体)を中心とした18の女性組織(メンバー総数約780人)と連携して、スリランカの女性たちが安定した収入手段を確立し、暴力や不公正のない、より良い環境で生活できるように支援に取り組みました。

1.リーガル・アシスタントの育成
地域から2人の女性を選び、人権問題について経験のあるNGOで、法律や制度についての3か月のトレーニングを提供しました。トレーニング後は地元に戻って、地域の人びとが抱えるさまざまな問題(家庭内暴力、離婚、土地問題、不当な拘束など)の解決を支援しています。
さらに、人権保護に取り組むNGOと地域の女性組織を結ぶ担当スタッフ1人を育成し、トレーニングを受けた2人の女性は地元で各種手続きを行う際のサポートを行っています。

2.女性たちの収入向上
対象地域には女性農家が共同で農産物を販売するための『共同販売センター』がありますが、センターを通じた販売では代金の受け取りが数日後になってしまい、教育費や医療費などの急な出費に対応できません。このため、多くの女性が安く買い叩く仲介業者に大半の収穫物を販売してきました。
そこで、女性農家が共同販売センターに生産物の75%を販売するシステムを整えるとともに、女性たちが農産物の加工や包装の技術を身につけ、より高く販売できるように支援しました。さらに、既存のスーパーマーケットチェーンなどと交渉し、新しい市場の開拓にも取り組みました。

持続可能な開発目標への貢献

これらの活動を通じて、2030年に向けて国際社会全体で取り組んでいる「持続可能な開発目標(SDGs)」のうち、「貧困をなくそう」「ジェンダー平等を実現しよう」という2つの目標への貢献をめざします。

※「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」は、2015年から2030年までの15年間に国際社会が達成を目指す目標で、17の目標で構成されています。2015年9月に193の国連加盟国によって採択されました。

地域に根差したNGOと連携し、効果的な支援を行います

私たちACC21は、地域に根差したNGOと連携することで、支援者の皆さまからお預かりしたご寄付を一円でも多くアジアの人びとに届け、少額でも大きな成果を実現します。経験豊かな職員による定期的なモニタリングが、質の高い支援活動を支えています。

ACC21はこれまで、アジアで緊密なネットワークを培ってきました。地域のニーズをしっかり把握しているパートナーがいるからこそ、効率的な活動が実施できます。

<スリランカのパートナー団体>

団体名 ウバ・ウェラッサ女性団体(UWWO:Uva Wellassa Women’s Organization)
代表者 Ms. K. P. Somalatha(Chairperson)
設立年 非営利のNGOとして1984年設立。2010年に法人登録。

なぜスリランカ?―10年間の経験からの学びをきっかけに

私たちACC21は、公益信託アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)の事務局活動を通じて、10年間にわたり、スリランカでインド洋津波被災地の復興支援に関わってきました。その活動内容は、被災した女性たちの組織化、収入向上のためのマイクロファイナンスや小規模ビジネスの構築などです。

この10年間の経験を通じて、私たちACC21は、スリランカの女性たちが非常に困難な状況に置かれていることを知りました。そして、女性の立場を向上させ、地域の開発を成功に導くためには、収入を増やすような経済的支援だけでなく、地域住民や自治体がその他の問題に主体的に取り組むためのシステムや提言力の強化、なかでも女性たちが声をあげ、意思決定に参加するための支援が必要とされていることを学びました。

今回、私たちとこの問題意識を共有できる、地域での活動経験の豊富な住民組織と出会い、本事業の開始に至りました。

<事業概要>

事業名 スリランカ女性のエンパワメント
活動地域 スリランカ・ウバ州モナラガラ県ウェラワヤDS地区アンダウェラヤヤGS地区
対象地域の人口 1,848世帯(7,112人、うち女性3,658人)
事業の対象者 貧しい女性農家 約780世帯 ※
期間 2017年1月から2020年3月
達成目標 ①女性のリーガル・アシスタントを育成し、地域の女性たちが司法制度にアクセスできるようにする
②農産物の集団事業の開拓、農産物の加工、既存のマーケット・チェーンとの連携を通じて、ウェラワヤDS地区の18の女性団体のメンバーである小規模農家780世帯の経済レベルを向上させる
パートナー団体 ウバ・ウェラッサ女性団体

※県の貧困ライン(1人あたり月3,822スリランカ・ルピー:日本円で約2,700円、1日約90円)を下回る経済状況にある女性農家を対象とします