開催報告|英語で学ぶ子どもの権利―Together we are Making A Difference―
2024年12月12日夕方、日本の国際協力NGO・ACC21でインターン/スタッフとして働くオランダと日本の大学生が、英語で共に学ぶ対面イベント「Together we are Making A Difference」を東京・文京学院大学で開催しました。
このイベントは、「Together we are Making A Difference (MAD)」をテーマとした、子どもの権利に関する共同学習イベントで、17名が参加しました。ACC21の国際インターンであるフランシスカ・カルバーリョと学生スタッフの石山芽依が司会・プレゼンターを務め、ゲストスピーカーとしてフィリピンの元ストリートチルドレンで現在Childhope Philippines FounddationのスタッフでACC21のコンサルタントであるジュード・ナティヴィダードがフィリピンからオンラインで登壇しました。
このイベントでは、参加型で楽しく学ぶことができるよう、プレゼンテーション、グループ・ディスカッション、ゲームなどが行われました。
子どもの権利条約
石山がACC21のビジョン、ミッション、ストリートチルドレンのエンパワメントに関連するプログラムを含む主要事業について説明しました。その後、「国連子どもの権利条約」(UNCRC)を主軸に、子どもの権利とは何かについて次のように説明しました。
国連子どもの権利条約(UNCRC)とは、同条約を批准した国連加盟国間の国際協定である。
1959年の「子どもの権利宣言」から30年を経て、1989年の第44回国連総会で、子ども中心の社会づくりに重要な「参加する権利」など、子どもの基本的人権を包括的に保障する枠組みづくりに取り組んだ結果、国連条約が採択された。
そして、理解しやすいよう、UNCRCを4つの柱に分けて次のように説明しました:
生きる権利:登録された名前や国籍を持つ権利、親に養育・保護される権利、ネグレクトや虐待の場合など、子どもの最善の利益にならない限り、親から引き離されない権利など
守られる権利: 暴力、虐待、ネグレクト、薬物乱用、性的搾取、武力紛争など、さまざまな形態の危害から保護される権利
育つ権利: 親の責任、適切な生活水準を得る権利、障がいのある子どもたちが発達と教育の機会均等を受ける権利など
参加する権利:意見を聞く権利、結社の自由、メディアからの情報へのアクセスの権利など
フィリピンの子ども保護関連法
続いて、国際インターンのフランシスカ・カルバーリョが、フィリピンの子ども保護関連法の歴史的背景、子どもの権利条約の4つの柱との関連性などについて発表しました。また彼女自身がソーシャルワークを大学で専攻していることもあり、子どもの保護におけるソーシャルワーカーの役割や、地域社会の関与と関係者の協力の重要性についても言及しました。
そして、世界大戦のような世界的な出来事が子どもの処遇に影響を与え、その後、子ども保護のフレームワークが確立されていったという歴史的経緯について説明しました。
その後、子どもの保護に関するフィリピンの法律を、UNCRCの4つの柱に関連付けて説明しました:
生きる権利:貧困の中で暮らす子どもたちが直面している問題であり、このような問題を解決するために、ACC21やチャイルドホープ・フィリピンのような団体が役割を果たしていること。
守られる権利:児童虐待、搾取、差別、女性と子どもに対する暴力、武力紛争時の保護に関連する法律(フィリピン共和国法7610条、9262条、11188条など)
育つ権利: 障がいや多様な背景を持つ子どもたちを含め、すべての子どもたちが教育を受けられるようにするための、無償の義務教育の重要性と教育省の役割
参加する権利:青年議会(Sangguniang Kabataan、略称SK)は、フィリピンで最小の行政区分であるバランガイの若者たちを代表しているが、疎外された子どもの参加を確保することの難しさもあること。
彼女は、以上のような子どもの権利に対する意識を高めること、地域社会への関与とステークホルダーとの協力の重要性、そしてソーシャルワーカーの視点から、子どものウェルビーング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)と安全性を確保するうえで、ソーシャルワーカーが子どもの権利を擁護し、不公正に対処する役割を果たす必要性を強調しました。
善い行いをすることが、生きる真の理由
ゲストスピーカーのジュード・ナティヴィダードが、フィリピンからオンラインで参加し、元ストリートチルドレンとしての自らの体験を話してくれました。彼は、路上での生活で直面したさまざまな困難、チャイルドホープ・フィリピンから教育その他の支援を受け、救われたこと、そして現在、「Project Bamboo」(チャイルドホープとACC21の共同事業)と「ストリートチルドレンZEROキャンペーン」(ACC21とACRP東京の共同事業)のプロジェクトの実施に関わっていることを話しました。
そして彼は、路上で生活する子どもたちを助けてほしいと、参加者に呼びかけました。また、フィリピンの子ども保護関連法の実態や教育制度についても話しました。
路上生活のストーリー
彼のストーリーは、彼がわずか6歳の時に実家が強制的に取り壊されたことから始まりました。父親が精神病を患い、母親が家計を支えることができなかったため、一家は不安定な状況に陥り、ジュードは物乞い、ビン集め、ゴミ売り、駐車場係として働きました。チャイルドホープ・フィリピンの活動に参加したことで、ジュードの人生は一転しました。彼は学校に戻り、ユース・リーダーとして成長するための支援を受けるようになり、彼は学校に戻ることができました。しかし、母親を金銭的に支えるため、そして兄が学校に通い卒業することをサポートするために、中学一年生の時に再び学校に通うことができなくなりました。
こうした様々な出来事があった間もチャイルドホープ・フィリピンは継続して彼をエンパワーし、子どもの権利についての意識啓発を行うユース・リーダーとして訓練を受けました。
彼は2022年に大学を卒業し、チャイルドホープ・フィリピンやACC21のような団体で、路上生活をしている子どもたちを支援する活動に専念するようになりました。ジュードは最後に、フィリピンの子どもたちを保護する法律の実態と、教育制度、特に特別支援教育プログラムが直面する課題について語り、プレゼンテーションを締めくくりました。
彼のライフ・ストーリーから、子どもの権利推進のための教育支援やアドボカシーを含む支援が、彼が数々の困難から回復する重要な条件のひとつであることを学びました。
フィリピンの教育制度
最後に、フィリピンの子ども保護関連法の実態や教育制度が直面する課題について、自身の経験を踏まえ、発表しました。
フィリピンの特別教育プログラムの課題:
〇資源の不足:教室・教員が不足している。特別な支援を必要とする子どもたちがサービスにアクセスできる機会が限られている。
〇不十分な教員トレーニング:多様なニーズを持つ子どもたちを、効果的に教育するための専門的なアプローチ方法について、教員が十分な訓練を受けていない。
〇社会全体の意識:障がいについての社会の否定的態度や偏見は、インクルージョンの大きな障壁となり、特別な支援が必要な子どもたちが社会に完全に参加する機会を制限してしまう。
〇個人的な課題:特別な支援が必要な子どもとその家族は、経済的な制約、医療を十分に受けられないこと、精神的なストレスなど、多くの生きづらさを経験する。これらは、子どもの教育や幸福に大きな影響を与える。
参加者の声
プレゼンテーションの後、参加者はグループに分かれ、今日のプレゼンテーションを聞いて最も驚いたこと、もっと知りたいこと、子どもをめぐる状況を改善するために何ができると思うかについて話し合いました。
各グループで話し合われた内容:
– 本日とりあげたテーマを大人の生活やメンタルヘルスにも関連づけて考える。
– 子どもの権利やストリートチルドレンの問題に関する意識啓発をしていくだけでなく、「ブラック・ライブズ・マター」や「ソーシャル・チェンジ(社会変革)」など、他の社会課題への意識を高めるような取り組みが必要ではないか。
– これほど大きな国であるアメリカが、なぜ国連子どもの権利条約(UNCRC)を批准していないのか。
– 大人が子どもの権利について知らない理由、子どもの現状に気づきを与える方法について(複数のグループで議論された)。
-参加者が想像していた、子どもたちが置かれている状況と実際の状況との比較。
各グループからは、「路上生活者のためのシェルターはたくさんあり、支援のための行動もたくさんあるのに、なぜいまだ変化がないのか」という質問も出た。
ディスカッションの後、参加者はプレゼンテーションで学んだことについて、教育ゲーム・アプリ「Kahoot!」を使ってクイズゲームを行い、勝者には賞品が贈られました。
自分たちにできる事とは
参加者たちは最後に「どうすればMAD (Making A Difference)になれるか」という問いに対する創造的な方法について議論しました。
– 日本の学校で学ぶ機会を学生に提供する。
– この問題について知らない人たちに自分が話せるようになること。
– NGO/NPOのような、これらの問題に積極的に取り組んでいる団体に寄付すること。
– 社会問題について参加者が話し合ったり、意見を共有したりできる機会・イベントを増やす。
– ジュードさんのように成功したストーリーをもっと共有し、社会に普及していくこと。
– 政府からの資金援助や学校への資金援助を増やす。教育システムにもっと変化を起こす。
参加者のグループ・ディスカッションで共有された感想や意見から、子どもたちの実情を知って驚き、このテーマについてもっと知りたいと思った様子がうかがえました。米国が国連子どもの権利条約を批准していないことは、参加者全員がもった大きな疑問でした。また、日本の子どもに関する法律や日本の実情についても学びたいとの声もありました。
イベントの最後には、参加者に今回のイベントについてのアンケートへの回答と、ACC21の活動への参加・協力をお願いしました。そしてジュードも一緒に、参加者全員で記念撮影をしました。
今日から始められる支援
ACC21は、本年12月10日から来年1月31日まで、寄付サイト「コングラント」を通じて目標金額100万円の「若者チャレンジ100募金」キャンペーンを実施し、アジアの若者たちの挑戦を前進させていくための活動資金を募ります。
詳しくはぜひ、本募金の専用ページをご覧ください。
温かいご支援、ご協力を、ぜひよろしくお願いいたします。
専用ウェブページ:https://congrant.com/project/sczero/14119
募金キャンペーン概要
期間 | 2024年12月10日(火)~2025年1月31日(金) |
主催 | 認定NPO法人アジア・コミュニティ・センター21(ACC21) |
名称 | ACC21「若者チャレンジ100募金 for 2025」 |
目的 | アジアの若者たちの挑戦を前進させていくための活動資金を募り、 |
寄付サイトURL | https://congrant.com/project/sczero/14119 |
目標金額 | 100万円 |
寄付の使途 | フィリピンでの研修の運営と、日韓の学習会・語り場等の運営のために活用させていただきます。 |