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2024-12-23

【マニラ発・現地レポート】ストリートチルドレン時代の幼なじみを路上で見かけ、話したこと

フィリピン・マニラのジュード・ナティビダッド(ACC21コンサルタント、「Project Bamboo」プロジェクト・アシスタント)から、レポートが届きました。ぜひお読みください。


通称“ララ”さん(24歳)は、フィリピンのNGO「チャイルドホープ・フィリピン」の支援活動の元受益者で、以前住んでいたロートン地区から移り、現在はマニラ市のマラテに住んでいる。彼女と夫には定期収入源がなく、彼女は物乞いを、夫は駐車アシストをして小銭を稼いでいた。

実は、彼女は私の幼なじみで、私がチャイルドホープ・フィリピンの支援を受けていた頃、マニラのアロセロス公園で開催されていたチャイルドホープの演劇活動によく一緒に参加していた。幼なじみが今も路上生活を続けているのを見て、私は悲しくなった 。

マニラ市のマラテ地区周辺でバイクを走らせていると、キリノ通り沿いのフィリピン農業省植物産業局そばの路上で、赤ちゃんを抱いて座っている女性を見かけた。彼女に見覚えがあるような気がしたので、バイクを停め、すぐに声をかけた。

何か悪いことをされると思ったからか、最初、彼女は私を見て怖がっているように見えた。「やあ、僕のこと覚えてる?幼なじみのジュードだよ!チャイルドホープの活動に一緒に参加していたよね。」 私が自分とチャイルドホープの名を口にすると、彼女の目から恐怖心が消えていった。

私は彼女に、日本の人たちに、フィリピンのストリートチルドレン/ユースの現状を伝えるため、彼女にインタビューし、彼女と赤ちゃん(8か月の男の子)の写真を撮らせてもらえないかとお願いし、彼女が同意してくれたので、私はお礼を言い、彼女の現状について話を聞くことになった。

彼女の話を聞くうちに、なぜ彼女が今も路上にいるのかがわかってきた。夫と口論になったので、夫は3歳の娘を連れて別行動をしており、5歳の長男は、教師をしている彼女の長姉が引き取り、彼女の母親が世話しているという。

彼女と夫の今後の計画について尋ねると、彼女は「混乱している」と言った。彼女は常に何かを考え、感情的になっているようだ。「5年前に長男を産んで体調を崩したの。今の状況から抜け出したいと思っているけど、どうすればいいのかわからないのよ」。

「教師をしているお姉さんのところに子どもたちと一緒に行かなかったのはなぜ?」と尋ねると、「最初、お母さんは私を優先して勉強させたのに、私が学業を続けなかったので、姉は私のことを恥じていた。言い争いをしたこととか、姉に対して罪の意識があり、(今頼ったら)姉に何を言われるかと恐れる気持ちがある。自分のことを失敗者だと感じていて、それが(今も)路上生活をしている理由だと思う」とのことだった。

私は彼女の話を聞いて、胸が痛んだ。なぜなら、私も、勉強することをやめて多くの機会を無駄にしたとき、同じように感じたからだ。でも、学校に戻り、勉学を続けた私とは異なり、ララは自分の家族と一緒に今も路上で暮らしている。

最後に私はこう問いかけた:「一生路上で暮らしたいの?君が路上生活を続けているのは自分のプライドのためで、だから“私と子どもたちを助けてほしい”と家族に頼めないのではないの?」。彼女はそれを認め、「いま私の身に起きていることを、とても後悔している」と答えた彼女の目からは、何かをうったえ、希望となるものを求めるような感情が伝わってきた。

じっくり話した後、私は彼女に「愛する人を助けようとしない家族などいない。君の家族は君を責めることなく、助けると思う。家族から何か言われたとしても、それは君の性格を否定するのではなくて、改善するための家族としてのアドバイスなんだよ。」と話した。そして、彼女自身のためでなく、子どもたちのため、状況を変えるために、お母さんとお姉さんと話すよう、アドバイスした。そして、子どもたちのために何か食べ物を買ってほしいと、少額のお金を渡してさよならを言った。


◆報告者プロフィールジュード・ナティビダッド

6歳の時に父親の借金をきっかけに路上で暮らし始め、物乞いなどで家計を助ける。休学を繰り返すが、篤志家の支援もあって学業を続け、大学を卒業。現在はチャイルドホープとACC21の共同事業「Prorject Bamboo」の事業アシスタント、ACC21のコンサルタントとして路上の子ども・若者支援に携わる。